私的鉄心END   作:たまごぼうろ

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皆さんお久しぶりです。たまごぼうろです。
長く空いてしまって申し訳ない。
繁忙期前はやはり忙しいですね、中々まとまった時間が取れずに苦労しています。
ですが年末には時間は取れるので、執筆と投稿共に進めたいと思っています。

さて、今回は少し先の話をしようと思います。
この私的鉄心エンドは来年の春、HF三章公開までに終了する予定です。
物語はまだ続きますが、その辺りで終了できるように調整していこうと思っています。
なので今、中々書く時間が取れない分、新作の構想を練っておりまして。
fateの二次創作か、オリジナルかはまだ決めていませんが、たまごぼうろとしてこの小説投稿の趣味は続けていこうと考えています。

とまぁ、そういう報告でした。新作書くよー!って話です。
多分まだまだ先なのであんまり気にしなくても、って感じなんですけどね。
年末が近くなって、まとめ的な気分になったのかもしれません(笑)
では本編です。今回はInterludeと、短い話一つになります。

これから寒くなりますが、どうか体調を崩さぬようにお気を付けください。
では、どうぞ。


Interlude

時は平等で、だからこそ残酷だ。

どんな悲劇も悪逆も、またどんな善行も奇跡でさえもその全てを色褪せさせる。

罪は前科として洗われ、過去は思い出として風化する。

そこに我ら人間の介入する余地は無く、だからこそ、記録というものは貴重であったのだ。

だが、その想いはどうなる?

形に残せぬそれは、消えるしかないのか。

愛しい人と結ばれた時の、胸の詰まるような愛しさはどうなる?

大切な家族を失った時の、笑いたくなるような悲しみは何処へ行く?

愛すべき人間から、生命の光が消えていく時の、奪われたような苦しみは何になる?

どのような感情でさえ、何れ消えていくのが運命ならば、幸せとは一体何なのか。

人により異なるその想いは、一体何が定めるというのか。

時は平等で、そして残酷だ。

善を志す者でも、悪を尊ぶ者でも、それは変わらない。

違うとすれば、それは天秤が逆さであるというところだけ。

綺麗なものを嫌い、醜いものを食む者が確かにあるという事だ。

そして、そこに善悪という名前を付けたのは我ら人間である。

よって、どちらも共に色褪せるのならば、きっとそこに善しも悪しも存在はしないのであろう。

きっと、そうなのだろう。

 

 

 

 

その答えは未だ人の手には余り、

故にこそ人間は探し求める。

真なる叡智を、真の答えを。

そして、ある者は求める。

答えでは無く、その答えを孕んだ、何者かの誕生を。

 

 

 

けれどーーーーーー

 

 

 

 

 

時は、ほんの少しだけ。

この悲劇に比べると、刹那のような時間だけ巻き戻る。

最後の戦いが始まる直前。

鮮やかに映るはずの夕景は雲に隠れ、これから訪れる暗さは一層深いものになるだろう。

神秘的なステンドグラスは、しかしそれを彩る光を持たず、淡い色味で教会を満たす。

薄暗く、そして冷たい教会の中には二人の男がいた。

一人は、その暗さにその身を浸すように。

一人は、それよりもいっそう眩しい光を秘めていた。

 

「時は近い、そうは思わんか?綺礼。」

 

「何がだ?ギルガメッシュ。」

 

現代風の衣装を纏った男、ギルガメッシュは教会内に存在するベンチに深く腰掛けたまま、カソック姿の神父言峰綺礼に声をかける。

 

「無論、あのエミヤとかいう小僧の事よ。上手く仕上がって来ている。はっ、これも因果というやつか。神々の気紛れも珠には役に立つでは無いか。」

 

「ほう…。珍しいな。お前が他人にそこまで興味を持つとは。それで?どんな未来が見えているというのだ?」

 

綺礼は意外そうにギルガメッシュに尋ねた。

昨夜、ギルガメッシュは士郎に力を与えた。

それは紛れも無く、あの時彼が一番に求めていたものであり、そして、聖杯戦争を終結へと導くものでもあった。

 

「何だ、気づいていなかったのか?いや、目を逸らしていたと言うべきなのか。」

 

しかし、その問いこそ意外と言わんばかりにギルガメッシュは問いを投げ返す。

 

「何だと?」

 

「なるほど、お前程の男でも認めたくないものはあるのだな。はっ、真面白い。つくづく飽きさせん男よな、綺礼。」

 

「一体私が何に気づいていないのと言うのだ。答えろ。」

 

愉快そうに口を歪ませるギルガメッシュと、硬い表情の綺礼。

だが、その鉄面皮はギルガメッシュの一言で剥がれ落ちる事になる。

 

「ならば教えてやろう。……似ているのだ、お前たち二人はな。」

 

「!、似ているだと。……私と、あの男がか。」

 

「如何にも。十年前、未だ己が内の欲望に苦しみ、また迷っていた時の貴様にあの小僧はとても良く似ている。」

 

「…………有り得ない。あいつと私は正反対だ。奴が尊ぶものを私は憎み、奴が憎むものをこそ私は愛する。私達は、互いに互いを認められぬ相反した存在なのだ。」

 

綺礼の言は間違っていはいない。

衛宮士郎が志すのは正義の味方。

自己犠牲の頂点にして、最も傲慢な人の性。

目に見えるもの全てを救おうとし、また手が届かぬと分かっていても手を差し伸べる。

善悪の区別も、苦しみも幸せも、全て自己の思考のみで裁量する。

故に傲慢。

全てを救うという事は、逆に全てを救わない事でもあるからだ。

一方、言峰綺礼の在り方はその真逆。

悪徳を愛し、慈愛を憎む。

美しいものを、綺麗なものを、彼は認めることが出来ない。

生まれながらの人格破綻者。他者を貶める事でしか、幸せを実感する事は出来ない。

故に平等。

彼にとって生きとし生けるもの全て自らの玩具であり、そして壊す事でしかそれと関わる事は出来ない。

彼にとっては、他人の不幸こそ天上の蜜であるのだ。

よってこの二人は永遠に理解し合うことは出来ない。

 

「いいや、お前たちは似ている。在り方では無く、人間としての形がな。嘗てお前が自らの欲と世界の有り様に悩んだように、奴もまた、自らの理想と人としての欲望に悩んでいるのだ。」

 

「……………」

 

そうして、ギルガメッシュは金色の波紋を展開し、中から煌びやかな黄金のコインを取り出した。

 

「この硬貨と同じよ。貴様らは裏と表なのだ。互いに同じ方向を向く事は永遠に無いが、全く同じように扱う事が出来る。今回貴様とあの男が共闘出来たのもそれだ。対極のようで、その実同じ存在なのだ。」

 

「私が…あいつと、同じ………」

 

「全く気が付いていなかった訳ではあるまい?憎悪とは即ち愛の反対だ。愛するからこそ憎み、憎むからこそ愛す。……お前は奴を人として、好ましく思っているのではないか?自らの人生で初めて出会った、同じ苦しみを持つ人間としてな。」

 

愛と憎は表裏一体。

思考は真逆とも、人としての歪さという点で、衛宮士郎と言峰綺礼は非常に酷似していた。

そして、士郎も言峰と同じく、理想に殉ずる事の出来ない自分に悩んでいた。

心の内に解決出来ない憤悶を抱え、けれど何も出来ずに日々を過ごす。

 

「まぁ、(オレ)としてはどちらでも良い話だがな。肝心なのは彼奴がどのように成るか、そしてお前はどうするのか、それだけに過ぎん。」

 

そう言って、ギルガメッシュは手にしたコインを指で弾く。

くるくると回りながら大きく宙を舞う黄金。

彼にとって、士郎も綺礼も見定めるべき対象に過ぎない。

行き先を決めるのは本人であり、彼はただきっかけを与えるに過ぎない。

 

「お前は結果として悪の一面を覚醒させるに至ったが、彼奴がどうなるかは我の眼を持っても見通せん。何しろ分岐点が多すぎる。」

 

ぱし、と落ちていたコインを受け止めるギルガメッシュ。

 

「私がコインの裏だと言うのなら、奴は表、では無いのか?」

 

「さてな、言ったであろう。彼奴の行く末は見通せんと。決めるのはあの男よ。」

 

そう言って受け止めたコインを見る。

 

「ほう………」

 

その手に握られたコインは表を向いていた。

しかし、中央から綺麗に、真っ二つに割れていた。

それはまるで、彼の凶兆を示唆するようだった。

 

「少し力を与えすぎたか。まぁ、破滅に向かうならばそれもまた一興よ。」

 

そうして愉快そうに笑った後、綺礼の方に向き合う。

 

「さて、お前はどうするのだ。お前は一体、この戦いの先に何を見出す。言っておくが、我はもう聖杯に興味は無い。よってお前の邪魔もせんが加担もせん。高みの見物、というやつよ。だが、お前の望み、暦年の迷い。ここで払拭出来るやもしれん。」

 

「……………」

 

沈黙を続ける綺礼に対し、重い腰を上げるようにゆっくりと立ち上がり、歩み寄る。

そしてその肩に手を置いた。

 

「人の生において、窮地とは時に最大の好機でもある。楽しめよ、綺礼。お前の人生はお前のものだ。そして、お前の在り方で(オレ)を楽しませろ。十年前からずっと、(オレ)はお前を裁定しているのだからな。」

 

そうして一頻り笑って、英雄王は黄金の粒子となり消えていった。

恐らく、向かう先は決着の地。

数時間後にアインツベルンの郊外で、バーサーカーとアーチャーが戦いが行われる。

そしてきっと、もう一人の参加者もそこに赴く。

そして全ての決着が着く。

正に終幕。神父の言は真実に変わるだろう。

残されたのは綺礼は一人、誰に言うでも無く、誓いのように呟いた。

 

「決まっている。私はただ、答えを求めるのだ。我が生涯に意味を意味出すとすれば、最早そうするしかない。故に、私はあの男に問わねばならならないのだ。」

 

そう言い残して、彼もまた教会の闇に消えた。

教会には、誰もいない。

もう誰も、残らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

森の入口に着く。

タイミングはドンピシャだった。

奥からとんでもない魔力がぶつかり合う気配を感じる。

一合、また一合。

彼らか刃を交える度に、森全体が大きく震える。

どうやら戦いが始まってからかなり時間が経っているようだ。

上空を見ると、硝煙のように煙が上がっている。

英霊同士の戦いは、山一つの地形を容易く変えるような規格外のものだったと、今更ながら思い出した。

きっと当の本人達は、戦いしか見えていない。

当然だ。命のやり取りにおいて、眼前以外を注視すれば、それこそ命が無い。

だから、彼らが自分に気が付けないのは必然なんだ。

 

風の音が強い。

外は一層に冷え込み、今にも雨が降りそうだった。

俺が何かを決める時は、決まって雨が降る。

世界が、その選択を嘆いているのか、それとも俺の罪を洗い流そうとしているのか。

ーーーどちらでもいい。

重要なのは、結果だ。

その過程で俺がどれだけ手を汚そうとも、後から皆が笑えるなら、それでいい。

最後に、黒に塗られた空を仰ぎ、今は雲に隠れて見えない月を睨む。

昨日、煌々と輝いていたそれは、今は欠片ほどの光もこちらに零さない。

まるで、恐いものを見たくないと言い張る、子どものように。

 

「……………………行くぞ。」

 

地面に映った影にそう言って、俺もまた森に踏み入った。

そうして、俺の聖杯戦争の、最後の夜は始まったのだ。

 

 




主人公、お前久しぶりに出てきたな。
今回短めなので今週の日曜にでも次を投稿します。
しばしお待ちを!!
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