と言う訳で一気に投稿しようと思います。
ハーメルンはpixivと違って章分けが出来るので、結構分けようと思います。
ではどうぞ。
深山町の丘を登った先。頂上近くにある西洋風の屋敷。そこには間桐臓硯や慎二が暮らす間桐邸がある。
そこの地下深く。間桐の修練場と呼ばれる場所で、件の魔術師、間桐臓硯が1人思想していた。
「ふむ、桜の死体を回収できなかったのは痛いがまぁ、良いだろう。チャンスはまだまだある。」
「もとより今回は様子見、桜の死体さえ手に入ればどうとでもなる。」
臓硯にとっての本命は今回ではなく次回。第6次だ。
そのためにもどうにかして桜の遺体を回収し、自分が桜の体を使ってでも子を為す必要がある。
「おそらく遠坂の娘が持ち帰っておるだろうな。ここはアサシンに任せるとするかの。」
最早、臓硯はこの聖杯戦争に興味はない。だが、アサシンという優秀な手駒をみすみす捨てることはしていなかった。
「此度の間桐の戦いはここで終わりじゃな。恐らく今回は遠坂の娘が勝つだろう。彼奴とアインツベルンの器では、もはや覚悟が違うだろう。」
「次までは後60年。気長に準備するとしよう。」
老魔術師は笑う。彼にとって60年など、今までの妄執の500年に比べれば瞬きの如き。
要は願いを為せさえすれば、彼にとっては過程などどうだって良いのだ。
「しかし、いいところまで行ったのだがのぉ。クク、残念至極…」
その時だった。修練場の上から一匹の虫が入ってくる。
臓硯が偵察のために町中に放っている虫達。そのうちの1匹だった。
「ぬぅ?ほう。なるほどなるほど。これはまた珍しい客人が来たものじゃ。どれ、出迎えてやらんとのぅ。」
そうして臓硯は修練場を出ていった。
間桐邸の前にその男は立っていた。
時刻は昼過ぎ、通り雨が過ぎた後の温かい日差しが照らしているにも関わらず、男にはおよそ表情というものがなかった。
すると家の奥、薄暗い屋敷の向こうから老人が出てくる。
この家の主、間桐臓硯だ。
「ほう、貴様が今更何用かね。貴様は既に敗れた。ならばもはやここに来る理由など無かろう。大人しくあの神父の元に下り、自らの保身に務めた方が身のためだと思うが?」
臓硯は目の前の男に言う。
しかし、男は答えない。代わりに冷え切った瞳で臓硯の事を見つめるだけだ。
「それとも何か。貴様が見殺しにしておきながら、今更あの愚娘の仇を取りに来た。とでも言うつもりか?」
男の表情は変わらない。それとは対照的に、臓硯の方は益々愉快そうに言葉を重ねる。
「呵々、年寄りに対していつまでもそう黙りを決め込むでない。流石の儂でも多少傷つくというものだ。」
相変わらず男は黙ったままだった。その異様な雰囲気。まるで臓硯の言葉がそもそも耳に届いてないようだった。
「何とか言ったらどうじゃ?恨み言の1つでも、貴様にはあるのだろう?のう、衛宮士郎。」
無表情を貫く男。衛宮士郎に向けて臓硯が言う。
相変わらず表情は変わらない。光のない瞳は数日前とは別人のようだ。
そうして、衛宮士郎はようやくその口を開く、
「あぁ、
明確な殺意を込めて、そう言った。
これが第1歩。正義の味方になる為の最初の試練。
万人の為に悪を討つ。衛宮切嗣の意志を継いだ男の最初の標的は、間桐の老獪。500年の妄執を抱く化け物。
聖杯戦争は終わらない。終わらせるのはただ1人。
彼が戦うべき相手はまだこの町にいる。
今宵、運命は逆行する。