私的鉄心END   作:たまごぼうろ

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3話目です。
はい、前回の話の続きします。
前書き興味ない方はそのまま本編へお進みください。

間桐慎二強火オタクによる、HF最終章、間桐慎二のココがいい!!
冒頭の後に慎二が登場する(しない)のは、ラストシーンです。
桜が1人でお墓参りに行っているんですね。
ここは直接描写が無いので願望に近いんですけど、慎二っぽいなーと。
あの段階で、目の色から桜がかない遠坂に近づいているので、両親の墓参り、とも推察できますが、恐らく慎二のもので間違いないのかな、と思います。
そしてそこから花の唄が流れ、桜のシーン。
当然っちゃ当然なんですが、慎二はいないんですよ。桜が殺したので。
HF最終章、キービジュアルからも伺えますが、桜の罪がかなり強調されていて、恐らく映像で明確に彼女の罪を感じさせるのがあそこかな、と。
変わらなかったもの(士郎、凛など日常のキャラ)、変わってしまったもの(桜の心情と自分が奪ってしまったもの)。
前者を色濃く見せることで、後者の喪失が深く印象づくのは、見事としか言えません。
桜の中で慎二は傷なんだろうな、憎しみよりも憐れみが強かった分………

因みに今回紹介したシーン以外で慎二が活躍した(していない)シーンは

・桜による衛宮邸襲撃後、言峰による1,2章を影と共に振り返っていくシーン
・ゼルレッチ投影の為に記憶にダイブした際、士郎がゾォルケンを見たシーン
・大空洞での姉妹喧嘩の時に、桜が嫌いだったものを挙げていくシーン

僕が覚えている限りだと以上です。ここもだよ!って方はコメントで教えてください。
以上です。長々とありがとうございました。では本編へどうぞ。



VS 魔術師殺し③

 

 

「やった、の?」

 

 

 

ゆっくりと立ち上がる。

痛みを訴える左脚を引き摺って、右腕を構えたまま倒れ込んだ士郎に近づく。

油断は出来ない。

今までの彼なら致命傷の筈だが、目の前の男は最早以前の衛宮士郎とは別人だ。

何らかの対策を施していても不思議では無い。

念の為、と思いもう一度魔弾を放とうとした。

その時、不意にその上体が持ち上がった。

 

 

 

「!!」

 

 

 

右目を覆うように流れる血。

あれではもう見えはしないだろう。

口からも血が溢れている。

 

 

 

「ごほっ」

 

 

彼が小さく咳き込むと、そこから血が零れた。

あれでは恐らく、体の内部にまでダメージを受けている。

満身創痍にも見える五体は、されど力に充ちていた。

片目であろうと手負いであろうと。

手が動き、足が動き、まだ前を向けるのならば。

この男は、止まらない。

 

 

 

「まだ、終わってないぞ。」

 

 

 

火薬が爆ぜる音が耳を突く。

回避は間に合わなかった。

だが、弾丸もまた私を捉えることがなかった。

片目の士郎では、私を正確に狙う事が出来なかったのだ。

 

 

 

 

「これでっ!終わりよ!!」

 

 

 

特大の魔弾を食らわせようと手を構える。

だがその時、士郎は焦る素振りすら見せずに呟いた。

 

 

 

 

弾丸、弧描曲剣(トリガー、コールカーブ)

 

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

反射的に身を翻した瞬間、後方から飛来した弾丸が私の髪を数本攫っていった。

避けなければそれはきっと後頭部に突き刺さっていただろう。

 

 

 

「弾が、曲がった?」

 

 

 

無理な体勢で回避した為に縺れそうになる足腰。

それを強化を使って無理やりに持ち堪える。

 

 

 

 

「があぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

「きゃっ!!」

 

 

 

だがそれを崩すように、怒号を纏って士郎が肩から突進して来た。

躱せずにもろに食らい、また後方へと吹っ飛んでいく。

無論、魔術による攻撃ではない。

しかし、疲れきった私の身体は、その程度のものでいとも簡単に飛ばされるのだ。

 

 

泥濘した大地を滑る。

お気に入りの一張羅が土色に染まっていく。

土と赤。

泥と私たちの流した血。

暗雲の中、雨はそれらを流し切ろうとますます勢いを強くする。

 

 

「っ、は、ごほっ」

 

 

再び口から血を吐き出して、士郎は立ち上がった。

だらりと垂れた左腕。

血に濡れて、もはや見えない右目。

傷はとめどなく、その体から体温を奪っていく。

しかしこの程度、彼にとって致命傷には程遠い。

 

 

 

 

 

「あ、ア、」

 

 

 

止まらない。

使えない左腕を杖にして、不格好にも起き上がる。

 

 

霞む視界。

立ち上がる仇敵。

その姿に、もういない相棒の面影が重なる。

あいつも今の士郎のように、ボロボロになっても立ち上がっていた。

限界の身体を無理矢理に焚き付けて、自分を殺しながら動いていた。

手足が無くなろうが、感覚が奪われようが、この心が折れない限りこいつらは止まらない。

止まれば、自分が自分で無くなるからだ。

敵でも味方でも無い。

自らを賭けて、その命を投げ出して、戦う為の一歩を望んでいた。

 

 

じゃあ、私は?

 

 

私はどうだ、立ち上がるのか?

身体はとうに限界。

激しく打ち付ける雨ですら心地よく感じる程。

力は入らない。

我が全てが、私を生かすために敗北を訴える。

 

 

 

 

 

では、心はどうだ?

 

 

私にはあるのか。

今まで数多に散っていった参加者たちのように、燻り続けた欲望はあるのか?

士郎のように、アーチャーのように、どうしても譲れない誓いはあるのか?

桜のように、イリヤのように、悲願全てを背負う覚悟はあるのか?

慎二のように、全てを諦める勇気はあるのか?

 

 

 

 

無い。

 

 

 

そんなもの存在しない。

私は勝ちたい、どうしても勝ちたい。

理由と言われれば、今は桜の為に勝ちたい。

でも、始まりは違う。

私は、負けたくないから勝ちたいんだ。

理由はそれだけだった。

何かを成すために戦うのでは無く、戦いこそが私の理由だった。

 

 

ここが終点だ。

敗着濃厚な際にみっともなく足掻けるほどの志が、私には無い。

戦いの為に戦う者と、大義の為に戦う者では、最後の最後で決定的な差が存在した。

故に、私には言うことを聞かない身体を動かす術が無い。

 

 

 

 

だが、

 

 

 

 

「常に……余裕を持って、優雅、たれ。」

 

 

 

「?」

 

 

 

 

身体が自然と上がっていく。

魔術刻印による修復は最早追いついておらず、身体のあちこちから悲鳴が上がる。

動けない、戦えるはずがない。

そのはず、なのに。

心はとっくに諦めようとしているのに。

 

 

 

 

「うちの家訓よ。……ごほっ、これを掲げるからには、どんな窮地だって、楽しまなきゃ……!」

 

 

 

 

口元の血を拭い、泥濘だらけの大地に足を立てる。

動かない身体、消えた心。

それでも、私の身に刻まれた歴史が、私の全てを焚き付けた。

大義が無くとも、願いが無くとも、我らには誇りがある。

万全の形で万全に勝利するという、始まりから続いた在り方がある。

父も母も、私の知らない先祖たちもきっとそうした。

その積み重ねこそが、この言葉に集約されている。

だから、こんなところで諦めてはいられないのだ。

 

 

 

 

「私は負けない。あんたが幾ら綺麗事を語ろうと、私は負けたくないの。」

 

 

 

「だって、胸を張れないもの。このまま諦めたら、今の私を生み出した全てを裏切る事になる。」

 

 

 

口に出せば、心も身体もついてきた。

終われない、終わらせない。

私達の歴史を、こんな場所で消えさせはしない。

 

 

 

立ち上がる。

土砂降りの雨を打ち消して、決まりかけの運命に逆らうように。

前を見据える。

私と同じように血濡れで立つ男を、強く強く睨み付ける。

 

 

 

「終わらせるわ、この一撃で。」

 

 

 

決めるならここしかない。

持久戦になれば負ける。

故に、ここで必中必殺の一撃を繰り出す他、私が生きる道は無い。

 

 

 

手元に残る最後の宝石が宙に浮かぶ。

黄金の石が四つ。

鮮やかな軌跡が後を追い、しだいに一つに集束していく。

同時に、体を巡る魔力の流れを遮断。

その全てを、宝石の流れへと乗せる。

 

 

 

 

刻印、簡易接続(ルート、セット)魔力炉への道程確保。接続開始、……………魔力量、一定値を確認。接続変更」

 

 

 

 

 

 

接続解除(チェンジ)ーーー領域拡大(チェンジ)再接続(チェンジ)!」

 

 

 

生命力(オド)が抜けていく。

命が吸われていく。

辛うじて繋いでいた生命の循環が解けていく。

ーーー構わない。

その後など気にしない、今は今のみに集中する。

あいつを、士郎を殺す事。

それだけに今は命を込める。

 

 

 

「…………ここか。」

 

 

 

同時に士郎も動いた。

私は忙しなく魔力を回し、辺りには漏れ出た魔力が弾けて出てプラズマを作っている。

それとは対照的に、彼の動きはシンプルなものだった。

魔術を使い何か行う訳でもない。

いつもの投影も、何もしようとはしなかった。

右目を血を拭い、足を肩幅に開く。

眼前で唸りを上げている私の音など気にもとめず、一挙一動を丁寧に、静かに。

ルーティンのように落ち着いた所作は、形は違えど彼の射型を思わせる。

いつの日だっただろう。

気まぐれに朝早く登校した時に、綾子に連れられて弓道場で士郎の射を眺めたことがある。

あの時の彼は、彼の射はとても綺麗だった。

無駄な動きも雑念もなく、動作すべてが淡々としていた。

きっと、何度も何度も練習したのだろう。

弓を置いた今でも、体に染みついているのだろう。

それ故に命を賭けたやり取りの中でも、そんな没入状態に入れているのだ。

 

そうして、彼は手にした銃をその場に落とし、

 

 

 

魔弾形式(ツアープラン)(ツアープラン)、黄金貴竜(インペリアル・オーバーライト)

 

 

 

そこで思考を行う余裕は消え去った。

視界が弾け、白に染る。

生命維持に必要な人としての最低限の機能だけを残し、この身は身に余る黄金の輝きを放つだけの銃身と化した。

狙いを付ける必要は無い。

この距離ならばどこに打とうと、攻撃範囲から逃れる事は出来ない。

この一撃を以て、今までの戦い全てに終止符を打つ。

 

 

一点に集まった宝石はそれぞれがぶつかり合い、更に魔力量を増していく。

次第に、それら内包できる魔力量の限界を迎え、一つ、また一つと弾けて、ただのエネルギーの塊と化していった。

それが臨界点になった時、我が肉体(銃身)を破壊せんばかりの奔流が辺りを覆う。

私は、その瞬間を今か今かと待っている。

感覚はそこだけに置いている。

それ以外、何も見ることは出来ない。

 

 

 

「これで、終わりだな。」

 

 

 

だから、この声を聞くことも出来ず

 

 

 

 

 

 

 

 

四重螺旋光砲(セクタ・リミテッドフロー)!!いっけぇぇぇぇぇぇぇーーー!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

遂にその瞬間は訪れ、私は轟音と共に最後の銃声を鳴らした。

それは、先程見た黄金の輝きを真似た地上にて光る一筋の流星のように地面をなぞり一直線に飛んでいく。

地面をえぐる光は目の前の影を一撃で吹き飛ばし、跡形もなく消し去った。

 

 

 

 

 

 

私はその光景を、何故か他人事のように俯瞰していた。

バラバラに砕けても可笑しくない肉体に不思議と負荷はなく、消えていたはずの五感も全て戻っているように感じる。

今までの苦しみ全てから解き放たれ、まるで自室のベッドに入り込んだかのような。

幻覚にしてはお粗末な、夢としか思えないような心地に襲われた。

 

しかし、夢では無い。

それを放ったと感じた途端に、体は嘘のように軽くなった。

軽い、と感じる知覚はある。

つまり、私は文字通りはなった瞬間に死んだ訳では無い。

きっと生きて、この謎の感覚に身を委ねてしまっている。

では、何故こんなにも身体は軽いと感じるのか。

 

 

 

 

 

 

(こんなの、まるで走馬灯だ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな後付けの感覚の前。

私が消えゆく視界で最後に掠めたのは

 

 

 

 

 

 

「ーーーーーーーーーーうそ」

 

 

 

 

 

 

 





同時にmaterialを更新します。活動報告をご覧ください。士郎の用いた銃についてです。



本編補足
今回凛が発動した魔術ですが、見覚えのある方がいるかもしれません。
というのも、今回、「魔法使いの夜」のヒロイン、蒼崎青子が、同本編で使用する魔砲の詠唱を参考にしました。見覚えのある方はそれです。
黄金貴竜、という名称は、一応セイバーから取りました。エクスカリバーを放つアーチャーとほぼ同じものを使った、という感じにしたかったので。


追記
来週中に最新話を投稿します。今回の決着とその後について、漸く長かった夜が終わります。
その時今回の様に複数話投稿できるかは不明ですが、ストックと相談して僕が満足いくくらいにする予定です。
そしてその後、多分また次話が遅くなると思います。頑張って書いていこうと思います。
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