さて、今回でBacklogも終了となります。
遂に次話からは皆さんお待ちかねの決戦ですね。
いやぁ、感慨深い。
ここまで本当に長かったと、ひしひし感じております。
ここから物語も最終局面へ向かっていきます。
士郎はどうするのか、凛はどうなるのか。
聖杯戦争は、如何にして終結するのか。
全霊で書ききりつもりです。お付き合いください。
では、どうぞ。
「―――告げる。
汝の身は我の下に、我が命運は汝の剣に、聖杯のよるべに従い、この意、この理に従うのなら
ーーー俺に従え。ならばこの命運、お前に預けよう。」
左手に紅い光が灯る。
自分の中に、自分では無いものが流れ込んでくる。
それは誓いの灯。
世界を裂く神秘との邂逅。
「誓おう。我らが契りは仮初なれど、貴様が約定を守る限り、私も貴様の影となる。」
流れはより強くより固く、確かなものへと変わっていった。
激流のように流れ込む別の意志。
それにはセイバーのような強さが無い代わりに、這い上がっていくと言わんばかりの執念がある。
瞬間、手の甲に焼け付くような痛みと熱さを覚えた。
数日前と同じく、刺青のようにじわりと令呪が広がっていく。
だが、それは数日前と違う姿になっていた。
手の甲に刻まれるのは十字の痣。
セイバーと契約していた時とはまた違う令呪。
熱さと痛みが引いていく。
アサシンも先程と違い薄れていた体はしっかりと存在しており、俺の中にも確かにアサシンとの繋がりが存在した。
「………終わったか。」
ギルガメッシュがぱちん、と手を鳴らすと、彼を縛り付けていた鎖が解ける。
白い髑髏の面越しにギルガメッシュを睨みつけるアサシン。
「なんだ、籠から出されたのがそんなにも不満か?望むのならば何時でも捕らえてやるが?」
「やめろ、邪魔をしないと言ったのは嘘だったのか?」
そう怒気を孕んで言うと、ギルガメッシュは両手を上げて首を横に振った。
それを言われては困る、と言わんばかりだ。
「とにかく、俺はまたマスターになった。なら正式に聖杯戦争に参加できるだろ?」
右手に灯った令呪を言峰に見せながら問う。
それを見て言峰は驚いたように目を見開いた。
「これは…………」
「なんだよ。何か文句あるのか?」
初めて見る言峰のそんな表情にこちらも驚き聞き返す。
それは驚愕と光悦入り交じった、何とも言い難い表情だった。
「はっ」
だがそう独りごちた後に、今度は大きく口を歪ませる。
素晴らしい、と言うように。
最上の賛美を与えるかのように大きく笑い、そうして言葉を吐き出した。
「くっ、はははははは!何たる因果、何たる運命!意思は消えん、とでも言うつもりなのか!衛宮士郎。お前はつくづく運命というものに縁の深い者だ!」
「いや、すまない。無論だ。あぁ、無論だとも。君の参戦を心から歓迎しよう、新たなるマスターよ。」
その後も狂ったように笑い続ける言峰。
天を仰ぎ、宙を見つめ、今ここには無い何かに向けて一心不乱に語りかける。
「このような歪な意思が受け継がれ、人の悪性を否定しようとする!そんな奇跡、そんな非道が再びこの世に現れる!」
そうして、答えを見つけたかのように
その邂逅を、忌々しくも求めていたように
俺が辿る未来に向けて予言を向けた。
「待った、待ったぞ、十年だ。漸く成ったな、魔術師殺し。」
そうして俺を真っ直ぐ見据えて、魔術師殺し、と俺を呼んだ。
嘗ての切嗣と、同じ名で。
「その名を背負うからには敗北は許されない。お前はたった今から、聖杯戦争に勝たなければならなくなった。その覚悟はあるか?」
そうして一頻り笑い好きなように語り、改めて俺に問うてくる。
聖杯戦争に勝つ気はあるかと。
正義の味方に足るだけの覚悟はあるのかと。
「当たり前だ。」
愚問だった。
答えは初めから決まっていた。
力も術も無かった俺が、それでも一番最初から決めていた事。
この戦いを止めたい。その為に、この聖杯を使いたい。
願いは何一つ変わっちゃいない。
「戦う。俺は、
力強く、迫り来る運命を睨み付けるように。
数日前と同じ言葉で、しかし意味も意思も別のものに。
再び殺し合いへの参戦を宣言した。
それによってどんな
「はっ、良い意気込みだ。主役がこうならば少しは映えるであろう。やはり我の目に狂いは無かったな。」
両手を挙げてギルガメッシュが歩み寄って来る。
賞賛のようなその言葉には他者を称えるような心地は無く、寧ろ自らの翠眼に対する賛美だった。
「この聖杯戦争も次で終幕だ。勝者は全てを得るが、敗者は全てを失う。正に原初の戦いと言えるだろう。」
そして明確に終幕を告げる。
けれど、俺にとっては開幕を告げるものだった。
これは始まりだ。
ここから漸くスタートなんだ。
正義の味方という遠く永い夢が、今ここから始まるんだ。
胸元のホルスターをぎゅっと握り、他の誰でも無く、自分自身に言い聞かせるように答える。
「誰が相手でも俺は負けない。これは、その為の力だ。」
月が隠れた空の元、地獄で待つ先代に向けて、
『うん、しょうがないから、俺が代わりになってやるよ。』
あの言葉を現実にすべく、俺はそう口にしたのだ。
彼の話はこれで終わり。
伏せられていた2月10日の真相はこれで全て。
運命は流転し逆行し、ここに一つ新たな結末が紡がれた。
曰く、それは鉄心。
己を含むすべてを殺し、冷え固まった心を持つ者だけが得る結末。
正史では語られる事の無い、台無しの終焉。
でも、最後に一つだけ。
誰の心にも残らない、けど確かに彼の戦いが始まった時。
その瞬間を切り取った、全く同じの違う出来事を、彼はきっと忘れない。
「……今のお前に、監督役として改めてこの言葉を送ろう。」
あぁ、
あぁ、
言葉は意味を成し、意志を形作る。
あの時は皮肉だった。
叶わぬ夢に縋る者に対する軽蔑にも等しい謗りとして、彼の中にへばりついた。
でも今は、
何もかも変わってしまった今なら、一体何と聞こえるのだろう。
彼はその言葉を、一体どう捉えるのだろう。
「喜べ少年、君の願いは漸く叶う。」
それは皮肉だったのか、
それとも本当に、彼の悲願の成就を言祝いだのか。
真相は過去の残痕と消え、その意図は当事者のみぞ知る。
ただ一つ、
この先の、次の夜を知る者として言える事は。
その言葉は今度こそ現実になった。
成ってしまったのだ。
嗚呼、聖杯戦争が終わるのだ。
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