私的鉄心END   作:たまごぼうろ

25 / 48
実はこのinterlude、ついさっき書いたものなんです。
なんでここだけ?って思うかもしれませんが、このシーン書くの二回目なんですよ。
まぁ色々あってここの文だけ完成後消えてしまいまして。
僕のモチベが低下したのは、これが一番の理由だったりします。
まぁ無くても話的には繋がるように書いたんで、大丈夫だとは思いますが、やっぱりここは必要かなーと思いまして、急遽仕上げました。
なので少し短いかもしれません、申し訳ない。
けど内容自体には手を加えてないので、何が書きたかったかは伝わるかと思います。
では、どうぞ。


Interlude

夕景が徐々に沈み、辺りは薄暗闇に包まれていく。

消えゆく最後の光に向かい、鳥たちは我先にと飛び立つ。

その甲高い声に混じり、えらく人工的な綺麗な鳴き声が響いた。

 

「ぴーーーーーひょろろろろろ。」

 

 

声の主はホムンクルス。

白無垢のような姿に、透き通った白い肌の女性が二人。

 

「リーゼリット!!」

 

その似合わないふざけた声を咎めるようにもう一つ。

声だけで真面目な態度が見える、

彼女はセラ。

アインツベルンの当主に仕える従者の一人である。

そして先程、鳶の真似をしたのはリーゼリット。

こちらも同じ当主を持つ者だ。

 

彼女たちは今、アインツベルン城の屋上のバルコニーにて、夕景を眺める当主にとある報告をするため参っていた。

 

「騒がしいわね。一体何の用なの。セラ、リズ。」

 

二人よりも幼い声。

しかし、その芯は誰より太く、また覚悟に満ちている。

イリヤスフィール・フォン・アインツベルン。

このアインツベルン城の当主にして、錬金術師たちの生み出した最高傑作。

聖杯を取るために作られた、ただそれだけのホムンクルス。

赤い瞳に紫のコートがよく似合う、紛う事無き可憐な少女だった。

 

「は、はい。実はですね。早急にお伝えしなければならない事がありまして。」

 

非難されたことに対して若干の後ろめたさを持ちながらも、淡々と事実のみを伝えようとするセラ。

報告内容はもちろん一つ、昨夜起こった未曾有の事件の事。

 

「間桐、いえマキリが、何者かに襲撃され壊滅しました。生存者は魔術回路を持た無い役立たずのみ、最早復興の余地はありません。」

 

「…………………………」

 

「これは間違いなく、外来から我らの聖杯を奪おうと訪れた別の魔術師の仕業、それもマキリに近しかった者の襲撃でしょう。工房は全焼、五百年の歴史は今や燃え尽きる灰以下のものとなりました。」

 

「そ、それで?それがどうしたのよ?」

 

しかしイリヤは反応を示さない。

相変わらず興味はそのまばゆい夕景に向けられている。

 

「は、なのでお嬢様、早急に犯人を見つけるべきかと。このままでは我らの誇りある戦いに疵が…」

 

「……………はぁ、そんな事だろうと思ったわ。安心して、犯人は外来の魔術師では無いし、これ以上何も出来やしないわ。」

 

溜息を一つ、そしてその後に続く小言のように、目下の報告への回答をあっさりと返す。

 

「え、、、心当たりがおありなのですか!?」

 

「イリヤ、すごい。」

 

それに驚くセラ。

リーゼリットも表情こそ変わらないものの確かに驚嘆の色がある。

けど、その驚きはイリヤにとっては意味が分からないものだ。

だって、その理由は一つ。

 

「少し考えれば分かる事よ。遠坂と私が居るのに、そう簡単に気配無くこの地には入れないし、マキリの工房だって安いものじゃないわ。こと防衛戦ならばうちよりも優れているわよ。」

 

「では、一体誰が…?」

 

イリヤにとって、その方法はとても馴染み深いものだから。

十年間、片時だって忘れたことは無い。

私たちを捨てた、愛する者。

それについて調べる度に、何度も出てきたそのやり方。

何度も聞いた、その名前。

 

溜息をもう一つ。

じきに夜だ。ひどく冷える。

ゆっくりと吐く息は白く、かじかむ指先はほのかに赤く。

告げる言葉は、何より重く。

 

「そっくりなのよ、やり方が。魔術師殺し(キリツグ)にね。」

 

「!!?、お嬢様、それは。」

 

「イリヤ、それ、かなりまずい。」

 

「だから犯人は一人しかいない。…………………シロウがやったのよ。全く、そんなとこまで似なくたっていいのに。」

 

彼女は全て、気付いていた。

雨の中、彼の決断をその目で見たあの日から、この結果を予期していた。

 

「で、ですがどうやって。あの者は魔術師ではありません。そんな者が御三家の一角を工房ごと消滅させるなど。」

 

「マキリの生存者、元ライダーのマスターね。彼だけ生き残っているのは不自然でしょ。魔術師は何だかんだ親族に甘いし、そこを突いたんじゃない?正面からの破壊じゃなくて、内部からの崩壊。常套手段じゃない。ほぼ不意打ちみたいなものよ。」

 

「そんな事が……………、有り得るの、ですね。」

 

「重要なのは手段じゃ無く結果よ、シロウがマキリを潰した。ただそれだけ。」

 

だからこそ、イリヤは焦りもしないし、別段驚きもしない。

分かっていることが、当然に起きただけ。

少なくともこの段階では、たったそれだけの話なのだから。

 

「では、あの者は我らも殺そうとするのでは…」

 

「それは無いわ。だって、絶望的に戦力が足りないもの。シロウにはもう仲間は居ない。同じ目的の為の協力者は居たかもしれないけれど、それが果たされた今、何も出来やしない。」

 

「では、」

 

「そう、だから。」

 

夕日から目を離し、従者を見やるイリヤ。

同時に、勇ましき風が吹き渡る。

 

「あとは、私とリンの勝負なの。ね?バーサーカー。」

 

「…………………………」

 

大英雄、ヘラクレス。

ひっそりと表れたソレは、一瞬で場の存在感全てを奪う。

岩肌のような巨躯、大樹の如き剛腕。

そして何より、全てを射抜く鋭い眼光。

ただそこにいるだけで、誰もがたじろぐ威圧感。

ただ一人、イリヤを除いて。

 

夕日は彼女を咎めるように照らす。

この後始まる殺戮を、非難するように眩しく映す。

けれど、そんな彼女を守るように。

バーサーカーは壁のように、彼女を照らす光を遮る。

 

影の中赤く光る瞳は、夕焼けを喰らうように。

彼女もまた、決意と共に準備に入る。

その背を静かに追う従者二人。

主の決定に異論はない。

どうあれ、結果は目に見えているのだから。

 

「勝つのは私。聖杯はアインツベルンのものよ。待ってなさい、リン。」

 

足取りは軽く、言葉は重く。

完成された人形たちは、そうして静かに城に戻った。

 

 

 

 

 

 

夕焼けが落ちていく。

もうじき夜が始まる、最後の夜が。

全てが決まる、最終決戦が。

聖杯戦争は、遂に終結へと。

勝つのは一体、どちらなのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だけど、それでも彼女は見落としていた。

その歪な理想の在り方を。

彼が手にした、新たな力を。

けれど、それは闇の中へ。

結局、夜が全てを語るだろう。

戦いの終幕を、衝撃の結末を。

そして、最低の悲劇への始まりを。

 




次回
決戦 アーチャーVSバーサーカー。

早ければ木曜日、遅くても今週中、お楽しみに!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。