私的鉄心END   作:たまごぼうろ

32 / 48
皆さん、あけましておめでとうございます。たまごぼうろです。
新年開けましたね。今年はどんな年にしたいですか?
なんて決まり文句が効かなくなるくらい今更ですね。
今時期になって新年の挨拶している阿呆なんて、世界にどれくらいいるんでしょう。
ですがまぁ、中国には旧正月なんてものもありますし、僕の投稿スタイルとで考えると寧ろこの挨拶は当然だったかもしれません。
投稿遅いのは今に始まった事じゃありませんし、牛歩ながらも着実に前に進んで行けたらなと思います。
本年も私的鉄心エンド、そして僕自身もよろしくお願いいたします。

さて、では本編の話を少しだけ。
去年の暮れに終始アーチャー視点で行われたこの戦いですが、今回のみ一時凛視点へと戻ります。理由は読んでいただければ分かるかと。
それ以外語れることはございません。
戦いの終わりは、どうか万感の想いで。

では、どうぞ。


Supernova①

その傷だらけの背中から最後の言葉が聞こえた時に、これで最後なんだと思った。

だから私も拳を強く握り、魔力を貯めて準備をする。

一度地に伏しても立ち上がったアーチャー。

そして、尋常ではない魔力を編むその姿。

次の一撃に彼の全てが込められている。

ここにいる誰もがそう思ったはずだ。

 

 

「▪️▪️▪️▪️▪️▪️▪️▪️▪️▪️▪️▪️!!!!」

 

 

それは理性の無い戦士も同じ。

彼の闘気を感じ取り、弾けるように地を蹴って、最後の投影を止めようと駆ける。

距離にして凡そ五十メートル。

投影が完全に終わりきる前にアーチャーの元に辿り着けば、バーサーカーの勝利。

バーサーカーがこちらに到達する前に投影を完成させれば、アーチャーの勝利。

詰まるところ、これはどちらが先に届くかの勝負だ。

そしてそれはどうしても最後の詰めを誤ってしまう私に課せられた、最後の試練とも言える。

十二の試練の十三個目(アウトナンバー)

 

上等だ。

ここで私も自らを証明してやる。

 

このままではアーチャーは負ける。

彼が投影しようとしているのは、間違い無くあの聖剣だ。

幾ら彼が自らの世界の中に居ようともすぐに作れる物では無し、満身創痍の今では作り切れるかどうかすら怪しいだろう。

一方バーサーカーは、復活したばかりでほぼ無傷。

このくらいの距離ならば、十秒と経たずに到達出来る。

アーチャーもそれは理解している筈だ。

それでも、彼がそれに賭けると決めたのなら、私はそれを信じるしか無い。

 

 

「つまり、私の出番って訳ね。」

 

 

そう決めて爪先に力を込め、勢い良く地を蹴った。

未だ自らの幻想の中で剣を編むアーチャーの隣に並び立ち、対象を狙い撃つ為に構える。

既に仕込みは終わっている。

今も尚向かってくるバーサーカーを少しでも止めるために、ありったけを使って足止めをする。

 

 

「止まりなさい!デカブツ!!」

 

 

赤橙黄緑青藍紫。

両の手で虹を描き、それらを向かい来る黒い怪物に全力で投擲する。

爆撃に貫通、炸裂と拡散、それと目眩しの呪い。

一秒でもいい、あいつの動きを止める!

 

 

「やらせない!!」

 

 

しかし、その考えは相手も同じ。

イリヤも走りだしていた。

その足取りは縺れたようにふらふらとしていたが、転ばぬ様にしっかりと踏み締めている。

そして自らの髪を数本抜き取り、それに魔力を加えた。

私が放った七つの宝石を撃ち落とそうと、白銀の小鳥を模した使い魔を放つ。

それらは飛びながらテーブルナイフのように姿を変え、私の宝石を撃墜し霧散する。

白と虹。

鮮やかな粒子が宙を舞う。

その隙間を縫って、バーサーカーは突進してくる。

 

 

「っ、なら!」

 

 

相手の対応を見て、次の宝石を構える。

今度は吸い込まれるような黒曜石。

それをバーサーカーの上に放り投げた。

 

 

Gewicht, um zu Verdopp elung———!(重圧、束縛、両極硝)

 

 

「◼◼◼◼!?」

 

 

砕けた黒曜石から赤黒い鎖が広がる。

それはバーサーカーを身体を絡め取り、その動きを拘束した。

込められた呪は束縛。

英霊すら縛り付ける超級の呪い。

その暴力的な体躯を無理やりに繋ぎ止める。

アーチャーまで二十メートルを切ったところで、バーサーカーを完全に停止させた。

 

 

「くっ!バーサーカー!そんなもの引き千切りなさい!」

 

「◼◼◼◼◼◼!!」

 

 

今度は自らで攻撃せずバーサーカーに命令するイリヤ。

やはり彼女も、この緊迫した状況に意識を擦り減らしているのだろうか。

対応が少しずつ遅れている。

やはり気付いていない。

これを逃してはならない。

常に先手を打ち続けて、こちらを先に届かせる。

 

 

「まだ……まだぁ!!」

 

 

今度は黄金に輝くトパーズ。

放った瞬間に、眩い閃光となりながら掻き消える。

これでバーサーカーの目は一瞬でも潰せる筈だ。

その隙は見逃さない。

 

直ぐに次の宝石を構える。

今度は真紅に染るルビー、バーサーカーごと、この一帯を焼き払う。

 

 

 

 

「◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼!!!」

 

 

 

 

と、宝石を放り投げる直前に、一迅の風と白煙を纏って真っ黒な巨躯が躍り出た。

 

 

「嘘!?こんなに早く……!」

 

 

驚愕と共に見ると、バーサーカーには片腕が無かった。

断面はジクジクと熟れた無花果のように腫れ上がり、煙はそこから上がっている。

それだけじゃない、胸も足も身体中から蒸気が立ち上っていた。

その姿は宛ら、箍が外れた暴走機関車のよう。

最早進むことしか出来ず、後ろには下がれない。

 

 

(……自分の体ごと引き千切った!まずい!)

 

 

 

捕らえていた黒曜の呪縛ごと自らの身体を引き千切って、バーサーカーは突進する。

先程の目眩しも効いていないのか。

一直線にアーチャーへと突き進み、残った腕を大きく掲げる。

アーチャーは未だ投影を完了していない。

偽りの聖剣は未だ光を持たず、枠組みのような骨子とそこから稲妻のように迸る魔力しか見えなかった。

 

 

 

 

「だめ!アーチャーーー!!!」

 

 

 

勝負は着いた。

先に届いたのは、バーサーカーだ。

 

 

 

 

 

「お願い……、やっちゃえ!バーサーカーーー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

「◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

イリヤの甲高い叫びと、バーサーカーの猛々しい咆哮。

対照的な二つと同時に、大きな地響きが剣の丘に響き渡る。

狂戦士が持つ膂力を全て秘めた全力の一撃は、アーチャーという存在を一瞬で粉砕した。

 

何かが砕けるような音。

舞い上がる土煙。

不思議と、赤いものは少ない。

アーチャーには最早飛び散るほどの魔力も残っていなかったのか。

悲鳴も上げず、何も零さず、さっきまでそこに居たアーチャーは、破片となって消え去った。

 

すぐ横で、ずっと戦ってきた相棒が潰された。

その現実を目の当たりにして、どこか俯瞰したような自分は、ポツリと言葉を落とす。

 

 

 

 

 

「はぁ………、そっか…………」

 

 

 

 

 

それは答えとなり、体中に染み渡る。

絶え絶えになった息。

急速に魔力を使った為に、体からは力が抜けそうだった。

 

 

最早令呪の繋がりは無いので、彼の安否は分からない。

今は見えない煙の向こうで、もしかしたらアーチャーは辛うじてでも躱しているのかもしれない。

 

けれどそんなことは無く、煙が晴れてもその姿は捉えられない。

見えるのは、出鱈目に散らばった彼の破片のみ。

答えは、すぐ目の前にも転がっていた。

 

 

 

 

そして私は膝を付いた。

 

 

涙でぼやける視界を誤魔化す。

 

 

赤銅色に広がる中天を仰ぎ、目いっぱい吸った息を吐きだして、

 

 

 

もう一度、バーサーカーが立つ丘を見た。

 

 

 

そして、生まれて初めて。

 

 

 

 

「やっと、届いた。」

 

 

 

自分の弱さに感謝した。

 

 

 

 

負けると分かっていたからこそ、

その弱さを自覚し、変えようと足掻いたからこそ、作り出せる結果もある。

 

 

アーチャーは間に合わない。

知っていた。

私はまた失敗する、最後の詰めを見誤る。

知っていた。

 

 

自分の弱さを知っていた。

出来ないことを理解していた。

だから、持ちえぬものは望まない。

自らが持つ全てを使って、その弱さに抗って。

 

 

 

 

だからこそ、この結果を生み出せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

どうやらバーサーカーも気が付いたようだ。

彼がたった今殺したのが誰なのか。

辺りに散らばる彼の破片は、一体誰が作り出したものなのか。

 

 

 

 

 

 

「ッ!!違う、バーサーカー!!そいつはアーチャーじゃ無い!!!」

 

 

 

 

 

 

「もう……遅いわよ。」

 

 

 

 

 

バーサーカーの足元に散らばるのは断じてアーチャーの肉片などでは無い。

散らばっているのは宝石の欠片。

それも、彩を失い無色となった用済みの欠片。

ただのガラス片と何ら変わらぬものだ。

恐らく壊し切るその瞬間まで、それは肉片と同じ感触、同じ色だっただろう。

当然だ。そうなる様に作ったのだから。

 

 

人の身で、英霊(お前たち)に抗う為に作ったのだから。

 

 

 

 

 

 

 

I am the bone of my sword(この光は、永久に届かぬ王の剣)………」

 

 

 

 

 

 

 

少し離れた所から、全てを終えた声が聞こえた。

赤い外套をはためかせ、黄金の剣を携えて。

その輝きに負けずとも劣らず、力強く立つ男がいた。

 

 

 

 

 

「感謝する。完璧だな、マスター。」

 

 

 

 

 

剣の丘にて黄金の粒子が飛び跳ねた。

趨る流星、舞う星屑。

その神秘に、遍く全ては目を奪われる。

 

 

 

「何で………?今ここで、叩き潰したはずじゃ、」

 

 

 

「その前提からして違うのよ。……宝石人形、何とか間に合ったみたいね。」

 

 

 

 

 

 

宝石人形。

私が使った大仕掛けの正体。

これは対象の魔力を吸う事で、その対象の姿形を模倣する事が出来る。

それは英霊も例外では無い。

こちらがそれに足る宝石を費やせば、例え超級の神秘だろうと模倣する。

今回私が持って来た宝石の、七割弱をこれに使った。

この隙を生むためだけの大博打に使ったのだ。

 

加えて、これの効果はそれだけじゃない。

この人形は、破壊された時に中に入っている魔力をオリジナルに還元する能力を持つ。

つまり、私が持って来た宝石の七割弱は全て、アーチャーの手に渡ったのだ。

それは令呪の魔力にすら匹敵する膨大な量だろう。

形の無い令呪、と言っても過言では無い。

私とアーチャーの信頼が生んだ、仮物の令呪だ。

 

 

 

 

 

星の欠片は世界を覆う。

光は一つに収束し、巨大な光帯を作り出す。

人の願いで作られた、かの騎士王の黄金の剣。

投影で生み出した偽りの光でも分かる。

彼にとって、あの剣がどんな存在なのか。

きっと文字通りあれが彼の始まりで、そして彼の全てなんだろう。

 

 

 

 

 

束ねるは星の息吹、輝ける生命の奔流。

 

 

 

 

 

永久に遥か(エクス)———」

 

 

 

 

 

 

「行け!!、アーチャーーーーー!!!!!」

 

 

 

 

 

 

「———黄金の剣(カリバー)!!!」

 

 

 

いざ仰げ、星に鍛たれし最強の幻想。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。