ダンガンロンパARD   作:城が猫

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この小説はじゃん@論破さんの「ダンガンロンパQQ」という小説が元ネタの三次創作ロンパ
です。この作品に興味がおありの方や、これは自分好みだという方は是非楽しんで行ってください。そうでない方も親切心から付き合って、ここはこうしたら"いいんじゃないかなぁ"
というアドバイスを頂ければ幸いです。それでは本編です。


Prologue.Ⅱ『それはとっても憂しいなって』

 あの後すぐ、僕らは互いに思い思いに話し

たり、自己紹介し合ったり、船内を探索した

……のではなく。その前にモノクマが慌てて戻

って来て僕らに何かを押し付けていき、その

説明を聞いていた。

なんでもこの船の中でのみ使える特殊な通貨

らしい。

その名は「モノクマコイン」と言い、このコ

インはこの薄い携帯端末(電子生徒手帳と言

うらしい)でコインの総額が確認、額の増減

が分かるようになっている。

その便利なのか、いまいちなのかわからない

その通貨形態のことについて尋ねると、「前

はコインだけだったんだけど、今は進歩して

このコインの増減が表示されるようになって

コイン(これ)はただ“俺、ってるぜ!!”な感じを

味わいたい人用にそこにあるだけで、その気

になれば手帳だけでもやり取り自体はできる

よ!」だそうだ。

はっきり言って、このコイン自体は無用の長

物らしい。

そんな説明を僕らにして、こんな無くても良

いようなもの(コイン)を押し付け、今度こ

そ僕らの前からモノクマは姿を消した。

そのすぐ後、さっき僕に話しかけてきた、今

風な感じで割りとお洒落にアレンジされた和

装というか着物を着た女の子が僕の方へ再び

やって来た。

 

「ヤッホー!ミナたん!元気してる?」

「や、やっほー…元気してる……」

「およよ?なんか元気が足りなそうだけど?」

「…そんなことないよ?ちょっとノリについ

て行けてないだけで…」

「ああっ!!ごめんね…?うちばっかし盛り

上がっちゃって…えへへ……///」

「いや、気にしなくていいよ!……それより、

どうしたの?なにか用?」

「あっ!そうそう!皆にミナたんのことを紹

介しようって思ってさ!」

「紹介?」

「うん。だって、これからこん(なか)で皆で生活

してくだし?この二週間の船旅もみんなでバ

カンスしたいっしょ?そのためにはまず、仲

良くなんないとね!仲良くなるのに名前も知

らないとか、ありえないし?」

 

 確かにそうかもしれない。これから助け合

ったり、皆で楽しく騒いだりするのに名前も

何も知らないというのはちょっと違う気がす

る。ここはこの女の子…持中さんの言う通り、

みんなとの親睦を深めるのが先かも知れない。

そう考えた僕はその提案に乗ることにした。

 

「うん!いいねっ!じゃあ皆に僕のことを紹

介する代わりに、僕に(みんな)のことを紹介しても

らおうかな」

「おおっ!さっすがミナたん!わかってる~

~~!!」

「それじゃ、まずは……おお~~い!」

「?(わたくし)めになにか御用ですか?」

「そそっ!ちょっと紹介してなかったコが居

たからさ!ほら!さっきもお互いに紹介し合

ったでしょ?だからさ、この子ともして欲し

いなって!」

「ああ…っ!!なんと素晴らしいっ!!私め

のような者でよければ、いくらでも紹介いた

しましょう!ただ……才能に関してはあまりの

恥ずかしさ故に、申し上げることはできませ

んが……」

「じゃ、ホッシー!自己紹介よろしくぅ!!」

「それでは僭越ながら、矮小なる私めから名

乗らせていただきます。私めは、黒田星和と

申します。以後、頭の隅の隅にでも置いて頂

ければ誠に至福!!」

 

 

『“超高校級の???” 黒田星和(クロダホシカズ)

 

 

「僕は佐藤皆高。肩書は確か…″超高校級の平

均″だったかな?」

「素晴らしいっ!今日はなんと良い日でしょ

うっ!!あなた様のような最高の才能の持ち

主に出会えるだなんて!私は感動のあまり、

涙が止まらず体の水分が枯れ果ててしまいそ

うです!!」

「え?そ、そうかなぁ……ははは…そう言われ

ちゃうとなんか照れちゃうね…///」

「ああ…ミナたんが悪い人に騙されている……」

「え!?だ、騙され…?」

「ウキウキと浮足立っちゃてっとこ悪いんだ

けど…ミナたん…そこの人の言う事はあんまり

信用しない方がいいよ?」

「え・・・どうして?」

「そこの人…ホッシーはさっきミナたんに言

ってたみたいなこと、ここの()()に言ってた

からね……」

「え、そうなの!?」

 

 僕は思わず、そのことを説明しながら遠い

目をする持中さんに目を向けた後に、さっき

僕を褒めてくれた、黒田君を見る。

学ランを着崩したような恰好と首に逆さ十字

架のペンダントを掛けている。

その姿を見た後、舞い上がっていた僕は、そ

れが全員に言われていてアテにはならないと

知って、僕は少しがっかりしてしまった。

 

「そんな!騙そうなど滅相もございませんっ

!!私めはただ、私めの才能が取るに足らず

、私め以外の才能を持たれる方々……いや、

私め以外の全てが途轍もなく輝いて見えるだ

けなのです!!……故に先程の言葉に噓偽り

はただの一つもないと、誓って申し上げます

!!」

「つまり…僕以外にも言ってたのは本当なん

だ……」

「うっ…!確かにそうですが……それでも本心

から言っていたことも紛れもない事実でして

……も、持中様からも何か仰ってください…元

はと言えば、貴女様が心外にして侵害なこと

を仰られるから、佐藤様が落ち込まれたので

はありませんか!」

「ええーーー…うちの所為ぃ?でも、純真無

垢な犠牲が一人、詐欺られるより良いと思っ

て…それにどうせ遅いか早いかの話だったろ

うし……」

「もういいよ……黒田君もなんかごめんね?

もう気にしてないから君ももう気にしなくて

いいよ」

「っ!!…左様で御座いますか!その寛大な

措置に心からの感謝とお詫びを申し上げます

!」

「…ところで持中さん、なんでこの人をトッ

プバッターに?なんか思い切り出鼻を挫かれ

た感じなんだけど……」

「いやぁー…ゴメン!ゴメン!始めがこのく

らいなら後はアガル一方かなっ…てね!テヘ

ッ☆」

「ああっ!!なるほどっ!それじゃ、今後は

期待できるわけだ!!」

「あら?もしやこれが風の噂に聞く、"ディ

スられる"という現象でございますか?……今

私め、その現象に直面している所でございま

すか?いえ、まぁ別に良いのですが…」

「はははっ!冗談だよ冗談!!……それじゃ、

またどこかでね!黒田君!」

「はいっ!!またお会いできることを心の底

の底より待ち望んでおります…!!」

「それじゃ、次いこっか!ミナたん!」

「うん!」

 

 僕は、こちらに向かって(うやうや)しく礼をした

後、また会える時を待望するような眼差しを

こっちに向ける黒田君と別れ、その場を後に

した。

 

「さ~~て、次は誰にしよっかなぁ~~……

よし!キミに決めた!」

 

 まるで、ポケットに収まるモンスターたち

のマスターを目指す主人公の決め台詞のよう

な言葉を発しながら、持中さんは僕を次に紹

介する人の所へ連れて行った。

 

「ねぇねぇ、今何してんの?こ~あちっ!」

 

 その声と共に、目の前で椅子に座りながら

、ボーっと何かを楽しそうに、それでいて恥

ずかしそうににやけ顔で考えている女の子の

背後に近づいてその肩を軽く叩いた。

すると何故か、素っ頓狂な声を上げてその人

物は椅子から軽く5cmは飛び上がってこち

らを向いた。

 

「うひゃあうっ!?……な、ななあなななん

ですか?わた、わわわたしはべ、べつに何も

いやらしい事なんて何も…か、かかっか考え

てないんですからぁっ!」

 

 

『“超高校級のエンジニア” 機利旗小亜(キリハタコア)

 

 

「いや…それはもうそういう事考えてました

って言ってるようなもんじゃん?」

「いやっ!あのぅ……そ、それはぁ~~・・・

ち違うんですよ~~!!だって…こんな一つ

屋根の下で男女十六人が二週間も寝食を共に

するだなんて……ナニか考えちゃうに決まっ

てるじゃないですかぁっ!!」

「え~~っと……確かに色々考えちゃうかもだ

けど…そこは自重すべき所なんじゃ…? って

言うか、一つ屋根の下って……その辺だけ切り

取ると凄い文章だね・・・」

「はぅっ!?そ、そうですよねぇ……わ、わた

しってばまたぁ~~⤵⤵はぁ……ん?ってい

うか、持中サンはともかく、あ、あなた誰…

ですか?何の用ですか!」

「ああ…それはうちがここの全員にミナたん

を紹介しようと思って連れまわしてんの!ま

だ、紹介して無かったっしょ?だから今のう

ちにしとこうと思ってさ!」

「うん。そういう事なんだ。で、僕は佐藤皆

高。これから、よろしくね!」

「……はぁ………わあ、わたしはき、機利旗、小

亜といいますぅ…よ、よろしくです」

「こあちはエンジニアなんだよ!あんなもの

からこんなもの、ゲーム機も作れちゃうんだ

って!」

「あんなものやこんなものって……ざっくりし

過ぎでしょ……持中さん……」

「だって、本当に色々作れる・・・らしいし

?」

「まさかの疑問系!?」

「まぁ、今は必要な機材とか見つかっていな

いので無理ですけどね・・・」

「そっかぁ~・・・じゃあしょうがないね」

「うん、ちょっと残念だけどね」

「はぁ・・・おぉ、お、役に立てず、申し訳

……はっ!…はぁっ・・・・・っっ!!」

「ん?どうしたの?」

「ま、まさか……!」

「?」

「役に立て無いならせめて()で役立って貰お

うか……とかいう気、ですか……っっ!!」

「………へ?」

「そうなんですか!? ソウナンデスネッッ

!!?」

「は?いやっ…ちょ、こあち!!?お、落ち

着いて……!!」

「そうだよ! 機利旗さんっ! 別に何もし

たりしないから!」

 

 落ち込んだかと思ったら急に何か変な方向

に取り乱した機利旗さんを二人で宥めてから

彼女に別れを告げ、次の人を探して部屋を見

回し、持中さんに尋ねる。

 

「で…次は誰かな?」

「う~~んと、次はねぇ~~~…あっ!いた

いた!!バサねぇーーーー!」

 

 持中さんにそう呼ばれた彼女はこちらに気

付くと早足でこちらに近づいて来た。

 

「ちょっと!持中さんっ!その如何にも特定

のライトノベルに対して著作権に抵触しそう

な呼び方止めてって、ついさっきも言ったば

かりだと思うんだけど!?」

 

 

『“超高校級の助手” 副本翼(ソエモトツバサ)

 

 

 速足でこちらに迫ってきたかと思えば、そ

の人は持中さんの呼びかけに対してそんな風

に捲し立ててきた。

 

「ああ……めんごメンゴ!でもさ…?ぶっちゃ

け版権的にセーフじゃ無い?良くあるあだ名

だって~!」

「いや、駄目でしょ……」

 

 その人は持中さんの反論にジト目でそう返

した。

 

「うぅ~~・・・あっ!そうそう、バサねぇ

のこと紹介しないとねぇ~~♪」

 

 と彼女が若干苦し紛れに言うと、″バサね

ぇ″さんは困惑気味に「えっ?紹介?」と口

に出した。

そこへ僕が主旨を説明する。

 

「うん、そうなんだ。持中さんがまだ皆との

顔合わせが済んいない僕の為に全員に紹介し

てもらってるところでさぁ」

「へぇ~~!」

「そう言うことっ!それじゃあ早速いってみ

よ~~っ!」

「じゃあ、僕から。僕の名前は佐藤皆高。肩

書は~~…そうそう!″超高校級の平均″なん

て呼ばれているよ」

「へぇ~…なんだか、変わってるね…じゃあ、

私の方からも自己紹介させてもらうわね!

…私は副本翼。皆からは″超高校級の助手″っ

て呼ばれてるかな」

「バサねぇはね~~何と!誰かの″才能″を伸

ばせる″才能″なんだよね~~!!」

「え?それってまさか……」

「うん!そのま・さ・か!…バサねぇは過去

にとある生徒を超高校級に変えちゃったこと

があるんだよねーー!!」

「え、えぇーー!……すごいね!ということは

……一見何の変哲もなさそうな人からでも″超

高校級″に変えちゃえるってことだよね?・・」

 

 相手の驚くべき能力の紹介に度肝を抜かれ

ていると慌てた説明がかえってきた。

 

「あ、いや、そんな大したものじゃなくって

…!その時はたまたまその子が素質を持って

て私がそれを伸ばしただけに過ぎ無いの………

それも素質があるのを見抜いて伸ばしたわけ

でも無いし」

「いや、それでもすごいじゃん!?」

「でも、私が出来る事って支えてあげること

だけだから……」

「だから、それがすごいんじゃん!」

「えっ?」

 

 持中さんのその言葉に虚を突かれたらしい

副本さん。

そこに僕も言葉を続ける。

 

「うん。僕もそう思うよ。だって、誰かのこ

とを支えてあげられるって、何かしてあげれ

るって凄く良いことだよ!それが、才能であ

るなんて」

「そそ!そう言う事!」

「本当に、そう思う?」

「うん」

「うん、そうだよね! いや~、なんか変に

期待させた割りに大したことなくてがっかり

させたら悪いなーなんて考えてたんだけど、

それなら良かった!」

 

 こっちが変に期待したせいで、気を使わせ

てしまった見たいだけど、立ち直った見たい

で良かった……と思っていると、彼女が気に

なる一言をポツリと漏らす。

 

「うん。私って別に要らない子じゃ無いしね

!」

「それじゃ、ミナたん!次行こっか!」

「うん!それじゃ、またね!副本さん」

「うん!また!」

 

 最後の方、何か気になったけど、僕はそれ

以上追及することなく、副本さんと再会の約

束を軽く交わして僕と持中さんは次の人を探

しに行く為、ロビーを軽く見まわした後にそ

こを出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 うちとミナたんはロビーに人が(さっきの

三人以外)すっかり居なくなっとるんを見て

、船内の探索がてらミナたんに紹介する人を

探しにロビーの出入り口の、押すと戻るタイ

プの観音開きのドアを通って、やけに豪華な

内装の廊下へと出ていった。

その廊下はやはりレッドカーペットが綺麗に

寸分の狂いもなく敷かれているようで見る者

に清々しさを与える程で、それ以外には廊下

を照らすシャンデリアが天井からぶら下がり

、暗すぎず明るすぎず、絶妙な光度で辺りを

照らしだして、廊下の壁には絵画みたいなも

んが飾られてた。

そして、更に廊下を進むと━━ロビーに行っ

た時にはあまり気にならんかったというか、

いきなり呼び出されてそんなことを気にす

る余裕がなかったから気付かんかった━━━

なんや大広間のような広い空間に出た。

 

「うわぁ…さっきは気にしてなかったけど、

コレ、すごない?」

「うん、行きの時は呼び出されたことで頭が

いっぱいで…こんな見事な噴水が中央にある

なんて気付かなかったよ」

 

 そう、うちたちは今、大広間らしき空間で

目の前の噴水に圧倒されとった。

それはよく噴水でみるような円の中心に聳え

立つ塔のような物の上から周りに水が落ちる

タイプのもので、見る者に清涼感と少しの感

動を与える程に壮大だ。

……ただ、その水が出てくる塔の上に乗って

いる、モノクマの像を除けば、やけど。

その像は恐らく「船長」とか「キャプテン」

をイメージしてるんか、どこかで良く目にす

るようなデフォルメされた海賊のような格好

をして海賊船に乗っていて、水はその船底と

塔の間から、まるで船が波に乗ってるみたい

に見えるように出てた。

それに、目が行った瞬間、急に噴水がチープ

に見え、感動もどこかに飛んでいってもうた。

……いや、もはや悪趣味とすら言えるかもしれ

ん。

 

「でも、なんというか・・・」

「うん……なんだか、すごい自己主張をひしひ

しと感じるね……はは……」

 

 これには流石にうちもミナたんも笑顔が引

き攣らざるを得んかった。

―――そこでふと、二階に上がるための階段を

見つけて、その先に誰かがいるんを見つけた。

一体誰なんかと思って目を凝らす―――

あの如何にも自信たっぷりなオーラとそこそ

こ裕福そうな恰好は………

 

「よしゃーーっ!ミナたん!次のターゲット

を発見!不思議発見!ア~~ンド二階を探索

だーーっ!」

「えっちょッ……!持中さん!?」

 

 うちは、最近の何かしらのドラマよろしく

ミナたんを引っ張って階段を上がり、目的の

人物に接近する。

すると、なんと相手の方から話しかけてきは

った。

 

「ほ~う?まさか…この我が輩の他にもこの

場に目を付けた者がいるとは驚きだ……」

 

 

『“超高校級の幸運” 高宮輝晶(タカミヤテルアキ)

 

 

 その人はそう口走るや否やこちらに向き直

って腕組を解いた。

それにしても―――この場所?目を付けた?

何のこっちゃわからんかったうちは目の前の

人物……"てる兄"に聞いてみた。

 

「てーーる兄ぃー……えっ目を付けた?……ド

ユコト?」

「……はぁ~~…その様子だと、単なるマグレ

だったようだな…少しでも期待した我が輩が

馬鹿だった」

 

 なんやけったいな溜息をついたあと、如何

にも失礼な言葉を物憂げに吐き捨てながらう

ちらを見下すてる兄。

その、ワイシャツにネクタイを緩めに締めて

、その上から高そうなスーツのロングコート

を袖も通さずにマントを羽織ってる━━もち

ろんズボンは穿いてる…ちゅうか、上着のそ

れはどないなっとんねん━━カッコ付けて着

崩した姿も見下してる感をこれでもかと言う

程に助長しとった。

 

「━━ッ!!い、いやぁ~~まったく!つい

さっきと言い、ホント~に絶・好・調!やね

っ!?━━主に毒舌が…」

 

 とっさに作った笑顔を引き攣らせながら言

ってるうちを見てこれはあかん!と思ったの

か、ミナたんがうちとてる兄の仲裁に入る。

 

「ちょっと!持中さんっ!落ちついて、落ち

ついて!どうどうっ!」

「いややわぁ~~!うちは至って冷静やけど

?ただちょっと相手の態度に引っ掛かりを感

じるだけで…!」

「今思ったんだけど、持中さんって取り乱し

たりすると素の言葉使いが出るよね……どう

でも良いけど……」

「・・・ふぅ~ッ…一々癇癪玉を破裂させな

ければ会話も出来んのか…まぁ、破裂した時

点で話しなど成立せんだろうが……兎に角、

まずは用件を言え用件を…こう見えて我が輩

、貴様らと違って忙しい身でな」

「きぃ~~っ!!癪に障っとんのはどっちや

ねん!?アンタがそんなんやからうt…モガ

っ!?」

「はいっ!わかりました!用件ですね!実は

僕だけ皆さんとの自己紹介が済んでいなくて

…それで、お互いのプロフィールの交換をさ

せて回らせてもらってまして…」

 

 うちがまさに爆発寸前だったところをなん

とかミナたんが抑えてくれて、その隙に用件

を済ませてくれたおかげで話しが進展した。

とそこでてる兄が――

 

「?それならば、電子生徒手帳とやらに記載

があるのではないか?この船内の地図がある

程だ、我が輩たち全員の一通りの情報くらい

あってもおかしくはないと思うが?」

 

 それを聞いてチャンス!と思ったうちが一

応丁寧にミナたんの手を口から離して、ここ

ぞとばかりに反撃に出る!

 

「……ぷはぁっ…ふっふ~ん!残念でした~っ

!うちもそれは考えたけど!この生徒手帳は

生徒間の交流が無いと何故か情報が開示され

へんようになってるから直に会う必要がある

んですぅ~~っ!バーカ!バーカ!」

「えっ?そうだったの?僕、必死に皆の顔と

名前と…それと肩書だけでも覚えようと必死

だったんだけど…」

「ふっ…そうだったのか…あまりにどうでも

良くて見逃していたぞ。先ほどはその場の流

れになんとなく乗ったが正直あまり興味は無

かったしな」

「―――――っ!!……はむぅ!?」

「!そ、そうですか~~!(汗 確かに僕の

ことなんて興味無くて当然だと思いますけど

……もし良かったらあなたのことを教えて頂

くついでに僕のことも知っておいていただけ

ませんか?」

「ほう…良い心がけだ…相手を知り、己を知

れば百戦危うからずと言う…―――いいだろう。

教えてやる。ではまず我が輩からだ」

「はい!おねがいします!」

「我が輩の名は高宮輝晶。希望ヶ峰に於いて

は“超高校級の幸運”と認定されている」

 

 うちをミナたんが抑えている間にうちそっ

ちのけで自己紹介が始まってるのは癪やった

けど、反撃の機会もないので、とりあえずじ

っと静観しとくことにした。

 

「今、貴様が思ったことを当ててやろうか…

?“たかだか幸運なくらいでなにを偉そうに

・・・”だろう?」

「えっ?…あ、いやいや……!運も実力のうち

と言いますし……」

「ふむ…その反応、当らずも遠からずと言っ

たところか……まぁ、取り繕うつもりで今の

言葉が出たのだろうが、中々良いところを突

いているぞ」

「あ、ありがとうございます」

「その通り、だが恐らく貴様が言わんとする

所の意味とは少し違うが…これもまた当らず

とも遠からず…だな」

「と言いますと?」

「運も実力のうち…即ち運=実力ならば、そ

の反対も然りという事だ…つまり、我が輩は

実力の故に幸運なのだとも言えるわけだ」

「な、なるほど……!」

「まぁ、これは知っているかもしれないが…

希望ヶ峰学園は幸運という才能の研究の為、

年に一度、全国の()()()()学生たちの中から

抽選で希望ヶ峰学園へ入学出来る者を決める

ことがある」

「……!あっ!それは聞いたことがあります!

確か、運動も勉強も「それなり」で、何の変

哲もない一般人の中から“幸運”が選ばれるっ

て…」

「そうだ。ならば、先ほど我が輩が言ったこ

とと矛盾するな?実力の故に幸運なのだと言

った先の言葉と…?」

「え?……ってことはつまり…」

「そう、我が輩は異例中の異例なのだ━━━

高い実力を備えた幸運……本来ならば希望ヶ峰

学園に“幸運”として選ばれるはずのない者だ

…だが、こうして選ばれている、ということ

は…?」

「…全国の平均的な学生たちの中から決まる

はずの“幸運”が全く決まらず…希望ヶ峰が仕

方なく、抽選する学生の平均値を上げて行っ

て……―――!!」

 

 その瞬間、ミナたんは口元を押さえて顔を

青くして立っていた。

正直、うちももうさっきまでの怒りなんてど

っかに転がっていってしまい、ただただ茫然

とせざるを得えへんかった。

 

「ふっ…察しの良い奴は嫌いではないぞ。い

や、むしろ好ましい。なぜなら、話が早くて

助かるからな」

 

 その言葉の途中ら辺から周りの景色が歪ん

でいく。

階段を上がり切ってでた広い廊下の壁の窓が

、相変わらずここの天井にもぶら下がってい

るシャンデリアが、階段と廊下の手すりが、

シャンデリアほど豪華ではないが、廊下の天

井に等間隔に開いた穴に付いて廊下を照らす

照明が、ぐにゃりと歪んでいくかのような錯

覚に陥った。

うちもそこまで聞くのは初めてやった。

さっきはただ肩書きだけを聞いただけやった

から、その内訳を聞いて驚きを隠せんかった。

……そして、それを最初に錯覚だと気付いた

のはミナたんだった。

それに釣られるようにうちも現実に戻ってき

た。

 

「……そ、そんな…!そんなことが…!?」

「うむ…察しはしたが、未だに信じられずに

混乱しているようだな……まぁ無理もないが…

常人の理解を超えてしまうというのもこれは

これで考えものだな」

 

 うちたちが未だに驚愕から抜け出せずにい

ると、てる兄から声が掛った。

 

「…さて、我が輩からは今のところ、以上だ。

次は貴様の番だぞ」

 

 その声にはっとした彼は、慌てて自己紹介

に入る。

 

「え、えと…ぼ、僕の名前は━━━」

 

 そして…一通りの自己紹介を終え、また話

は進む。

 

「……“超高校級の平均”佐藤皆高、か……ふむ

…」

「…僕も実は良くわかって無いんですが……」

「まぁそう固くなるな。別に普通にしてい

てかまわんぞ…許可してやる」

「そ、それじゃあ…お言葉に甘えて…僕も良

くは知らないんだけど、希望ヶ峰学園が研究

中のとあるプロジェクトの一環とかなんとか

で、なんかわけがわからないうちに入学が決

まって…あ、両親はなんか大喜びしてくれた

し、そこは嬉しいんだけど…僕もそのプロジ

ェクトの内容とかまでは知らなくて…その研

究員の人からは、普通に学園生活を送ってく

れればいいから…としか言われてないし……」

「つまり、学園側のなんらかの企みに利用さ

れているかも知れない、と…?」

「ま、まさか!…でも、中身が分からない以

上、可能性は否定できないかも……あれ、お

かしいな…他の人にここまでのこと話したこ

と無かったのに…ははっ…高宮君の紹介があ

まりにも凄過ぎて、張り合っちゃったのかな

?」

 

 そう言うミナたんの顔は先程のことをまた

思い出して、乾いた笑い声を上げ、その笑み

に疲れたような笑みを浮かべとった。

 

「……気にするな、こうして交流した瞬間、

どうせこの電子生徒手帳とやらに、互いの情

報が開示されるのだ。遅いか早いかの違いだ

ろう」

「うん、そうだよね。それじゃあ、僕たちは

これで…!」

「ああ・・・、せいぜい気を付けるがいい」

「うんっ!……あ、そうだ」

 

 このまま次の場所を探索&人探ししようと

この場を離れるため、別れの挨拶を交わした

所で、ミナたんが何かを思い出した。

 

「ちょっと、聞いてもいいかな?」

「……なんだ、言ってみろ」

「最初に会った時にさ、この場所を見つける

ものが他にもいたとは…みたいなことを言っ

てたような気がするんだけど…あれって結局

、なんだったの?」

 

 そのミナたんの問いに、てる兄は少しだけ

間をおいて答えた。

 

「……ここからならば、廊下の壁の窓からは

外の景色が、そして広場の噴水を…まぁ、造

形は悪趣味だが、噴水を高い位置から見下ろ

せる中々に良い位置だから、それに気付く者

が他にもいたとはな…という意味だ。まぁ、

噴水は悪趣味だが…」

「……なんで、二回言ったの?」

「大事なことだからに決まっている」

「うっ……確かに…」

 

 確かにあの噴水の造形の悪趣味さは改善し

た方がうちらにとっても噴水にとっても良い

気がする。

……尤もモノクマにとってはどうか知らんけど。

 

「まぁ、あまり細かいことを気にするな。せ

っかくの船旅が台無しになるぞ。…━━━お

っとそうだった、我が輩からも一つ言ってお

くとしよう」

「?なにかな」

「我が輩の“幸運”は()()()()()()()()()だ。

それが我が輩の持つ“幸運”の性質だ。それ以

上でも以下でもない……それだけだ、もう行

っていいぞ」

「……?う、うん!じゃあまたねっ!」

「もう!次に会うときまでには少しは言葉か

ら毒を抜いといてよねっ!」

「ふん…まあ一応、考えといてやる…また一

々癇癪を起されては会話がスムーズに進まん

からな…正直それは、ストレスでしかない。

和菓子娘、貴様のほうが癇癪を我慢できない

のならそれはもう、我が輩のほうで気を付け

る外あるまい…泣いて感謝するがいい」

「今の発言を聞いて、もう既に不安しかない

んですけどぉ…」

 

 相変わらずなてる兄の発言に、不安の種を

植え付けられながら、うちとミナたんはその

場を後にする。━━━━途中で、廊下に手す

りが無くなり、手すりのあった側が壁に変わ

って、その壁に、『情報管理室』というプレ

ートの付いた扉の部屋があったのにも一切気

付くことなく、これからミナたんを他の人ら

に紹介した時の反応だったり、会話への期待

を意識しながら歩いていた。

……だから、さっきてる兄が立っていた位置か

らその部屋の扉とプレートが見えることなど

、知る由も無かった。

 

 

うちらが、その廊下を歩き始めて数分程立っ

た時にミナたんが、

 

「そう言えばさ、黒田君を最初に選んだのっ

て、性格に難があるからだったよね?」

「うん!そうだよ~っ!それがどうかした?」

「だったら、持中さん的には高宮君を二番手

に置きそうなもんだと思ったんだけど…」

「ああ、それは…うん、これはミナたんの紹

介だから、みんなと多く接するのはミナたん

でしょ?だからうち主体に考えるより良いか

なって…それに…」

「それに?」

「ホッシ―を紹介した後に見渡したら…てる

兄、もう居なくなってたし…」

「ああ……(なんとなく想像がつく)そっか

…なら、しょうがないよね……っていうかそ

っちが本命の理由だよね!」

「てへぺろ」

 

 そんな風にうちがミナたんに返し、彼が遠

い目をしながら、少しの間だけ黄昏てうちと

歩いてると、今度は廊下の向こう側…つまり、

うちらの進行方向から騒がしい声が聞こえて

きた。

 

「だ~か~らっ!わざとじゃねぇ~んだって

!━━━頼むから信じてくれよ…」

「キサマ…この後に及んでまだ言い逃れする

つもりかっ!!」

「あははっ!!怒られてる!怒られてる!ド

ウゲン君がようむちゃんに怒られてる~~w

……キャハハっ!うける~~!」

「……いや、笑えねぇ~……なぁ~…笑ってな

いで羽煎ちゃんからもなんとか言ってくれよ

……」

「いや、この状況は流石にもうどうしようも

ないだろう…むしろどうしろと言うんだ…こ

こはもう諦めて観念し給え、縦王君」

「そんな…綾目ちゃんまで……」

 

 うちはそのこっちに向かってくる一団を見

てチャ~ンス!とばかりにその一団へと歩い

ていく。

今起きてる諍いの内容を聞くと共にそこから

ナチュラルにミナたんの紹介へと持っていく

という算段を頭で組み立てながら、彼、彼女

らをうちは見遣る。

━━━っしゃあ!一気に四人ゲッツ!

 

「ど~も!ど~も~!楽しそうだねっ!皆で

なにしてたの?何帰り?」

 

 と、うちが声をかけるとゲンゲンこと縦王

働原くんが真っ先に飛びついて来た。

 

「お!ちょうどいいところに!…なぁ、庵戸

ちゃん~…タスケテくれ~~!」

 

 

『“超高校級のアルバイター” 縦王働原(ジュウオウドウゲン)

 

 

「う~ん…助けてと言われましてもぉ~…今

のうちには何が何やらさっぱりですしお寿司

?…まずは状況を説明してくれないと…」

「それなら、私の方から説明させて貰おう」

 

 

『“超高校級の医師” 錯刃綾目(サクバアヤメ)

 

 

 そう言って説明役を買って出てくれはった

んは、フード付きの白衣にお医者はんが手術

の時につけるようなマスクを身に付けた一見

不気味な恰好に身を包んだ錯刃綾目ちゃん(

うちはあややって呼んでる)や。

 

「お~~!あやや!あややが説明してくれる

んだったらそれはもう理解する未来しか見え

ない!是非オナシャス!」

「いや、君…いい加減その、一世代前のアイ

ドルのようなあだ名はどうにかならないのか

…?まぁ、良いだろう…私が説明すれば双方

どちらの見方にも片寄らないだろうし、苦流

々汽君のように支離滅裂になることもないだ

ろう…皆はそれでいいか?」

「ああ、俺は構わねぇ……ってか、頼むわ」

「確かに俺もそれに賛成だ…ここは公平に見

れる奴が必要だろう」

 

 

『“超高校級のカードゲーマー” 星木馬代羽武(ホシグマヨウム)

 

 

「アタシは別になんでもいいよ~~?あはは

っ!」

 

 

『“超高校級の呪い師” 苦流々汽羽煎(クルルギパイル)

 

 

「えと……僕もどういう話なのか知りたい…

かな」

 

 ここまでの展開に付いて来れずにいたミナ

たんもあややが説明することに賛同して、皆

の総意を受けてあややが事の発端を説明し始

める。

 

「話は数時間前、私、縦王君、星木馬君、苦

流々汽君の四人で船内を探索していたことか

ら始まる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間前――――――

 

 

 

 

 

 

「よっ!綾目ちゃん!船の中探検しようぜぇ

~!」

 

 私が一人、船内を調べようと考え、いざ動

こうとしていたところに、そんな軽薄を絵に

描いたようなな声が後ろから掛かった。

その声の持ち主は、先程、「モノクマ」なる

者が登場する前に持中君の提案で(おこな)った互

いの自己紹介の時に居た縦王君のものだとすぐ

に分かった。

その声に対し、私もそれなりの反応を返す。

 

「探索…か、それなら私もこれからしようと

思っていたところだが……」

「おっ!それなら、今から一緒に行こうぜ!」

「しかしいいのか?こういうものは別れて個

別に探索した方が効率的だとおもうのだが?」

「いいの!いいの!それに、こういうのは皆

で一緒に行った方が楽しいだろうし、後でど

うせ成果を報告し合うんだろうから一緒に見

て回った方が手間も省けるってもんよ!」

 

 私はその、効率など二の次だと言わんばか

りの彼の言葉にしかし一理あるとも感じてい

た。

 

「フム…確かに、単に遅いか早いかの違いだ

けならそれほど変わらないか…」

「だろ?」

「…それに、急を要するというのならともか

く、今この時において、そんなものを求める

のも虚しい話か……」

「そうそう!そうなんだよ!━━━…っつう

ワケでぇ~~……これからあと二人くらい誘

って()ん中回ろうぜ~!」

 

 その彼の言葉通り私と縦王君、後二人を誘

っての船内探索に繰り出すにあたって、誘っ

た他の二人の様子は以下の通りだ。

 

―――星木馬代羽武

「船内の探索?……まぁ、今はそれほど他に

用があるわけでもないしな…俺は別に構わな

いぜ」

 

―――苦流々汽羽煎

「へぇ~~ww!!船の中を探検するんだぁ

~~……なんか面白そうだから付いて行っち

ゃお!アハハッ☆」

 

 私達二人の誘いに、彼女らは案外素直に応

じた。

その二人の姿を改めてよく確認すると、一人

はセットに三時間は掛かりそうな一本角(イ

ッカクのような)を模した髪型と肩を越して

伸びた長髪に、全身に様々なアクセサリーを

身に着けた小柄な少女

であり、もう一人は不気味さと愛らしさの同

居したような人形型の髪留めと、上は手が完

全に隠れて余る程の、下は地面に付きそうな

程すれすれの服をそれぞれ着用していた。

その二人はとても対照的というか、一方は強

気にして不敵な表情をしており、もう一方は

気の抜けたような笑顔を顔に貼り付けている。

片方は首やら手首などにアクセサリーを付け

て派手にいる割に上は短めの革ジャンにタン

クトップと下は短パン(ショートパンツだっ

たか)と軽装なのに対し、もう片方は地味な

ジャージ服で全身を覆ってそれを着崩してい

る。

と、相手の容姿に気を取られていると不意に

派手な方…星木馬君から声がかかった。

 

「だが…どこから調べるとかは決まっている

のか?それとも、あてもなく彷徨う気か?」

「?」

 

 その問いかけに━━同時に二人の首が左右

それぞれに(苦流々汽君は星木馬君に続いて

)傾げられ、長髪と短髪の対比が目立つ━━

私が答えた。

 

「それなら、私が見に行こうとしていたとこ

ろを最初にするのはどうだ?私がそこに向か

おうとしたら丁度声が掛ったので行きそびれ

た場所だ」

 

 そう言いながら、縦王君の方を見ると何か

思うところがあったのだろう彼がすまなそう

に謝って来た。

 

「いや、そうだったの? でもわざとじゃね

ぇし、そこから先に回るからさ。それで勘弁

してくれや」

「まぁ、別に気にしてはいなかったのだが……」

「え!?そうなの?じゃあ別にいいじゃん!

…んじゃ、行きますか~!」

 

 その彼の先導に私と他の二人も付いて行く

……とそこで私が縦王君に声を掛ける。

 

「……と、そうだ。君、行先は把握している

のか?」

「……っ!!…ははは…」

 それを聞いて意気揚々と先に進んでいた縦

王君の足が止まり、私に道を譲った。

 

━━━そこは、船内に在りながら、まるでこ

こが船の中であるということを信じられなく

なるほどに広大で…主に娯楽方面の設備が充

実した空間が広がっていた。

 

「っ!!…オイオイ…嘘だろ!・・・・・・

これ、船ん中なんだよなぁ?」

「あのモノクマとかいう奴もそう言っていた

し、何よりそのことはもう確認したはずだが

?」

「人にはそーとわかってても信じられねぇー

時って奴があるんだよ!!」

「お呼びですか?」

「―――っ!!」

「!うおっ」

「うわぁ!」

「・・・・・・」

 

 あまりに現実離れした内と外のギャップに

言葉を失っていると、先程の星木馬君の言葉

に反応してか、ぬいぐるみなのかロボットな

のかが非常に曖昧なクマのような奇妙な例の

生物がどこからともなく出現した。(因みに

私が先に回っておきたかった所とはこの船の

最上階であり、外界であるスカイデッキだ。

そこで船の大まかな大きさの把握と船に乗っ

ていることの事実確認の為だ)

 

「いやぁ~~オマエラ、お目が高いねぇ~~

っ!!ここに目を付けるとは流石だよ!」

「オイオイ・・・出てくるならそう言ってか

らでてきてくれよ…心臓が飛び出るかと思っ

たぜ・・・・・・」

「おしいっ!あともうちょっとでその心臓を

売っぱらえるところだったのに!」

「……っておい!!怖ぇこと言ってんじゃね

ぇ!!?」

「おい、臓器売買が目的じゃないならここへ

は何をしにきたんだ。十文字以内に簡潔に答

えろ」

「え~~っと、それは・・・・・・」

「……って!臓器売買が目的でたまるかっ!!

っていうかその売る臓器って俺のやつだろ!」

「…そうだぞ、星木馬君。臓器売買など以て

の外だ。せめて私の見てないところでやって

くれたまえ。人の命は金になど変えられ無い

のだから」

「……見てないところでならいいのか!? 

あんたそれでも医者か!?……っつーか見捨

てないで!」

「わぁーい!バッサリだねぇ--アハハっ☆

!」

「・・・・・・とまぁ、冗談はこのくらいに

して、本題にうつっちゃいますか!」

「ちょっと待って!この俺がそんな外道に手

を染めている前提で話を進めるな!」

「わかっているとも。ほんの冗談だ」

「ったく・・・心臓に悪い冗談だ」

 

 モノクマが縦王君のちょっとした発言を目

ざとく拾った挙句、話をややこしくしたせい

で脱線してしまった。

しかし、それをモノクマが強引に戻そうとし

たところで、星木馬君

が訂正を要求し、それに私が応じて、再び話

はモノクマの用件に戻る。

 

「・・・・・・ホント、オマエラって清く正

しく楽しそうだよね!……あと、なんか、キ

ャラがそのまんま過ぎて、ちょっとツマラナ

イ感があるけど…まぁそこもまた味だよね!」

「……なに言ってんだ手前(てめえ)?」

「?・・・何の事かさっぱりだぜ」

「いいの!いいの!別にオマエラに言ったん

じゃないし!」

 

 モノクマが私たちのやり取りを見て、何や

らわかるような分からないようなことを言い

出す・・・と、ようやく本題に入りだした。

 

「さて、オマエラはやっぱ目の付け所が違う

わ!・・・と言うわけで、ここが何なのかご

説明致しましょ~う!」

 

 ・・・どうやらこの娯楽施設について説明

してくれるつもりのようだ。

その言葉に一同がモノクマに注目する。

 

「ここはなんと言ってもこの船の目玉!通称

「船中の楽園」!"モノクマリゾート"だよー

!」

「モノクマ――」

「――リゾート?」

 

「そう!ここは大小様々な店が立ち並び、中

にはプール関連のアトラクションやにありと

あらゆるアクティビティにゲームセンター等

の娯楽施設も充実、宿泊施設にリラクゼーシ

ョン、温泉、ショッピングセンター、お土産

屋等々……リゾート要素をこれでもかと詰め

込んだこの船最大のテーマパークだ~~!!」

「ヤッホーっ!すっごーい☆」

「若干、詰め込み過ぎな気もするが・・・」

「だが、そういう思い切りの良さは俺は嫌い

じゃないぜ」

「なんか豪勢過ぎてついて行けねぇが・・・

・・・豪勢なんだから気にするこたぁねぇか

!!・・・いぃ~ヤッホーイっっ!!」

「ホロロ……そんなに喜んでくれるなんて…

頑張って作った甲斐があったってもんだよ!」

 

 この施設を見て浮かれる約三名の様子を見

て、この場に最も力を注いでいたのであろう

モノクマが目から涙?を流して感涙に咽ぶ様

を見て………私は疑問をモノクマにぶつけざ

るを得なかった。

 

「しかし、船の中にあるにしてはあまりにも

広すぎるような気がするのだが……一体どう

なっているのだ?」

「ああ…それはね、この船の縦や横、奥行き

を最大限に活用して通路や区画を完璧に整理

しているからそう感じるだけで、この船の大

きさ以上の広さは見た目程にはないんだよね

~~!」

「ん……そうなのか?」

 

 そのモノクマの説明に多少の違和感を覚え

たものの、確かに船を端から端まで歩いて距

離を測ってこの場の広さと比べたわけでも無

いし、目の錯覚と言われればそうかと思うし

かないような気がしないでもない。

そして、そこから更にモノクマの説明は続き

、この船はこのようなテーマパークのエリア

と私たちが起きてきた居住のエリアのみで今

の所構成されているとのことだった。

 

「因みにこの船の飲食店や娯楽施設はモノク

マコインが必要だから注意してね!コインは

午前零時に一日30コイン支給されるけど、

一部のゲームセンター…(略ゲーセン)のゲ

ームの中には勝てばコインを増やせるものも

あるから大いに活用するといいよ。

 でも、使い過ぎはオススメしないかな・・

・・その日のうちに全部スっちまったなんて

ことになったらその日一日は飲み食いや一部

の施設が利用できない・・・なんてことにな

るからさ!」

 

 ここでモノクマがこの施設の注意を述べ━

━━━………………━━ちょっと待った!こ

の説明…まだ続いちゃうカンジ?━━安心し

たまえ、そろそろ繋がってくるはずだ。

 

 そこまででモノクマからの諸注意、モノク

マコインに関して、立ち入り禁止区域、違反

を犯した者に対する処罰当の説明が終わった

ところで、再び―――今度は道楽的な意味合い

で―――全員でどこを最初に回るかという話に

なった。

 

「さてと…っ!そんじゃ、俺はまずプール関

係を制覇しに行くぜ!」

「よっ!いいね!!アタシもそれに一票っ!

ナハハハっ!」

「確かに、悪くないな。まずはこの船の定番

、王道中の王道を進むその感じ・・・気に入

ったぜ!」

「どうやら…この流れに乗るしかないようだ

な」

 

 とそのままの流れで、それぞれの水着を購

入するためにショッピングセンターの中へと

なだれ込み、各々が水着を選んでモノクマコ

インで購入し、更衣室の中へ入って着替えて

いる最中にそれは起きた―――

 

 ━━その時、私、星木馬君、苦流々汽君の

計三名はそれぞれが選んだ水着に着替える為

、服を脱いでいる所だった、のだが━━

因みに、その更衣室のロッカーは入口から見

て正面にあり、その右側の壁には、恐らくそ

れで自身の姿を確認するのであろう巨大な鏡

が設置されていた。

なので、その鏡で己の姿を見て別段おかしな

所は無いかを確認しようとそちらを向くと……

 

「――――っ!?」

 

その鏡には水着に着替えた()の姿ではなく、

同じく、水着に着替えて呆然と立ちすくむ━

━━━()()()の姿が映っていた━━━━━

 

「えっ?……」

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━━

 

 

 

ということは……

 

「えっ?つまり、なに? ゲンゲンがその鏡

に写ってたって…それ、鏡だったんよね?」

「いや、恐らくあれは単なる鏡ではなく、マ

ジックミラーだ」

「それについてはボクがお答えしましょう!」

「うわぁっ!?」

 

 特殊な鏡についてあややと話し合っている

と例のクマのぬいぐるみがまた出てきた。

 

「その鏡はボクが更衣室の整備や点検をやり

易くするために設置したものでね。なんと!

ボタン一つで両側から見えるガラスに変わっ

たり、片方から見ると鏡でもう片方から見る

とガラスで向こう側が見えるようになるとい

う優れもの! ……これでもうオマエラも異

性の裸体を想像するしかない日々とおさらば

できること間違いなし!」

 

「……って、余計なことしてくれてんじゃね

ぇぞ!このクソクマぁぁっ!!おかげで変な

疑いがかったじゃあねぇかっ!」

 

「……ってことは鏡の中…というか向こう側に

いたゲンゲンの所にも三人の姿が映ってたっ

てこと?」

「ふむ、そういうことになるな」

「えっ、じゃあ…つまりそれって覗k…」  

「いやいやいやっ!!俺だってあまりに突然

のことで……んなもん、見てる余裕なんてねぇ

って!」

「キサマ…しらばっくれるのも大概にしろ……

!」

「……ひ、ひぃぃっっ!!」

 

 うちが話の核心に触れようとすると、ゲン

ゲンが慌てた様子で遮って、それをみたよむ

りんがゲンゲンに食って掛かると、情けない

声上げてゲンゲンが身ぃ縮めて端に引いた。

それを見かねてか、あややが助け船を出すか

のように話しを本題に戻す。

 

「ふぅ・・・それで、そっちの二人は私たち

に何か用かな?」

 

 その言葉に、胸倉をつかんでゲンゲンを殴

りそうなよむりんと、それを手で庇いつつ身

構えるゲンゲン、今の言葉を発した本人であ

るあややと、パルルんからの視線を一手に受

けた。

(あのぬいぐるみはいつの間にかいなくなっ

とった……)

皆の視線を受けて少しだけ緊張するも、うち

らの要件を簡潔に伝える。

 

「ああ…それは、ええーっと…あ、そうそう

!ミナたんの自己紹介を今皆にして回ってて

さ・・・ほら、うちらは自己紹介したけど、

その時ミナたん居なかったし!」

 

 そういうと、皆の視線がミナたんに移って

、それに対してミナたんが自己紹介を始めた。

 

「あ、えっと…僕がそのミナたんこと、佐藤

皆高で…希望ヶ峰には一応、“超高校級の平均”

ってことになってます……これから、よろしく

……へへへ」

 

 少し照れ臭そうに頭の後ろを掻きながら、

自己紹介しつつ、可愛い照れ笑いを浮かべる

ミナたん。

 

「へぇ~~っ!!そうなんだ~☆↑じゃ、次

はアタシの番かなぁ~~!アタシの名前は苦

流々汽羽煎!“超高校級の呪い師”だよ~~な

ははっ!!」

「次は俺が名乗らせてもらうぜ!俺の名は星

木馬代羽武!“超高校級のカードゲーマー”

だ!!」

「うっし!じゃあ流れ的に次俺な!……聞い

て驚け!見て嘶け!俺は“超高校級のアルバ

イター”縦王働原だ!」

「そういう事ならば是非もない…その脳内の

記憶領域の片隅を占拠させてもらうことにし

よう…私は“超高校級の医師”と呼ばれている

錯刃綾目という者だ。以後、よろしく頼む」

 

 

 一気に四人と話して、少しというか、どっ

と疲れた感じがあるけど、皆と話しているミ

ナたんは楽しそうやったので、そこは気にし

いひんことにした。(何故か気にしたら負け

な気がするので)その後、あの四人はよむり

んに追いかけられるゲンゲンを先頭に、何故

か一緒に追いかけられるかのように楽しそう

に笑いながら走るパルルンが二番手、次いで

それを追いかけるよむりん、更にそれを追い

かけるあややの順でうちらが来た方向へ走り

去って行った。

 

 ……その後も船内を探索してると、いつの

間にか、最初に身が覚めた部屋がある、居住

区の前まで帰って来てしまっていた。

 

「あれ!?ここって……最初に目が覚めた…

あの道はここへ出るのか…」

「ちょっと、ミナたん~…地図みよ?地図。

せっかくあるんだしさ~」

「あはは…ごめんごめん、ちょっと地図無し

で探検して見たくってさ…」

「それで帰って来てたら世話な…あれ、あそ

こにいるのはもしかして…」

 

 それだけ言うとうちはミナたんの手ぇを引

っ張り、その人の所へと駆け寄った。

 

「え…ちょ、またぁ~!?」

 

 本日二回目の内の牽引にミナたんが軽く悲

鳴を上げるのを後目に、本日七回目の自己紹

介をする人の元へと急いだ。

 

「ふぅ…さて、掃除も粗方済みましたし、ス

ケッチでも――……?」

 

 その人はうちらの接近に気付くと柔らかい

笑みを浮かべてそこで待っとってくれた。

 

「こんにちはっ!ねぇねぇ!エソラン!今ち

ょっと時間良いかな?」

 

 うちが期待を込めてそう訊ねるとそのまさ

に期待通りの声が返って来た。

 

「…ふふっ…はい、御機嫌よう。…今ちょう

どひと段落付いた所ですので、何なりとお申

しつけください」

 

 

『“超高校級の画家” 褐斎画空(カッサイエソラ)

 

 

 一言そう言って、育ちの良さを伺わせる行

儀の良い礼をして見せるエソラン。

すると、ミナたんが相手に遠慮するように声

を上げた。

 

「え、でもさっき…スケッチがどうとか言っ

てなかった?本当はお邪魔なんじゃ……」

「いいえ?特に差し迫った用でもありません

し、自室の掃除に区切りが付いたので気分転

換にこの船の内装でも探索ついでに絵にしよ

うとしていただけですので…」 

「そうなんだ…それならいいけど…でも、や

っぱりあまり時間は取らないように手短に済

ませようかな」

「それなら早速っ!ほらミナたん!自己紹介

自己紹介!」

「……なるほど…そう言われればそちらの方は

先ほどの自己紹介でお見掛けしませんでした

ね…」

「うん、そういう事なんだ。…それじゃあ早

速………」

 

 褐斎さんになるべく手早く自己紹介を済ま

せた………

 

「成程、“超高校級の平均”、佐藤皆高様で

ございますね。記憶致しました」

「うん、褐斎さんは“超高校級の画家”なん

だよね?」

「はい、左様でございます」

「今までに描いた絵とか見せてもらえたりで

きるかな……あ、もちろん無理にとは言わな

いよ?」

 

 エソランとの会話の中で、ちょっとした頼

み事をしてみるミナたん。

 

「ええ、私に見せられるものでしたら…と言

いたいところなのですが…生憎、手元にお見

せできる作品が無く…誠に申し訳ございませ

ん」

 

 しかし、彼女から発せられたのは心底申し

訳無さそうなそんな謝り文句やった。

 

「ああ…いやっ!無理ならいいんだっ…!……

むしろ、変な事聞いちゃってごめんね?」

「いえ、それこそお気になさらず…しかし、

これからこの船内をモデルにスケッチなどし

ようとしていたところですので……少しお時

間を頂ければ、絵をお見せできると思います

が…如何致しますか?」

「ほんと!?…それならそれができたら、見

せてもらっても良いかな?……そういえば、

スケッチに行くところだったんだよね?ホン

トごめんね?引き留めちゃって……」

「いえ、特に急ぐ用でも無かったので……そ

れより…はい、約束のお品をお渡しするのは

次にお会いした時でよろしいでしょうか?」

「うん!大丈夫だよ!…でも、スケッチする

画材とかはあるの?」

「それが…大変心苦しい限りなのですが、何

故か画材の類も部屋に見当たらず……なので

、部屋に備え付けられていたメモ用紙と鉛筆

をお借して、手掛けさせて頂きたいと思いま

す」

「成程、それなら心配なさそうだね!……超

高校級の画家の描く絵か……なんだかすごく

楽しみだなぁ~」

 

 ここまで、端からで見とって、なんやミナ

たんの様子がおかしい事に気が付いた。

━━なんか妙にテンションが高いような……

…?まさか…!

 

「ヌフフフ……ミナたん、お姉さんは応援す

るよ?……ヌフフ……」

「な、なんのことかな…ま、まぁありがとう

……」

 

 あくまでなんのことかわからないというよ

うな態度を取りつつ、礼を言いながらも照れ

隠しさながらにそっぽを向く彼を微笑ましく

思いながら、改めてそのミナたんの想い人で

あろうエソランに目を向けると…なるほど、

これは確かにわかる気がする。

そんな彼女の容姿はというと、顔は目尻が上

がりながらもすっきりとした目の覚めるよう

な美人で、ブレザー制服を身に纏いながらも

背丈はすらりと伸び、その背中にはまるで清

流を思わせるような薄水色の長髪が腰の辺り

まで伸ばされとった。足はスカートは丈が長

く隠されてはいるものの、そのスカートの上

からでも脚線美がにじみ出ている……そして

、何と言っても━━━服の上からでもわかる

ほどの大きく形の良い胸に、うちの目は奪わ

れた。

 

「やばっ……それはズルいわ…」

「?」

「どうしたの?持中さん」

「う、ううん……なんでもないよ」

 

 ……言うわけで、総合すると単なるブレザ

ーをドレスでも纏うが如く着こなし、素人目

にも品格の高さが明らかなほどの佇まいだっ

た……ミナたんが惚れるわけやな。

 

 その後、うちらはエソランと再会する約束

をしてから別れ、居住区の入口から伸びる廊

下を引き返して、再び探索に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕と持中さんが錯刃さんの話の中にあった

スカイデッキを見ておこうと足を運ぶとそこ

には既に先客が二人程いた。

―――――――そこでみた光景は恐らく後々

の人生でも決して忘れることがないだろう―

―――――――

 

「ふっ…せいっ………はぁっ!!」

 

 ―――人が宙を舞いながらボールを蹴って

近くにあった高い柱に三連続でぶつけてのけ

たその光景を。

 

―――パンッ―パンッ……パン…!

 

「いや~~…お見事です~…私にはとても

真似できません……まぁ、尤も…フフッ

…真似しようとも思いませんが…」

 

 その今しがた目撃した光景に二人して呆気

にに取られていると、どこからともなく、一

人分の拍手の音とどこかで聞いたことのある

声が僕の耳に滑り込んできた。

そして、言葉を送られたその人は……

 

「そりゃあ~~そうっすよ!そう簡単に真似

されてたまるかっつ~のっ!」

 

 バイザーを後ろにしてにかぶり――普段は

はねているのだろうか、帽子のしたから押さ

えつけられているツンツン髪が下向きに覗い

て生えている――、サッカーのユニフォーム

を着て、ボールを脇に抱えながら(器用にな

ことに足でキャッチしていた)、先ほどの見

事な三段シュートを決めていた人物が爽やか

な笑顔と共にこちらに近づいてくる。

 

「よっス!! そちらさんは何か初めて見る

顔ッスね~~?………ま、いいかっ! オレ

は逆珠周壱ッス! どうぞよろしくっス!」

 

 

『“超高校級のサッカー選手” 逆珠周壱(サカダマシュウイチ)

 

 

「ついでに私も自己紹介させていただきます

~…私、任三篩畑と言います~…これからど

うぞ仲良くしてくださいぃ~…ハ…」

 

 

『“超高校級の刑事” 任三篩畑(ニンゾウジハタケ)

 

 

 急に湧き上がるかのようにどこからともな

く現れた任三篩君と先ほど見事なシュートを

決めていた逆珠君に圧倒されて何も言えずに

いると、先に持中さんが口を開いた。

 

「さっきといい今といい、神出鬼没を絵に描

いたような人ですなハタ兄は…しかも、サ

ッカーバカ全開のシュー兄もいるし……え

っと…ここで何してんの?」

「見てわかんないっスか?…秘密特訓ッス!」

「それ、言っちゃって大丈夫なの?」

「ミナたん…ツッコんだら負けだよ・・・」

「いや~、私も本末転倒だと思いますねぇ…

まぁそれはそれとして、私はその公然の秘密

…特訓のただ一人の観客としてこの場所

を占拠していたことに若干の心苦しさを感じ

ていたので…ちょうどよくお二方が来られた

のには救われましたよ……ええ、いや、、

、ホント……」

 

 

 開襟したワイシャツにネクタイを緩めに締

め、モッズコートを羽織った(この日差しの

中暑くはないのだろうか)彼は心底そう思っ

ていると言うように胸に手を添え微笑みを浮

かべながらそう響く。

それに対し、ユニフォーム姿の…逆珠君が反

論する。

 

「それにしては、やけに静かに見てたじゃな

いっすか?」

「それは、ほら…そんなことを誰かに言った

ってしょうがないじゃないですか…」

 

 …確かにこの二人以外におらず、片方が

(本人曰く)秘密特訓中では、そんな文句を

口に出したところで虚空に虚しく消えて行く

ことだろう。

そして、その不満は誰かがこの場に着た途端

に解消されるものなので本来は言う必要さえ

ないと……その後、僕らは互いに自己紹介を

終え、僕はふと気になったあることを、逆珠

君と会話中の任三篩君に聞いてみることにし

た。

 

「というかですねぇ~…、そもそも……」

「ねぇ、任三篩君」

「……?はい、何でしょうか?」

「任三篩君って、"超高校級の刑事"なんだよ

ね?」

「ええ、先ほどそう申し上げました~…こ

んな私にそんな称号、大袈裟だろうとは思い

ますが、言われているのですから仕方があり

ません……」

「ううん、疑ってるわけじゃなくってさ…

そんな君に()()()()のことで聞きたいことが

あるんだけど」

 

 僕のその質問に、彼は何かを察したかのよ

うにわかりやすく顔色を変えて見せると胡散

臭さそうな、それでいて聞く者、見る者をど

こか落ち着かせるような独特な顔と声音で快

く承諾してくれた。

 

「……はい、構いませんよ。 私に・・・・

()()()()()()ことでしたら…」

 

「?」

「………」

 

 その返答を、僕以外の二人、逆珠君は意味

を理解できていないと言うような顔を、持中

さんはどこか不安そうな顔をしながら聞いて

いた。

 

「うん、任三篩君はさ、この生活のこと…

どう思う? ()()()()()なんて起きると思う

?」

「っ!!」

「………」

 

 ここでようやく意味を理解したらしい逆珠

君が息を呑み、薄々…かどうかは知らないけ

ど既に察していたらしい持中さんが目をそら

しながら顔を伏せた。

そう、こんな質問は今のような空気を生み、

徒に皆の不安を煽るだけだろうと思っていて

も、問いかけずにはいられなかった。

この()()楽園のような生活に不安要素がある

とすればそれしか無い。

そして"超高校級の刑事"としての彼の勘がそ

の可能性を否定してくれれば後はもう、何も

心配することなくこの船旅を楽しむことがで

きる……そんな安心を得たいという、浅まし

くも身勝手な希望を抱いたが故にに彼にこの

質問をしてしまった。

そんな僕の問いに対する彼の答えは――――

――――――――――

僕の目的と言う意味に於いては絶望的で、僕

らの未来という意味に於いては希望でも絶望

でもどちらでもないものだった。

 

「そのことについて私から意見させてもらえ

るならば…そうですねぇ~…もちろん?そ

の可能性については考慮すべきでしょう!

……しかし、今のところはその気配がな・

い…のも事実なので、未来の可能性につい

ては私も預言者ではないので定かでなく、ま

だ、断定はできませんが……その可能性を考

えつつ、未然に事件を防ぐ、よう心掛けるこ

と~…がその、コロシアイとやらを起こさ

せないようにする秘訣であり、カギであり…

…今の私たちがとれる最善であるだろう…

…と思います…はい」

「……そ、そうっスよねっ!そんなこと、

しなけりゃいいだけじゃないっスか!だって

、たかだか二週間っスよ!?」

「うん!そうそう!二週間の間にそんなこと

そうそう起こりっこないし!っていうか起こ

させないし?」

 

 そうなんだ。恐らくはみんな、起こるはず

はないと思いつつも、不安はあったはずで、

今、任三篩君が云ったように努力するほかに

無いことも分かっている。

何故ならここは船上で、逃げ場はどこにも無

く、そして一歩間違えば戦場に変わる……

そんな場に居るのだという事を、楽しさや日

常に流されて忘れてしまわないうちにはっき

りさせておきたかった。

勿論、いつでもびくびくして過ごそうという

わけでもないけれど、それでも、警戒だけは

常にしておくべきだと思う。

だから、こういうのはあえて全員集まった時

にでも言って、警戒心と団結力を強めた上で

、みんなでこの航海を楽しむべきなんだ。

それが、今僕たちができる最善だと強く感じ

る。

そう思っているのは僕だけではないようで、

逆珠君に持中さんも決意を露わにした顔をし

ていた。

 

「よし!そうと決まれば、もう次の人の所へ

行くよ!ミナたん!!自己紹介なんて早く終

わらせて、皆で対策を練って、この期間を無

事に楽しく乗り切ろう!笑顔で帰ろ~うっ!」

「そうっス!試合は家に帰って寝て次の朝が

来るまでが試合ッスからね!つまりは家に帰

っちまえば試合終了(ゲームセット)も同然っすよ!」

 

 逆珠君までもが家に帰るまでが遠足、見た

いなことを言って息を巻いている。

(しかもそれだと終盤気を抜いていいのか悪

いのかわからない……まぁ悪いのだが)

そう、モノクマの定めた二週間…その期間

をただの船旅とするべく僕らは決意を固めた。

 

 

 

 

 

 

その後、僕は任三篩君からちょっとした悪戯

を受け(僕が背を向けた瞬間に「手を上げろ

!」と言われその次の瞬間に、クラッカーを

鳴らされた)た。何故かまるで銃でも撃った

かのような発砲音が辺りに響き渡り、寿命の

縮まるような思いをした僕は、悪戯をした張

本人に抗議の目を向けながら、その場を後に

しようとしたところ、彼が例のクラッカー―

――10割増しのクラッカーと言うらしい――

―を投げて寄越し、それは船内の2Fのショ

ップにあるモノモノマシーンから引き当てた

ものだということを伝えてくれ、暇なら行っ

てみるのも面白いのではと提案してきたので

、そこへ行ってみる事にした……というより

、そのガチャガチャらしいその機械に興味を

示したらしい持中さんが僕の手を引っ張って

半ば強引に僕を連れて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 2Fに着いた僕は自己紹介があるから別に

暇なわけでもないんだけどな~…と思いつ

つ、持中さんが手を引くその先の場所に目を

向けてみると、背丈の小さい二人の女の子?

が、白と黒の機械の前に立って何か言い合っ

ていた。

 

「これはルルが引いたんだから、ルルのだよ

~っ!」「ダ~メ!これはネネのコインで引

いたからネネの!」

「っ!!」

「……ちょっと!?…いきなり引っ張らない

で!?持中さん!?」

 

 そして何故か、急に僕の手を引く持中さん

の強さが増したかと思うと、僕らはその二人

組の前まで辿り着いていた。

 

「ヤッホー!るるるにねねね!何してるの?」

 

 持中さんがその二人組に話しかける。

 

「「あ!アンコだ!」」「「そっちこそ何し

てるの?」」

 

 すると、二人から全く同時に返答があった。

 

「え……まったく同じ?持中さん…これっ

て…」

 

 驚きを隠せ無い僕に持中さんが説明してく

れた。

 

「あぁ~最初はうちもびっくりしたよ。でも

、これがこの子たちの『才能』なんだ~~!」

 

 それはつまり……

 

「「ねぇ!ねぇ!何しに来たの? youは

何しにこの場所へ?」」

「ああ、ごめんごめん…それはね……ほら

!さっきはこのお兄さん居なかったっしょ?

だから自己紹介して回ってんの!」

 

 持ち中さんは僕に手を向けながら二人にそ

ういうと、その二人組も元気よく返事を返し

た。

 

「「そうなんだ!」」「それじゃ」「ネネた

ちから」「ルルたちから」「「自己紹介しな

きゃ!」」

 

 かと思うと今度は二人で言葉をリレーし始

めた。

 

「それじゃ」「行くよ?」「ルルたちは…」

「ネネたちは…」

「「"超高校級の双子"!」」「「の」」「鑑

瑠々と」「鑑音々」「だよ!」

 

 

『"超高校級の双子"鑑瑠々(カガミルル)鑑音々(カガミネネ)

 

 

「瑠々がルルで」「音々がネネ」「「だよっ

!」」

 

 自分たちの自己紹介の後、どちらが"瑠々"

でどちらが"音々"なのかを自分を指さすこと

で教えてくれる。

どうやら、青っぽい服の子が瑠々で赤っぽい

服の子が音々のようだ。

……確かに、そう言われて顔をみれば、もは

や似てるなんて次元じゃないくらいによく似

ていた。

それはもう、同一人物が二人いると言われて

も違和感を感じ辛いくらいには。

 

「「じゃ、次はあなたの番ね!」」「アピー

ルターイム!」「ビジネスチャーンス!」

「あ、ああ…うん、わかった。ありがとう、

僕は名前は佐藤皆高。“超高校級の平均”と

して希望ヶ峰に呼ばれたんだ!これから、よ

ろしくね!」

 

 二人から自己紹介を促されて、今まで通り

に簡単な自己紹介を僕が終えると、二人が楽

しそうに喜びながら僕らの周りをその袖に隠

れた両手(いわゆる萌え袖と言う奴だ)を上

げて回り始めた…可愛い…

 

「わぁーい!仲間が増えたみたい」「増えた

みたい!」「大事な事だから二回言う」「二

回言う!」

「はぁ~♡癒されるわぁ~…と、いけない!

いけない!次に行かないと……でもなぁ~

…もういっか……」

「いやいやいや! …ダメでしょ!?…い

、良いから行くよ!持中さん!…二人も、

またね!」

 

 鑑さんたちの可愛さにすっかり骨抜きにさ

れたらしい持中さんを今度は僕が引っ張って

いき次の場所へと向かう為二人に一時の別れ

を告げると二人も快く返してくれた。

 

「「うん!」」「ミナタカ!またねー!」「

アンコ!またねー!」

 

 …正直、僕も離れ難かった。

だけど、そうもいって居られない。

この船でまずやっておくべき事が出来たから

、それを先にやっておかないと―――そう考

える僕の足は自然とさっき縦王くんたちに聞

いた、"モノクマリゾート"なるところへと向

かっていた。

 

 

 

 

 

 

 ……疑っていたわけではないんだけれど、

本当に広い……。

……僕らは今、錯刃さんたちの話の中にあっ

た"モノクマリゾート"に来ていた。

 

「……って広っ!!いやいやいや!? この

船、こないな場所入る程大きかったけぇ?」

「でも、モノクマは船の設計を弄ってそう見

せてるだけって言ってた……よね……ま

ぁそれにしてもこれは…」

 

 その場でじっとしていると遠近感が狂いそ

うだ。

そんな風にこの船で一番の広大さを誇るであ

ろうその場所にただ呆然としていると、ふと

視界に人がいるのが見えた。

……その人物は目の前にある作り物の砂浜の

波――恐らく何かしらの動力で起こされてい

る――を足元に…佇んでその人工の海を見て

黄昏ていた。

……なんか、やけに絵になるな……褐斎さん

にデッサンでもして欲しいくらいだ。

そんな、絵にでも描かれそうな雰囲気で佇む

その人物に僕らが近づいていくと、またも持

中さんから声を掛けた。

 

「レン兄ぃ~!ちょっといい?」

 

 持中さんの声にその人は(おもむろ)にこちらに振

り向くと驚いた調子で丁寧且つ古風な挨拶を

投げかけてきた。

 

「おお…誰かと思えば、庵戸殿ではござらん

か……今の今まで気が付かず、申し訳ない…

…む…そちらの御仁は?」

「うん、実は…―――」

 

 持中さんが大体の事情を説明すると黒を基

調にしたような着物に長髪を後ろに一本でま

とめて片目に眼帯をし、腰に一本の日本刀を

――確か、佩くって言うんだっけ――差した

その人はこちらの用を快諾してくれた。

 

「成程、そのような事であればこちらも是非

ともさせて頂きとうござる…というより、

むしろ事ここに至るまで名乗りもせずに大変

失礼にござった。……では、恥ずかしながら

名乗らせて頂きましょうぞ。……拙者、

名を柳前連磨と申す剣客にござる。まだ未熟

な身の上ながら、居合の名門、神錆一刀流の

十五代目当主の名を受け継しぎ候。よろしく

お願い申しあげまする」

 

 

『“超高校級の居合道家” 柳前連磨(リュウゼンレンマ)

 

 

「へぇ…居合道家なんだ…なんだか、すごい

ね…今まであった人たちもだったけど、また

一段と…」

「左様でござるか?……いやしかし、まだま

だ拙者は道半ば・・・"超高校級"だなどと

もてはやされ、この希望ヶ峰の末席を汚して

はおるものの己の身は余る評価と自身の至ら

なさに…悶々とした日々を送っているでござ

る」

「…そうかなぁ?もう十分に凄いと思うけど

…佇まいからしてもう…」

「レン兄はちょっと自分に厳しすぎるところ

あるよね~~!杓子定規っていうか、畏まり

候!って感じ~!もっとリラックスしてホラ

ホラ!」

「そうは申されまするが……」

「でも、それじゃあさ!何か居合の技を披露

して見てよ!一度見て見たかったんだよね!」

 

 そんな僕の期待はあまりにも次元と意識の

違いのせいであっさり裏切られてしまった。

 

「非常に申し訳ござらんが、それは恐らく叶

わぬでござろう」

「え…どうして?」

(それがし)の技は、己では正確に振るっている

つもりなのでござるが…あまりに拙速の過

ぎる故、普段居合の素早い剣捌きを見慣れて

居られる審査の方でも目で追えぬのでござる

…しかし、ただでさえ未熟な拙者の型が動き

を緩慢に、それも他の者から見て視認できる

ほどに遅くするとなると技自体の流れが悪く

なり、限りなく不完全なものをお見せするこ

とに……」

「えぇっ!!そ、そんなに早いの!?」

「うむ…故に昇段審査の時に於いても、流れ

を損なわぬ程度には加減しながら型を披露す

るのでござるが……如何せん、これが人の目

のみならず、ハイスピードカメラなるもので

も追い切れぬという始末」

「ああ…もうその話を聞いただけで、型を見

なくても君が超高校級なんだってことを実

感できるよ……」

「うん、マジヤバス……」

 

 柳前くんの凄まじい剣の領域の話を聞いて

、もう技を見たいだなんて言う事すらおこが

ましかったのかもしれないと、そんな感想を

胸に抱きながら隣の持中さんと感動している

と、柳前くんから申し出があった。

 

「しかしながら、折角拙者の技に興味関心を

抱いて頂いておるというのに、何もせぬとい

うのも失礼千万…もしも、斯様な見せられた

ものでもないような拙いもので良ければ披露

するのもやぶさかでないのでござるが、如何

か?」

「え!本当!?」

「おおっ!レン兄が心を開いたっぽい!!」

「いや、心を閉ざした覚えは毛頭無いのでご

ざるが……」

「それじゃ…お願いできるかな」

「うん!うちも見たい~!」

「されど、再三断っておきまするが、これか

らお見せするのは極限まで技の正確さや美し

さ等を削って動きを視認できるほどまで遅く

したものであることを努々お忘れなきよう…

…では、心して御覧あれ―――」

 

 それから、柳前くんの居合の型を二人で見

せてもらったんだけど、さっきの彼の言葉に

反して、居合の技はどれも見事の一言に尽き

るというのが持中さんとの総意で、二人して

驚嘆の声を禁じ得なかった。

 

「……はぁ~…これは…ねぇ、これって完

成度で言うとどのくらいなの?綺麗すぎて言

葉が無いんだけど…」

「ふむ…これは完成度で言えばおよそ三割ほ

どかと存じますれば」

「これで三割!?……なんか、厳しすぎない

?」

「いや、このようなものでは到底満足できま

せぬ。ただでさえまだ高みには届いておらぬ

というのに」

「いや~…もう、十分だよ…」

 

 まさに、計り知れないとはこういうことを

指すだろう。

これでもまだ彼の中では三割の出来で、完璧

にしたとしてもまだその先があるというのだ

から。

 

「いや、そもそもが、刀を振るっている時点

で遅いのでござる」

「?それってどういう…」

「例えば、佐藤殿が拙者に勝負を挑むとすら

ば……」

「えぇー!!そんなの無理だよ!」

「そう…先ほど拙者の未熟ながらもそれなり

の居合の型を見た後であれば、そのような反

応にもなろうというもの…しかしそれは、そ

の技を見た後にござろう」

「まぁ、確かに…」

「つまり、それでは出会いがしらに勝負が生

じてしまうのでござる」

「つまり、あの技を見た後っていうのは~…

もう、既に勝敗が決まっちゃってて、どちら

かが負けた状態ってこと?」

「左様。技を見られた後で脅威を感じられて

ももう勝敗は決した後であり……、それでは

遅うござる」

「……っ!!」

 

 持中さんや柳前くんに言われてやっと気が

付いたけど確かに、それだと相手との衝突は

避けられない。

つまり、柳前くんの目指すものは……

 

「……拙者はその勝負すら避けることを目標

としており、それが神錆一刀流における至上

命題でもあるのです」

「え、でも…それ、素人目にも分かるって

相当なんじゃ…いやむしろ、達人の方が…?」

「うむ、その何れにも出会った瞬間に到底敵

わぬことを悟らせられるほどに剣技を研ぎ澄

ませ、気を放つこと…それを最終目標として

おる故、斯様な道半ばで満足している場合で

は無いのでござる。事実、神錆一刀流はその

流儀故、技は門外不出であり、他者に対する

技の使用が固く禁じられておりまする」

 

 その流派の真髄というか核心に触れてます

ます驚きを隠せないでいると、ふと疑問に思

ったことが口をついて出ていた。

 

「……でも、勝負、というか衝突を避ける

だけなら他に方法がありそうなものだけれど

…例えばこっちから許しを請う、とか…」

「…それは、ちょっと空気読めなさすぎじ

ゃない?略してTKYじゃない?」

「…そうだよね…自分から命乞いなんて真似

、僕とかならいざ知らず柳前くんに限って……」

 

 だが、彼からは意外な答えが返ってきたの

で、それにも驚いてしまった。

 

「否、無論話し合いで片が付くのであればそ

れも良しにござる。それが通じぬ相手と言う

のは往々にしているものなので、そう言った

手合いに対応するために必要と言うだけ話な

のでござるよ」

「え!?つまり、場合によっては命乞いだろ

うが、話し合いだろうがなんでもすると…」

「…まぁ、拙者のような者でも一端の尊厳と

いうか、一種の誇りのようなものは持ち合わ

せているからして、出来る事なら()()()()

要すらないほどに会った瞬間に圧倒できれば

いう事は無いのでござるが…」

 

 あ…やっぱりあんまりやりたくないんだ…

……まぁ、そりゃそうだろう…必要であって

も抵抗があるのに不必要なのにわざわざ相手

にへりくだろうとする人なんていない━━こ

の時、一人の人間が頭の片隅に浮かんだが全

力で無視することにした━━

 

「あ、やっぱ嫌なんだ…そりゃそうだよねぇ

~!」

「うん、というか…まず、そんな状況に出く

わしたくないよね……さて、そろそろお暇す

るよ。……こっちの我儘を聞いてくれてあり

がとね!!」

 

 持中さんが僕の思ってたことを代わりに言

ってくれたような所で僕は、この場所を後に

することを柳前くんに告げる。

 

「こちらこそ、なんの役にも立てず申し訳の

うござった……それではまたの再会を心待ち

にしておりまする」

「そんじゃまったね~レン兄!」

 

 それだけ言うと僕らはその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………その後、モノクマリゾートの他の

エリアや店等を探索がてら最後の一人を探し

ていたんだけど中々見つけられずにいた。

 

「あっれ~~?…ちょっと~どこ行った~?

全然会わないんだけどーー!」

 

 確かに、会わない…船内をぐるっと一周回

った所為かついさっき、まだ追い掛け回され

ているらしい縦王くんや既に自己紹介が済ん

でいる人たちにはまた会ったんだけどまだ、

最後の一人には出会えて居なかった。

 

「本当だね…入れ違いになってるのかな?」

「いや、それにしたってだよ!?これだけ船

の中全部をさがしても居ないっていうのは流

石に……あぁっ!!…え、もしかして…そう

いうこと?」

「え、どうしたの?何かわかったの?」

 

 と、二人して頭を捻ってていると、突然何

かを思いついたかのような反応を見せた持中

さんに何事か尋ねる。……すると…

 

「うん、もしかしたら…あそこかも!」

 

 そう、口走ったのも束の間、思い付いたら

しい場所へ一目散に駆けて行く持中さん。

 

「え、ちょ、ちょっと待ってよ!持中さぁ~

んっ!」

 

 僕も急いでその後を追いかける。

 

 

━━━━そこから曲り角を何回か曲がった先

の船内エレベーターに乗ってたどり着いたの

はさっき回ったばかりのスカイデッキだった。

 

「ねぇ、持中さん…ここってさっきも回っt

━━━」

「あ!ほらっミナたん、あれあれ!!」

 

 僕の台詞を遮るように食い気味に僕に呼び

かけながら彼女はスカイデッキの手すりの向

こうへ指を向けていた。

……そうは言っても、その手すりの向こうは

海が広がっているだけ━━━そう思って、彼

女の指差す方を見ると…そこにはやはり海が

広がっていた。……だが、それだけではなく

、その清々しいオーシャンブルーの中になに

やら一隻の船がこの豪華客船に並走している

のが見えた。

━━まだそれだけなら、首を傾げるに留まっ

たかも知れないが、それで終わりではなく━

━そこには、およそ僕たちくらいの…そう、

ちょうど高校生くらいの人間が自身の身の丈

ほどはあろうかというマグロを一本釣りして

いるところだった。

 

「………え?う、うそぉ!?」

「……お、りゃあっっっ!!……はははは!

!まだまだ軽いわっ!ワシを引きずり込みた

きゃあ、今の十倍はあらんとのぅ!!ハハハ

ハハっっ!!」

「……………本当にいるのか……まぁ、いると思

ったから来たんだけどさ……」

 

 あまりに衝撃的な光景に驚いて声を上げる

と、今見ている方から豪快な笑い声が飛び込

んできた。

そして、柵から身を乗り出してよくその船を

よく見てみるとその船にはマグロを始めとし

て大量の魚が山と捕獲されていた。

あんなに乗せてしまって大丈夫なのだろうか

……と考えていると、その漁船?に向けて彼

女、持中さんが声を張り上げた。

 

「ちょっと!かじきちぃーーッッ!!!そこ

で何やってんのーーっ?戻ってきてぇーーっ

!!!」

 

 すると向こうもそれに気付き、こちらに向

かって怒号を飛ばす。

 

「?……おおっ!!!和菓子のォっ!!!わ

れさんもこっちくるかぁぁぁーーー!!!?」

「えっ?なにっ!?……いや…だから!!良い

から戻って来てぇーーっ!!!」

 

 その後、あと数回ほど絶叫合戦を繰り広げ

ようやく、言葉が相手にまともに伝わり、意

味を理解した彼が自身の乗った舟艇をこの船

に上げる支度をし始めた。

そして、徐々に船が元あった場所まで引き上

げられるとその船舶から颯爽と飛び降りてフ

ロア内に入ってエレベーターに乗り、僕らの

いるスカイデッキまで上がって来た。

 

「いやぁ~っ!すまんのぉ~!!なんせ、波

の音と船のエンジン音で何言いゆーか分から

んかったきの~~…?」

 

 荒波のような蓬髪に左目に傷のある、がっ

しりした筋肉質な体型━━恐らく、漁で鍛え

られたんだろう━━の彼が先ほどのことを詫

びながら、しかしそれを全然感じさせないよ

うな快活な笑顔でこちらへと歩いてきた。

 

「もぉ~~!!かじきちはもっと、周りを見

て加減して?」

「いや、そうやきちゃんと聞いたろう…」

「そりゃ~~、あんだけ声を張り上げたら逆

に気付いて貰わなきゃ困るよ!!」

「そりゃ……悪かったのぅ……」

 

 先ほどの笑顔はどこへやら持中さんに叱ら

れた彼…(かじきち?)は少しの抗議の後、

渋々といった体で言葉ばかりの反省していた。

 

「はい!次からは気を付けて下さいっ!」

「…?お、おう…次からは気ィつけるわ…」

 

 ……恐らく、持中さんが喝を入れようとそ

の彼の体を叩たのだろうが、当の本人には全

く効いていなかった。

というかむしろ、彼女の方が自分の手をさす

っていた。

……と言ったところで、僕は自分から声を掛

けた………もしかしたら…

 

「ねぇ…君ってもしかして、荒海梶鬼君…か

な?」

「?……何でわれがそんなん知っちゅーが?」

 

 案の定相手にはを首を斜めにひねられてし

まったけど、僕は例のことを言う事にした。

 

「実は、僕が目覚めた部屋の真ん前が君の部

屋でさ……そこのドアプレートに君の名前が

書いてあったんだよね『アラウミカジキ』っ

てさ」

 

 僕がそのことを告げたことによる相手の反

応は…

 

「ほう…、つまりあれか?そのプレートに掛

かれた名前がこれまでに会うたどいつでもな

かったき、これはもう、ワシしかあり得んと

 …そう、思うたちことだな?」

「うん、そうだよ。始めて対面するのはもう

君で最後だからね」

 

 その相手の反応に僕も素直に返す。

……それを受けて相手が少し困ったような声

を上げる。

 

「うむ…こりゃ参ったのぅ…自己紹介の初名

乗りをまさか取られるとは思わんかったき…

やけんど!なんぼ相手に知られていようとこ

こは自己紹介らしく、改めて名乗らせてもら

うことにする!!」

 

 先ほどまでの勢いを取り戻すように彼…荒

海君は僕に向かって元気よく声を張り上げた。

 

「ワシは“超高校級の漁師”っ!!荒海梶鬼

じゃあっ!!!以後よう見知りおけ~~!

!!ガハハハッ!!」

 

 

『“超高校級の漁師”荒海梶鬼(アラウミカジキ)

 

 

「ちょっと!かじきち~…声がバカでか過ぎ

てミナたんが困ってんじゃん!…はぁ、これ

はもう、そこでバカみたいに山になってるお

魚さんたちを頂くしかないな…」

 

 そういって彼女が指差す先にはさっき荒海

君が海から釣り上げた新鮮な魚介類が積まれ

た船舶が、元々あったのであろう位置に収ま

っていた。

 

「なんや、魚が欲しいなら言えば良かったん

に……」

「だって、最初の集まりのときには釣って無

かったし?それに、かじきちはあの後直ぐに

どっか行っちゃったじゃ~んっ!」

 

 ……って、あの後からずっと漁をしてたの

か?すごい体力だ……もはや人間技じゃない

気がする…━━と、これで全員一巡したかな

 

「それじゃあ、持中さん!そろそろ全員のと

ころ回ったし、後はレストランにでも皆を呼

んで行こうよ!……例の話をする為と情報収

集の為に!」

「そうだね!!呼び集めよっか!あ!でも、

もうお互いの電子生徒手帳に互いの機種の連

絡先があるから、直ぐに呼べると思うよ?」

「あっ!!そっか!!それなら手っ取り早い

よね!」

 

 と、持中さんの案に賛同した。

 

「じゃ、そういうことで!うちたちレストラ

ンで待ってるから~!」

「おう!それじゃ、あともう一仕事してから

行くかの!」

「…………まだやるのか……」

 

 荒海君以外の皆にはメールを送信して、そ

の場にいた荒海君にはそのまま口頭で伝えた。

 

そして、それぞれの思惑と希望と祈りと計略

と抗戦が………………

 

 

 

………絶望へと交わる物語の、幕が上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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