私的鉄心END   作:たまごぼうろ

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どうも皆さん、たまごぼうろです。
また久しぶりになってしまいましたね。コンスタントに投稿するのはなかなか難しいです。
さて、季節は3月の中旬、体調の方は大丈夫でしょうか?
昨今コロナで騒がしい世間、出掛けるのもままならない状態が続いております。
2週間ほど前、fate展に行ってきたのですが、僕が行った次の日に休館、という何とも奇跡的なタイミングでした。
現在休館中ですが、機会があればぜひ行ってみてください。因みに僕は楽しすぎてその時間の事をほぼ覚えていません笑


では本編の方へと。
と言っても僕が語れることは多くは有りません。
ここから先は、どうか覚悟を持って。
目を瞑りたくなるような、顔を覆いたくなるような、そんな悲劇からどうか目を逸らさないで。
私的鉄心エンド、遂に最終局面です。
どうか、お楽しみください。


blow up in your face①

急に迫って来た暗闇の中溺れそうに藻掻く。

それがアーチャーの固有結界から弾かれたと認識するのには、少し時間がかかった。

酷く体が重い。

宝石人形によって一気に魔力が消費されたからだ。

手先の感覚は鈍いのに、心臓は早鐘をうっている。

それでも脱力した体に鞭を打ち、現状を把握しようと努める。

そうして無理やりに頭を冷やせば、途端に何があったかを思い出した。

アーチャーの決死の大技がバーサーカーに炸裂した。

眼が眩むほどの黄金の光が、真っ白な白光に変わった瞬間を確かに覚えている。

その後を思い出そうとすると、思考は直ぐに結論に辿り着く。

ここは森だ。

冬木市郊外、アインツベルンの管理する深い森。

私たちはそこで戦っていたのだ。

 

(……アーチャーの固有結界からはじき出された。)

 

そう思ってすぐに暗視の魔術を自らにかける。

すると、直ぐに全ての結末が目に入った。

 

 

一人の男が、立っている。

両の腕はだらりと力が抜け切り、動きそうにない。

膝はがくがくと震え、こうして立っているのすら難しいのだろう。

少し上を向いて動かない。

泣いているのだろうか。

 

その後ろ姿を前にして、顔も見えていないのに何故かそう思う。

精も根も尽き果てたその男の背は、深い深い喪失に満ちていた気がした。

 

 

 

 

対して、遥か後方。

巨木折り重なる荒地に、巨躯が倒れ込んでいた。

その体は黄金の粒子となり、徐々に天へと消えている。

バーサーカーが、ギリシャ神話の大英雄が消えようとしている。

既に瞳に光は無く、ぶすぶすと所々から黒煙が上がっていた。

あの光は恐らく暴発。

アーチャーはきっと、自らが投影した聖剣を自らで破壊したのだろう。

バーサーカーきっとそれを間近で喰らい、そうして漸く膝をついた。

あらゆる試練、あらゆる難業にすら耐えきった男は、光星の最後の輝きを以て二度目の生の終幕を迎えたのだ。

 

 

 

 

それを唖然として眺めていると、いつしかそれは徐々に人の形を歪めていき、まるで破裂したかのように、されど音も無く舞い散った。

 

 

 

ぽたり、と静寂の中に乾いた水温が響く。

それはイリヤが流した涙に違いなかった。

彼女はそんな音の消えた世界に準ずるように、静かに、静かに。

ただ淡々と涙のみを、声も上げずに落としていた。

だが、私の目に留まるのはそんなもの悲しい光景では無く、消えてしまったサーヴァントの方だった。

 

 

それは今まで何度も見た、サーヴァントの消滅の瞬間に間違い無い。

 

 

かくして十二の試練は燃え尽きた。

聖剣の最期とともに、その体は消滅する。

破裂する神秘の奔流は、見事その命を奪い切った。

誰が見ても見まごう事は無い。

 

 

アーチャーの、勝ちだった。

 

 

 

 

「……………勝っ…………た?」

 

 

目の前に映る光景が、余りに自分の理想に過ぎたものだったので、思わずそう声に出してしまう。

思い描いていた一番が目の前にある。

そんな自然と発せられた声を聞いたのか、背を向けて立つアーチャーは、こちらに振り返る。

先ほどの喪失感は既に消え失せ、その瞳、いや全身からは溢れんばかりの充足が感じられた。

 

 

 

 

 

「勝った、勝ったぞ、凛。オレたちの勝利だ。」

 

 

 

心底から、自分と己を讃えるように、

隠しきれない万感の思いを込めて、彼は力強く言った。

その頬からは、やはり涙が滴っている。

彼も感極まったのか。

少し寂しそうで、それでいて誇らしげな顔だった。

 

 

 

「っ、ほんと?本当に?」

 

 

こちらも涙目になりながら聞き直す。

普段見ない彼の涙につられたからだと、心の中で言い訳した。

 

 

「あぁ、本当だとも。君のサーヴァントは確かに勝った。君のおかげだ。」

 

 

僅かに上擦った声が返ってくる。

返答は変わらない。

例え信じられなくても、事実は覆らない。

私たちは、バーサーカーを下したのだ。

聖杯戦争の勝者は、紛れもなく私たちだ。

 

 

 

「そっ………か、そう………なんだ。」

 

 

 

理解しようとした途端、様々な感情が溢れ出る。

温かいようで冷たいような、苦しいようで楽しいような。

不思議な感覚に陥りながらも、目の前の事実を見れば自然と込み上げるものがあった。

視界が歪む。

思わず、両手で顔を抑える。

 

 

 

ーーーあぁ、遂に終わったのか。

 

 

 

目尻に溜まる涙が零れないよう、ゆっくりと顔を上げる。

月も見えぬ暗天に少しだけ安堵する。

この暗さなら、きっと誰にも見えてはいないだろう。

これで終わりだっていうのに、泣いていては締まらない。

これで漸く報われる。

全て、全て、無駄にはならなかった。

私の人生は、無駄ではなかった。

 

 

お父様、お母様、

それに、桜。

 

 

勝ったよ、私。

大切な相棒が、私を助けてくれたよ。

 

耐えきれず流れた涙は、夜風に乗って消えていく。

一層冷たくなる風は、火照り切った体には丁度良い。

 

 

 

 

 

「アーチャー、ねぇ、聞いて。私、勝ったのよ。」

 

 

笑いながら同じように涙を流すアーチャーに、縋るように声をかける。

 

 

 

「あぁ、そうだな。」

 

 

 

「これで、大丈夫よね?桜もきっと、笑えるわよね?」

 

 

 

問い掛けに意味は無い。

強いて言うなら、地を足を付けたかったのだ。

 

 

 

 

「大丈夫、きっと見ていたさ。君の姿をな。」

 

 

 

在りもしない過程に、それでも正解が欲しかったのだ。

 

 

 

「私、頑張ったよね?辛かったけど立ち上がったし、絶対諦めなかった。ね、そうよね。」

 

 

 

追認に他意は無い。

理由を加えるのなら、ただ褒賞が必要なのだ。

 

 

 

「うん、君は頑張ったとも。ずっと一緒にいた私が言うのだから間違いない。」

 

 

 

当たり前の回答を、それでも尚聞きたかったのだ。

 

 

 

「アーチャー、アーチャー、ねぇ、アーチャー。」

 

 

 

呼号に意思は無い。

想いがあるとすれば、それは強迫にも等しい。

ただ名前を呼ばなければと、それだけだったのだ。

 

 

 

「……………お疲れ様、頑張ったな。偉いぞ、凛。」

 

 

 

 

 

その言葉が全てだった。

その言葉がずっと欲しかった。

走り続け走り続け、得たものはたったそれだけ。

それだけの為に、私は無我夢中で走ったのだ。

息が上がる。

ここでこうして立ち尽くすのが酷く不自然に感じる。

そうして気づけば息の呑むのすら億劫になり、涙で歪んだ視界のままに走りだしていた。

 

 

 

 

 

 

一歩。

足がもつれそうになる。

 

 

ーーー何を言おう、何て今更馬鹿らしいわね。

 

 

二歩、三歩、四歩。

それでも不格好ながら歩み寄る。

 

 

ーーーだってもう、すぐ近くだし、今更ごちゃごちゃなんて考えられないし。

 

 

五歩、六歩、七八九歩。

次第に近くなるその姿に強い安堵を覚える。

この時だけは、羞恥も何もかもが消え失せていた。

 

 

 

ーーーあぁ、でもとりあえずこれだけは言わなくちゃ。

 

 

そして、十歩。

 

 

ーーー本当に、本当に、ありがとう。アーチャー。

 

 

 

 

この感情に愛は無い。

ただ、名前を付けるなら。

 

きっとこれが、淡い、焦がれるような何某、と言うやつなのだろう。

 

 

 

先程、彼に抱き締められたのを思い出す。

今度は逆に、自分が抱き締める番だ。

 

 

あぁ、なんて素晴らしき世界。

 

 

私達は今、この地に立って生きている。

 

 

 

 

 

 

 

 

秘めたるは十七年に及ぶ悲願。

歓喜に震える身体、堰を切ったように止まらない涙。

世界が自分を祝福しているような、幸せに満ちた一瞬。

幸せの音はもう目の前だった。

 

 

 

 

 

 

だが、そんな幸福は音も無く

 

 

 

 

 

 

最も忘れてはならなかった、最悪によって奪われる。

 

 

 

 

 

音も無く這い寄る悪意。

我らの勝利を掠めとらんとする杯の簒奪者。

 

彼らは狙っていた。

淡々と息を潜めて、その時を待っていた。

どんな人間でも生まれる、その一瞬の快楽を。

幸福という脳内麻薬。

一度溢れ出せば止められない、健やかなる正の感情。

その瞬間、その絶頂を彼らは穿つ。

 

 

 

 

 

それは、森の木々の隙間を縫って、

 

 

 

 

 

 

我らの尊き一瞬を踏み躙って、

 

 

 

 

 

 

白面の髑髏(しゃれこうべ)は静かに、高らかに笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

確も、人とは愚かしいと。

 

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