機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神 作:申業
敵もコクピットだけを狙って攻撃は出来まい。
隊列を維持しつつ、敵機を追跡する!』
アントンの力強声明に、
周囲のパイロットらが男女問わず大声で答えるものの、
それを聞き、あるいは見ているヴィトー・ルカーニア本人は、
「……悪手だな」
と嘲笑するばかり。続けて、
「去るものは追わずって言葉、知らねぇのか……アイツは」
そう暇そうに鼻の頭を掻いている有り様。
「……教えてあげないんですか?」
そんなフェイの問いかけにも、
「いらねぇよ」
と一蹴する。
「数は与えてある。バカに突撃しても、大抵は上手くいく。
ダメなときゃ……次の手を考えるだけ」
ゴトンというようなやや湿気った音を立てながら、
背中を座椅子に押し当てるルカーニア。
反論するものはなく、フェイなども顔を逸らす程度。
そんな中、
「敵機接近!」
の急報がブリッジ内に響く。
そのとき、ルカーニアは、
「……メドゥーサ様の御成(おな)ァりィ~ってか?」
なぁんて笑っていて……
啄木鳥(きつつき)は食料となる虫を取る際、
先に穴の反対側をつつき、
驚いて穴から虫が出てきたところを食べるという。
さて、少し違うが、啄木鳥よろしく要塞を脅かす《ジズ》の群れに、
このサザエ擬きの要塞からも中に巣食う虫が顔を出す。
ただ、それはただの虫などではなく……
要塞の入口に顔を出したのは、《GAT-399R2/Q ワイルドダガー改》。
《ガイア》と同じ可変機構と、《ガイア》と異なる細身なボディが特徴的な、
この白きモビルスーツを10機余り従え、
一人前に立つは、
『何だよ……あのクモみてぇなヤツは!』
真っ先に声を上げたのは、アレハンドロだった。
クモという喩えは……まあ、あながち間違いではないだろうが、
俺には2匹かの蛇が絡まっているように見えた。
ちなみにだが、ダイは、
『クモ?……ありゃイカかタコだろ……』
なんて呟いてやがった。
それはさておき、姿を現したソイツは、
まずはサザエの陰となって、
こう彼是(あれこれ)と評されるシルエットを見せていたものの、
両手足を広げたX字の体勢から、折り曲げられた歪な台形型となり、
今度は正面を向いたイノシシのごときシルエットと化した。
やがては、あの人工の月が灯りが、コイツを照らし出す。
古き青銅のような黒ずんだブルーグリーンのボディと、
それを守る翼みたいな意匠を施された金色の装甲。
風貌は、
大型モビルアーマー《YMAF-A6BD ザムザザー》を彷彿とさせ、
《ザムザザー》よりはいくらか小さいと見えるが、
肩口より生えるイノシシの牙のごとき黄金の装飾など、
迫力では《ザムザザー》より一段上。
勿論、そんな見た目に怯むザフト兵ではなく、
『……第2陣、前進。目標、大型モビルアーマーを討て!』
なんて叫び声を上げたヴィスコンティに急かされるように、
ざっと20余りの黒き群れが前進。このモビルアーマーに迫る。
うち15機の《ジズ》はやや後方より援護射撃。
残りの5機の《ジ・ゾウム》が接近戦に持ち込む。
しかし、
結論から先に言うが、たどり着けたのは、ほんの1機だけ。
まず、
前足の上に乗っていた高出力・広範囲のビーム砲を撃ち込まれ、
1機が殺られ、1機がシールドごと押し返された。
1発、2発、3発と、《ジズ》らも砲撃を加えるが、
その体の前方に張られた陽電子リフレクターがこれを阻む。
この間に、イノシシの従者ともいうべき《ワイルドダガー》どもが、
3機ばかり高度を上げ、2機ばかり高度を下げ、
残りはイノシシの側につき、その脇腹を守っている。
上に飛んだ《ワイルドダガー》の1機が飛びかかるオオカミのように、
《ジ・ゾウム》の1機に飛びかかり、
喉を噛みきるように、ビームの牙で頭部に食らいつき、撃墜する。
次に飛びかかった別の《ワイルドダガー》は、
《ジ・ゾウム》のビームシールドの上に乗り上げる構図となり、
頭は守ったが、シールドの隙から肩口を斬り裂かれた《ジ・ゾウム》に、
シールドの隙間から撃たれたビームガンの一撃に、
左の足首を撃ち落とされてしまった《ワイルドダガー》。
相討ちといっていい。
イノシシに近付かせなかったという意味では、
《ワイルドダガー》の勝ちだが。
残る1機の《ワイルドダガー》は、
やはり飛びかかったもののタイミングが悪く、
また相手はエースとおぼしき専用カラー(赤系色)の機体。
犬を手懐けるブリーダーのように、1歩ばかし引き下がり、
前屈みになったところを、首をはね、腰を上から突き刺した。
こうして仕留められた《ワイルドダガー》ではあったが、
やはり足止めにはなったといえる。
さて、この間に進めるのは、
残り2機の《ジ・ゾウム》だけなのであるが、
1機は運悪く、イノシシの後ろに控えていた《ワイルドダガー》に、
撃ち殺されてしまっていた。
さて、残った1機。イノシシに近付けた、唯一の《ジ・ゾウム》。
接近中に、敵の砲撃をビームシールドで耐えた上、
撃ち返して、《ワイルドダガー》の1機に手傷を負わせた。
そのまま、ビームサーベルでイノシシを襲うが……