私的鉄心END   作:たまごぼうろ

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なんとまさかの三話目です。
さて、今回でBacklogも終了となります。
遂に次話からは皆さんお待ちかねの決戦ですね。
いやぁ、感慨深い。
ここまで本当に長かったと、ひしひし感じております。
ここから物語も最終局面へ向かっていきます。
士郎はどうするのか、凛はどうなるのか。
聖杯戦争は、如何にして終結するのか。
全霊で書ききりつもりです。お付き合いください。

では、どうぞ。


Backlog⑤

 

 

「―――告げる。

汝の身は我の下に、我が命運は汝の剣に、聖杯のよるべに従い、この意、この理に従うのなら

 

 

ーーー俺に従え。ならばこの命運、お前に預けよう。」

 

 

左手に紅い光が灯る。

自分の中に、自分では無いものが流れ込んでくる。

それは誓いの灯。

世界を裂く神秘との邂逅。

 

 

「誓おう。我らが契りは仮初なれど、貴様が約定を守る限り、私も貴様の影となる。」

 

 

流れはより強くより固く、確かなものへと変わっていった。

激流のように流れ込む別の意志。

それにはセイバーのような強さが無い代わりに、這い上がっていくと言わんばかりの執念がある。

瞬間、手の甲に焼け付くような痛みと熱さを覚えた。

数日前と同じく、刺青のようにじわりと令呪が広がっていく。

 

 

だが、それは数日前と違う姿になっていた。

手の甲に刻まれるのは十字の痣。

セイバーと契約していた時とはまた違う令呪。

 

 

 

 

 

 

熱さと痛みが引いていく。

アサシンも先程と違い薄れていた体はしっかりと存在しており、俺の中にも確かにアサシンとの繋がりが存在した。

 

 

「………終わったか。」

 

 

ギルガメッシュがぱちん、と手を鳴らすと、彼を縛り付けていた鎖が解ける。

白い髑髏の面越しにギルガメッシュを睨みつけるアサシン。

 

 

「なんだ、籠から出されたのがそんなにも不満か?望むのならば何時でも捕らえてやるが?」

 

 

「やめろ、邪魔をしないと言ったのは嘘だったのか?」

 

 

そう怒気を孕んで言うと、ギルガメッシュは両手を上げて首を横に振った。

それを言われては困る、と言わんばかりだ。

 

 

「とにかく、俺はまたマスターになった。なら正式に聖杯戦争に参加できるだろ?」

 

 

右手に灯った令呪を言峰に見せながら問う。

それを見て言峰は驚いたように目を見開いた。

 

 

「これは…………」

 

 

「なんだよ。何か文句あるのか?」

 

 

初めて見る言峰のそんな表情にこちらも驚き聞き返す。

それは驚愕と光悦入り交じった、何とも言い難い表情だった。

 

 

「はっ」

 

 

だがそう独りごちた後に、今度は大きく口を歪ませる。

素晴らしい、と言うように。

最上の賛美を与えるかのように大きく笑い、そうして言葉を吐き出した。

 

 

 

 

「くっ、はははははは!何たる因果、何たる運命!意思は消えん、とでも言うつもりなのか!衛宮士郎。お前はつくづく運命というものに縁の深い者だ!」

 

 

 

「いや、すまない。無論だ。あぁ、無論だとも。君の参戦を心から歓迎しよう、新たなるマスターよ。」

 

 

 

その後も狂ったように笑い続ける言峰。

天を仰ぎ、宙を見つめ、今ここには無い何かに向けて一心不乱に語りかける。

 

 

 

「このような歪な意思が受け継がれ、人の悪性を否定しようとする!そんな奇跡、そんな非道が再びこの世に現れる!」

 

 

 

そうして、答えを見つけたかのように

その邂逅を、忌々しくも求めていたように

俺が辿る未来に向けて予言を向けた。

 

 

「待った、待ったぞ、十年だ。漸く成ったな、魔術師殺し。」

 

 

 

 

そうして俺を真っ直ぐ見据えて、魔術師殺し、と俺を呼んだ。

嘗ての切嗣と、同じ名で。

 

 

 

「その名を背負うからには敗北は許されない。お前はたった今から、聖杯戦争に勝たなければならなくなった。その覚悟はあるか?」

 

 

そうして一頻り笑い好きなように語り、改めて俺に問うてくる。

聖杯戦争に勝つ気はあるかと。

正義の味方に足るだけの覚悟はあるのかと。

 

 

 

「当たり前だ。」

 

 

愚問だった。

答えは初めから決まっていた。

力も術も無かった俺が、それでも一番最初から決めていた事。

この戦いを止めたい。その為に、この聖杯を使いたい。

願いは何一つ変わっちゃいない。

 

 

 

「戦う。俺は、正義の味方(マスター)として戦う。」

 

 

力強く、迫り来る運命を睨み付けるように。

数日前と同じ言葉で、しかし意味も意思も別のものに。

再び殺し合いへの参戦を宣言した。

それによってどんな結末(エンド)を迎えるかなんて、自分が最も理解している。

 

 

「はっ、良い意気込みだ。主役がこうならば少しは映えるであろう。やはり我の目に狂いは無かったな。」

 

 

両手を挙げてギルガメッシュが歩み寄って来る。

賞賛のようなその言葉には他者を称えるような心地は無く、寧ろ自らの翠眼に対する賛美だった。

 

 

 

「この聖杯戦争も次で終幕だ。勝者は全てを得るが、敗者は全てを失う。正に原初の戦いと言えるだろう。」

 

 

 

そして明確に終幕を告げる。

けれど、俺にとっては開幕を告げるものだった。

これは始まりだ。

ここから漸くスタートなんだ。

正義の味方という遠く永い夢が、今ここから始まるんだ。

胸元のホルスターをぎゅっと握り、他の誰でも無く、自分自身に言い聞かせるように答える。

 

 

 

「誰が相手でも俺は負けない。これは、その為の力だ。」

月が隠れた空の元、地獄で待つ先代に向けて、

 

 

 

 

『うん、しょうがないから、俺が代わりになってやるよ。』

 

 

 

 

あの言葉を現実にすべく、俺はそう口にしたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼の話はこれで終わり。

伏せられていた2月10日の真相はこれで全て。

運命は流転し逆行し、ここに一つ新たな結末が紡がれた。

 

 

曰く、それは鉄心。

己を含むすべてを殺し、冷え固まった心を持つ者だけが得る結末。

正史では語られる事の無い、台無しの終焉。

 

 

 

 

 

 

 

 

でも、最後に一つだけ。

誰の心にも残らない、けど確かに彼の戦いが始まった時。

その瞬間を切り取った、全く同じの違う出来事を、彼はきっと忘れない。

 

 

 

 

 

 

「……今のお前に、監督役として改めてこの言葉を送ろう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ、始まる(終わる)のだ。

あぁ、終わる(消える)のだ。

言葉は意味を成し、意志を形作る。

あの時は皮肉だった。

叶わぬ夢に縋る者に対する軽蔑にも等しい謗りとして、彼の中にへばりついた。

でも今は、

何もかも変わってしまった今なら、一体何と聞こえるのだろう。

彼はその言葉を、一体どう捉えるのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「喜べ少年、君の願いは漸く叶う。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは皮肉だったのか、

それとも本当に、彼の悲願の成就を言祝いだのか。

真相は過去の残痕と消え、その意図は当事者のみぞ知る。

 

 

ただ一つ、

この先の、次の夜を知る者として言える事は。

 

 

その言葉は今度こそ現実になった。

成ってしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

嗚呼、聖杯戦争が終わるのだ。

 

 

 

 

 

 

 




Backlog is over


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