私的鉄心END   作:たまごぼうろ

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自分で言ったことは、自分で守ろうね。
                                  ぼうろ

皆さんこんばんは、たまごぼうろです。
遅れて申し訳ありませんでした。
今週忙しくてですね。なかなか時間が取れず気づけば‥という感じでした。
だけど失踪はしなかったから!偉い!ちゃんと覚えてたから!!
予告通り、今回は三話更新、本編二話に加えinterludeです。
凛編もいよいよ佳境、最終決戦までは遂に秒読み。
では、どうぞ。



冷たい現実、温かな涙①

アーチャーと合流し、家に帰った私は早速彼と情報を共有する事にした。

 

「では、私からいこうか。」

 

しかし、そんな言葉とは裏腹に、アーチャーは紅茶を淹れながらこちらに話しかけてくる。

 

「ちょっと、今はそんなのいいから早く説明して頂戴。あまり時間が無いの。」

 

ソファに座り、足を組みながら私は彼に催促を促す。

けれど、そんな私の注意を無視し、ポットにお湯を注ぐアーチャー。

きっと彼もそんな事分かっているはずなのに、それでも準備をやめなかった。

 

「なに、外は冷え込んでいただろう?ならばまず体を温めるのが先決だ。」

 

すると、何とも華やかな香りが台所から漂ってきた。

 

「…………まぁ、ならいいけど。それなら早くして。」

 

その香りに毒気を抜かれてしまい、小声になりながら情報を求める。

確かに体は冷え切っているので、温かい紅茶は恋しかった。

雨は依然止まず、帰り道も私を容赦なく濡らした。

かれど、ゆっくりと帰ることはしなかった。

時間が惜しい、一秒でも早く対策を講じなければ冷たい体を抑え込み、必死に頭を回す。

丁度そこで、彼が紅茶を完成させて台所から帰ってきた。

手にしたお盆の上には白いポットとカップが2つ。

どうやら珍しく彼も飲むらしい。

ポットから紅茶を注ぎ、私の前に置く。

先程よりも強く、華やかで馨しい香りが鼻腔をくすぐる。

その後彼はもう一つのカップにも紅茶を注ぎ、そのまま私の前に座った。

そしてそのままカップに入った紅茶を優しく啜る。

 

「うん、我ながら良い出来だ。待たせたね。では、始めよう。」

 

そうして漸く彼は語り始めた。

 

「まず、君に謝罪を。申し訳無いが、あの焼け跡からはめぼしい魔術痕を発見出来なかった。」

 

「ちょっと!そんな余裕綽々で紅茶を淹れてた癖に何よそれ!」

 

先程の彼の態度から、核心に迫る情報を期待していた私は思わずそれに突っ込んでしまう。

しかし、そんな私とは対照的に彼は落ち着いていた。

 

「まぁ待て。話は最後まで聞くものだ。確かに魔術痕は発見出来なかったが、代わりにこんなものを見つけてな。」

 

そう言って、アーチャーは懐から何かを取り出す。

それは周りが赤黒い何かの破片だった。

 

「なにこれ、…………………いやホントに何よこれ。」

 

それはご丁寧に刑事ドラマで使われるような透明に袋に入っており、その上から触るとそこそこ固い何かだった。

なんだろう、見覚えがなくも無いというか。

見た事があるような、無いような。

 

「これが屋敷の至る所に大量に見られた。君はこれが何だと思う?」

 

「うーん、何かのプラスチック片かしら。というかゴミの燃え滓にしか見えないわね。」

 

「それは私も同感だがね。私はこれが何なのか分かる。この部屋にも存在する有り触れたものさ。」

 

「…………?」

 

何かのなぞなぞだろうか。

何時になく勿体ぶる彼に少しイライラしながらも辺りを見渡す。

でもここにあるもので、それにプラスチックなんてあるのだろうか。

そうして見渡すとあるものが目に入った。

それは、何処にでもあるような暖房機器だ。

機械音痴の私でも、スイッチ一つ押すだけで使える簡単な機械。

けれど、それを使うには燃料が必須である。

そして、その燃料といえばーーー

 

「あ、もしかしてあれ?」

 

そして私が指さしたのは、暖房を動かす燃料である灯油が入ったボトルだった。

この時期は冷え込むので、暖房機器の近くに常に補充を置いてあるのだ。

 

ーーーーーー待て。

 

「やっぱり、君も同じ結論か。」

 

「まさか………嘘でしょ。」

 

ここで漸く、彼が勿体ぶった理由が分かった。

彼も困惑していたのだ。

だから、私自身に気付かせて、その結論が同じ物なのか確かめたかったんだ。

 

「加えてもう一つ。あの焼け跡の内部は酷く臭ってな。それも強い揮発臭に満ちていた。」

 

「………………」

 

そのダメ押しの情報で、私たちが出した結論は更に補強されてしまった。

俄には信じ難い、けれど、それが真実だとしか考えられない。

 

「あの火災は魔術を使ったものじゃなく、人為的に引き起こした火災だって言うの!?」

 

「………そうとしか考えられん。恐らく誰かがこのボトルの中のものを家中に撒き、そして一気に火をつけたのだろう。確かにこれならばあそこまでの火災を引き起こせる。………しかし。」

 

そう、驚くべきはそこでは無い。

確かに火災を引き起こすだけならばこれでも可能だろう。

だってそれは、現代を生きる人間なら誰だって出来ることだ。

 

「うん、本当にそれが真実なら、間桐は魔術師でもなんでも無い、ただの人間に殺されたって事よ。そんな事って………。」

 

私の言葉にアーチャーは無言で同意する。

それは私達が当初立てていた仮説、「外来の魔術師が聖杯戦争に介入するために間桐を襲撃した」というものを根底から否定するものだった。

 

(そうか、そうゆう事ね。)

 

慎二がやけに訳知り顔だったのは、そんな裏があったのか。

 

「つまり、あの火災は高級住宅地の奥にある大きな屋敷で起きた、ただの火災、という訳だ。魔術師による工作等では全く無い、………としか考えられん。」

 

確かに妙と言えば妙だった。

そもそもの話、魔術で起きた事件ならばあそこまで野次馬が集まっているはずが無い。

人払いの魔術や、隠匿のための結界くらいは用意するのが秘匿を第一とする魔術師の性だ。

なのにあそこまで堂々とやっているという事は。

 

「私達に対する挑戦か、或いは私達以外を牽制しようとしたのか、ってところかしら。いや、混乱を狙ったって線もあるか……」

 

1人の世界に入り、考え込みそうになった私を見かねてか、アーチャーが咳払いと共に声をかけてくる。

 

「うん、兎に角私の報告はここ迄だ。さて、君の方はどうだったのかね。私一人に任せて遊んでいた訳ではあるまい?」

 

「あぁ、そうね。ごめんなさい。じゃあこっちも報告するわ。というか、今の貴方の情報でほぼ実行犯は絞り込めたんだけど。」

 

「ほう?それは楽しみだ。一体どんなたわけがあれを仕掛けたのか興味があるからな。」

 

そうして私もアーチャーに自分が得た情報を伝えた。

無論、スマートじゃない部分は隠してだが。

 

「では、直接マトウシンジと接触したと?相変わらず大胆だな君は。」

 

「確かにリスクもあったけど、得た物も大きかったわ。とりあえずこれで確定ね。今回間桐を殺したのは慎二よ。けど、彼一人じゃ無い。誰か強力なパトロン、或いは協力者が居たのは間違い無いわ。それもかなり厄介なね。」

 

「……………………心当たりは?」

 

「それがさっぱり。まぁまともな奴では無いわね。親族を利用して殺させて、自分は高みの見物なんて、魔術師どころか人間として下の下でしょ。」

 

「……………………」

 

すると、アーチャーは黙り込んでしまった。

何かを思案するように顎に手を当てて、険しい顔のまま固まるアーチャー。

 

「何よ、あんた心当たりがあるの?」

 

堪らず尋ねると、彼はその考えを振り払うように軽く首を振り、薄く笑いながら答えた。

 

「いや、まさかな。」

 

「?」

 

「気にしないでくれ。ただの思い過ごしだ。」

「そう…………」

 

「さて、情報交換はここ迄だな。ではどうする?私は、君の判断に従おう。」

 

「…………………」

 

そう。これはただの情報交換で、まだ何一つ始まっちゃいないのだ。

今回の私達は常に後手後手になってしまってる。

こんなんじゃ勝てない。慎二の言う通りだ。

兎に角情報が足りないし、かと言って落ち着いて考える時間も無い。

こうしてる間にも襲撃者は虎視眈々とこちらの首元を狙っているだろう。

正直真っ向勝負なら負ける気がしないが、戦闘中ならそうもいかない。

何しろ最後の相手は今回の聖杯戦争に置いて最強の一角。

ギリシャの大英雄。人の身でありながら神の座に至った不撓不屈の戦士。

バーサーカー、その真名をヘラクレス。

曰く、ヘラクレスは十二の難行を乗り越え、その末に神の末座に加えられたという。

彼の宝具はその象徴。それ即ち十二の試練。

つまり、文字通り十二回殺さなければ止まらない正真正銘怪物。

狂化されていてもその実力は劣ること無く、全てを屠り、潰し、薙ぎ倒す。

暴虐の風。破壊の嵐。

主人の命により、その命果てるまで戦い続ける。

正に狂戦士。

彼に言葉要らず、意思は在らず、有るのは純粋な狂気のみ。

紛れも無く格上の相手。

いや、彼より格が高い英雄なんて人類史においても数える程しかいないだろう。

そんな相手と私達は戦わなくちゃならない。

僅かな油断が致命傷となり、僅かな甘えは決定的になる。

そんな相手と戦いながら、他の事など考えてはいられない。

だから、私は焦る。

先程から上手く考えがまとまらない。

強敵への不安。まだ見ぬ敵への不安。

そして、背中にへばりついて離れない慎二の言葉。

 

『悪いけど、それは無理だ。君は負けるよ。たった今確信した。』

 

徐々に現実味を帯びていく彼の予言に腹が立ち、そしてまた焦る。

そして何より、不安に包まれた事で再び蘇ってくる私の弱さ。

後ろから這い寄ってくる不安。

正面から襲ってくる弱さ。

板挟みになった私の心には、焦りと憤りが募るばかり。

気付けば、私は自分の肩を抱いたまま震えていた。

喉が酷く乾く。思考が上手く纏まらない。

声が、聞こえる。

様々な人が私に言ってきた事が、崩れそうな頭の中の谺響する。

 

『君は、人を殺す事を恐れている。』

 

『魔術師による工作等では全く無い、という訳だ。』

 

『でもも何も無い。だって、それが正しいって事だろ。』

 

 

 

 

 

どうしよう。どうしよう。どうすれば。

 

 

「ーーーーー!」

 

 

バーサーカーへの対策は?

まだ見ぬ敵への対応は?

しっかりしなきゃ、しっかりしなきゃ。

もう私しかいないんだ。

私しか背負えないんだから。

 

 

「ーーーーー!、ーーーーー!」

 

大丈夫。こんなの慣れっこだ。

大丈夫。大丈夫。大丈夫。

落ち着いて、一つずつ。

やるべき事を整理して、成すべきことを成していく。

私は聖杯を獲る。必ず、絶対に。

その為には参加者を殺さなきゃいけない。

うん、出来る。私なら出来る。

だって、あの時も簡単に。

 

 

 

 

『…………………姉さん。』

 

 

 

 

 

 

あぁ

何でこの世界は

 

私が立ち止まることすら、許してくれないのか

 

 

 

 




同時更新に続きます。
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