そう言えば最近、新作小説を投稿しました。
というもの、先日公開されたFGO新章「星間都市山脈オリュンポス」
あれ本当に最高でしたね。
キリシュタリアがもう、彼に泣かされっぱなしでした。
そんな感じでキリシュタリア主人公のお話が現在投稿中です。
興味ある方は是非、僕のマイページから飛んでいただければ、と思います。
いや、少々ぶっちゃけますと、旬のジャンルは凄く伸びますね。
改めてこの鉄心エンドのマイナーさに気付かされました(笑)
投稿一週間でもう一年以上投稿し続けているこれに並ぶんですから、今のFGOの勢いたるやすさまじいですね。
でも、こっちの投稿も続けていきますよ。
と言う訳で本編です。どうぞ。
「待て、待ってくれ。」
肩になにかが触れた。
振り向くと、慎二が立っていた。
口の端から血が零れている。
ギルガメッシュの威圧から立ち直るために、自らの舌を噛み切ったのだろう。
苦悶歪む表情で、それでも俺を掴んで離さない。
「放してくれ。俺……やらなきゃ。」
その手を振り払い進む。
アサシンの元へ、もう取り返しがつかないと分かっていても。
でも、それをさらに強く掴まれる。
「待てって言ってんだろ!!」
口から血を吐いて慎二が叫ぶ。
どうやら彼も彼で放す気は無いようだ。
「邪魔だ、放してくれ。」
心ここに在らず。
最低限の意味を含め、最低の事を言ってしまう。
あぁ、酷く鬱陶しい。
こんなにも俺を気にかけてくれる。
そんな想いすら、今の俺には酷く邪魔だ。
そんな事、今更望んで良い訳ないのに。
これ以上、誰も巻き込みたく無いのに。
僅かに目を細め慎二に向き直る。
そうして、彼をつき飛ばそうとその肩に手を置いて。
「…………」
「やっと、こっちを見たな。」
気が付いた。
彼の目には涙が浮かんでいる。
今にも垂れ落ちそうなそれを零すまいと、必死にこちらを睨み付ける。
慎二は明らかに苦しそうだった。
息はゼイゼイと荒く、胸の辺りを手で押えている。
顔色も悪く、汗もひどい。
だが、俺を掴む手だけは一層に強くなっていた。
「慎二……………」
目を落としてしまう。
涙を堪え、必死に俺を引き止めようとする姿に後ろめたさを感じてしまう。
だから俺は突き飛ばそうとした手を下ろし、彼から目を切って再び振り返ろうとして
「ーーー僕を見ろ!衛宮ァ!!」
そんな激昴に意識を奪われた。
「俺たち、勝っただろ!?終わった、終わったんだ!!なのに何でその先へ進む?なんでそんなに自分を苦しめるんだ!?」
きっとそれは、慎二が彼としてある最後の言葉だろう。
慎二も分かっている。
互いに明日からは互いに今までの自分でいられない。
俺を引き止めるなら、これが最後のチャンスだと。
「それで………お前はそれでいいのかよ!お前はそれで幸せなのかよ!!」
俺に向けてそう叫ぶ慎二。
幸せ。
その言葉が酷く引っかかった。
これで俺は幸せなのか?
これが、俺本当の望みなのか?
俺の結末は、これで
こんな結末で、いいのか?
『もし、私が悪い人になったら ーーー』
そうだ。
俺には、俺以上に俺の幸せを望む人がいた。
『また、そんな怪我して ーーー』
俺が傷付くことを、何よりも悲しむ人がいた。
『ーーーーー先輩。』
そう呼んでくれる人が、俺にはいたんだ。
もしこの戦いが、彼女の為の弔いだと言うのなら。
俺はその意志に殉ずるべきではないのか?
彼女の願いを汲んで、幸せに生きるべきではないのか?
再び訪れる葛藤。
蘇る記憶、呼び起される幸福な日々。
昨日を笑い、今に触れて、明日へと望む。
日々の何気無い出来事に憂い、何でもない日々に喜びを見出す。
当たり前の幸せ、当たり前日々。
何時までも続くと思っていた、忘れられない大切な記憶。
それを幸せと言うのなら、俺は
「それは違うぞ、間桐慎二。」
ぴしゃり、と。
零度を下回る冷水の中に、唸るような感情が込められている。
鈍重な声で、誰かが俺の思考を遮った。
「………神父………さん……?」
「君が衛宮士郎を引き止めようとするのは自由だ。だが、その言葉だけは看過できん。」
声の主には珍しく苛立ちがあった。
まるで、そう。
同じ事を、何度も何度も言われ続けて来たような。
繰り返される問答に嫌気が差した人間の言葉だった。
「君は今幸せと言ったな。こいつが進む道が幸せなのかと、そう問うたな?」
「………そうだよ。それの何が悪いって言うんだ。」
「あぁ、悪いとも。幸福を説くものが描く幸福はいつだって自らの理想の未来だ。君は衛宮に幸せを問うているのでは無い。自分の幸せを、この男に押し付けようとしている。」
「冗談では無い。幸福、幸福だと?幾千幾万その問いを投げ掛けられ、何度も何度もそれを望もうとして、そしてその度に、その度し難さに打ちひしがれた。」
それは恨み言のようだった。
世界に満ちる幸福全てに、心の底から失望していた。
そして、失望するしか無い自分をそれ以上に呪っていた。
「だから、私は至った。人の幸福とは他者が定めるものでは無く、自らで見つけ出すものだ。それが善であれ悪であれ他者に指図をされる言われは存在しない。」
その言葉は一つの諦観だった。
世界に溢れる幸福に対する回答とも言える。
幸せを定めるのは自分である。
道を決めるのもまた、自分である。
善も悪も、その過程で自分がどうなるかも、それが真に幸福なのかも、何もかも関係が無い。
「道を創るのは何時だって我々で、最後にそれを振り返るのも我々だ。どう進むかでは無く、どこに辿り着くか。進む道は己で決める。それが人間という、愚かで無謀な生き物の在り方だ。」
それが自分で決めた道なら、きっとそれが一番正しいし、一番幸せだ。
果ての無い荒野。
一寸先すら見通せない闇。
その中にその身一つで挑んで行く。
灯りを一つ、その身に秘めたもののみを標として。
何て幸福で、残酷な自由。
「…………ごめん、慎二。俺はもう戻れない。そっちはもう、俺の居場所じゃ無い。」
抜け殻のような言葉だった。
嘗ての幸福を否定する言葉だった。
先へ進む。
闇の中へ躍り出る。
恐怖は無い。
心の内はこれ以上無く澄み渡っている。
後悔も、何もかも無くなって
軽くなった自分を見て、今なら何だって出来そうだと薄く笑う。
「嘘、嘘だろ?なぁ!衛宮………衛宮!!」
吃音に絡め取られそうになり、
ふと、後ろを振り返る。
後ろに立っていたのは、もう誰でもない、なんでもない、男の悲痛に満ちた姿。
「共闘はここまでだ。じゃあな、世話になった。」
これまでの全てが、積み上げた全てが
「待て、待ってくれ………」
音も無く、残す物も無く
「行かないで…………くれよ…………」
儚く、消えていった。
その事実にすら、何の感慨も持たずに。