VTXユニオン第一試験場格納庫…
「いやぁ、今日は本当に驚きの連続ですね」
「もう…驚きという言葉では表しきれません…」
「正直、頭の中がついていけてないわ…」
「同感です…」
変わった感じがしないアマサキとは反対に、ラミィもメリルもエイミスも完全に疲れ切った顔をしていた
「超次元世界…無数の並行世界が集まって出来た世界…そしてその世界からやってきた住人か」
「3時間前の周辺の観測情報のログを調べてみたところ、確かに異常な重力波の変化を感知していました。おそらくそれが次元震とやらの現象みたいですね」
(ボソンジャンプとも位相差空間ゲートとも違う転移…あの時警報が鳴らなかったのは全く未知の転移だったからか)
謎が完全に解けたあたりで、ティラネードとグレートマジンガーの間に立っているブラスタから1人の男が端末を持ってやってきた。青よりの黒髪に癖っ毛気味の髪型とタレ目な紫色の瞳、緑色のコートが特徴の青年
クールな二枚目、それが特務三課の見たクロウ・ブルーストの第一印象だった
(あら、結構イケてるじゃない)
メリル的にクロウの容姿はドンピシャらしい
「あなたがあの機体のパイロットですね?私は株式会社VTXユニオン特務三課の課長を務めております、アマサキと申します。特務三課を代表して、改めて礼を言わせてもらいます」
「私は特務三課主任のトキトウと申します。先ほどの援護、助かりました」
「スコート・ラボ所属のクロウ・ブルーストだ。…と言っても、この世界じゃ意味のない肩書きだけどな。それでこっちが俺の雇い主の」
『トライア・スコートだ。よろしく頼む』
4人が顔を合わせて(1人は映像越しだが)互いに自己紹介をする
「あとさっきも言ったが、俺は恩人のあんたたちを助けたくて助けたんだ。だから堅苦しいのはなしで、気軽にクロウって呼んでくれ」
「分かりました。これからよろしくお願いします、クロウくん」
「ならば俺もサイゾウでいい。よろしく頼むぞ、クロウ」
「よろしくな」
上司たちの自己紹介が終わったところで、部下たちの自己紹介が始まる
「彼女らはそれぞれ技術課、総務から転属、そして新入社員として特務三課に所属している私の部下です」
「メリルと言います。ティラネードの整備とキャリアクスのオペレーターを務めています」
「エイミス・アーネストです。特務三課の庶務全般とキャリアクスの通信・索敵を担当しています」
「本日入社しましたラミィ・アマサキと言います!至らぬ点も多いと思いますが、よろしくお願いします!」
「お、おう…よろしく…」
気迫あるラミィの自己紹介にクロウは困惑
そしてラミィの名前を聞き逃さない者がいた。メリルである
「アマサキ…?もしかして…」
「メリルくんの想像通り、ラミィくんは私の娘です」
「…………」
課長の返答を聞いて表情を変えるメリル。明らかに不満を抱いている顔だった。何か作為的なことをして入社したのではないか、といった
そこにクロウが割り込む
「ちょっといいか?」
「…なんですか?」
「あんたの不満な気持ちは分かる。自分は努力したのに、って思ってしまうからな」
「それは…」
「でも、ラミィだってそれは分かってるはずだ。親と同じ会社に入るんだ、どうしたって怪しまれることぐらいな」
そこで俯いてるラミィを向く
「俺の仲間にも双子の兄の名前を受け継ごうとして比べられてる奴がいたんだ。でも、そいつはそれでも覚悟を決めて戦い続けた…お前さんもやりたいことがあってここに来たんだろ?」
「はい…でも、ここじゃあそれも出来なくて…」
「それがどうした」
ラミィの抱える不安をクロウが取り除く
「え…?」
「出来ないなら探せばいい。見つからないなら作ればいい。諦めなければなんとかなるもんさ」
ラミィはその言葉を聞いて、不思議と気が楽になった。きっとそれは、この人の言葉が飾り気のないものだからだろうとなんとなく思った
「…そうですね…私、頑張ってみます!」
「その意気だ」
「ありがとうございます、クロウさん!」
すっかり元気になったラミィは快活な笑顔を浮かべた
「いやあ、クロウくん、なかなか良いことを言いますね」
「ええ。思わず聞き入ってしまったほどです」
そのやり取りを見ていたサイゾウとアマサキは微笑ましいものを見る目をし
(顔も良いし性格も良いし、パイロットとしての腕も一流…野獣ネクタイとは大違いね…!)
(メリルさん、飢えた獣みたいな目をしてる…)
クロウに見入るメリルにちょっぴり引くエイミスだった
そんな中、クロウに近寄って話しかける男が
「最後は俺だな」
「お前さんがあのマジンガーのパイロットか?」
「そうだ。地球連邦でグレートマジンガーのパイロットをしている剣鉄也だ。よろしく頼む」
「剣鉄也…あんたがか…」
「俺のことを知っているのか?」
今日この世界に来たばかりのクロウが鉄也のことを知っているような言い方に疑問を浮かべる
「その辺の話は後にしよう。長くなるだろうからな」
「そうか、分かった」
クロウがそう言ったのもあって鉄也も言及してこなかった
「さて、自己紹介も終わったところでクロウくん、君に話があります」
「俺に?」
アマサキが何かを告げようとした刹那、クロウは悪寒と共に鳥肌がたった…
「実はですね、君がここにやってきた時に機体を会社に突っ込ませたことと第二試験場の格納庫のシャッターを無理やり突き破ったこと…その両方の弁償を君に請求しなければならなかったのですよ」
「!!」
“弁償”“請求”。この2ワードだけでクロウは自分がどういう状況に置かれているのかを悟った
「しかし、先ほど君が来る前にトライアさんと話をして、社長に連絡をしてみた結果、君の機体からパージされたパーツを譲ってもらうことでその負債を無しにするということになりまして」
「チーフ、いつの間にそんな話を!?」
『あんたにブラスタの中に仕込んどいた端末を探させてた時にだよ』
「いやぁ、いきなりこちら側に連絡が来た時は驚きましたよ。異世界の技術ってすごいですね」
アマサキは呑気なことを言うがクロウはそれどころではなかった
『つまり、今私はあんたの支払いを肩代わりしてやったわけだ。もう分かってるだろ?』
「…幾らなんだ?」
『そうだね。今回は事故ってところも考慮して…』
カシャカシャカシャ チーン!
『返済額は100万Gってところだね』
「ひゃくまんんんっ!!」
その瞬間、クロウの脳内の借金方程式が崩壊した
『これでも半額にしておいたんだから、感謝しなよ?』
「その金額のどこに事故の点が考慮されてんだ!?」
『少なくとも格納庫は自分で突き破ったと聞いたよ』
「そ、それは…」
痛い点を突かれてタジタジするクロウ
そこにラミィがトライアに質問をする
「あの…100万Gってどれくらいの額なのですか?」
『ああ、あんたたちの世界の金の単位はT$だったね。そうだね…そっちの世界でもわかりやすく例えるなら、宝クジの1等を2、3回は当てたくらいの額だね』
「ちなみにT$に換算すると1億T$ほどですね」
アマサキ課長から聞かされた金額を聞いた女性陣は、全員そろって耳を疑った
「えええっ!?そんなにですか!?」
とラミィ
「中小企業の総資産より圧倒的に上!」
とメリル
「それを個人で!」
とエイミス
それぞれ3人の感想を聞いたトライアは、呆れるようにクロウに言う
『全く、本当にどこまでもブレないね、「100万Gの男」』
「好きで借金作ってんじゃねえよ!」
それに対して反論するクロウだが、またもや気になる単語がトライアの口から出てきた
「トライアさん…「100万Gの男」って、ひょっとして…?」
『察しの通り、こいつは100万Gの借金を作っては返してるのさ。それこそ何回もね』
「な、何回も…」
『言っとくけど、別にクロウに問題があって借金が出来るわけじゃないよ。そう言う星のもとで生まれてきたとしか表現のしようがないだけさ』
「クロウがそんな男でないことは俺も分かる。そんな奴ならばわざわざ借金を返すわけがないからな」
そうフォローしたのは意外にもサイゾウだった
『良かったじゃないかクロウ。あんたのことを理解してくれる人がいて』
「…もう、何も言えねえ…」
サイゾウの評価に嬉しそうにするトライアだが、クロウは完全にノックアウトしていた
『とりあえず元の世界に帰還できる手段はこっちでどうにかするから、あんたは当分特務三課のプロジェクトとやらに参加しな。そっちの世界は相当荒れてるみたいだからね、機体データや戦闘データを集めやすいだろう』
「つまり、クロウを派遣社員として
『その通りだ。しっかりこき使っておくれよ』
「ええ。VTX魂をしっかり叩き込んでやります」
意気消沈するクロウの横でそう約束し、いい笑顔をするサイゾウ
(これからどうなっていくの、私…)
それを見ながらラミィは自分の未来の行く末に不安を抱くのだった…
今作のスパロボの金の単位はT$(ティードル?)らしいんですよね。何円くらいなのかよく分からないですけど、100万Gが宝クジ1等の2、3回分(10億円ほど?)なので、1G=100T$くらいの扱いにしようかなと思います
次回はスペシャルシナリオで特務一課の堕天使!クロウに安息の日はあるのか!?