機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神   作:申業

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「手段……か」
『……副長』
ヴァイデフェルトの声が聞こえた。震えていた。
『「今度」は、迷うんですか?』
苦笑せずにはいられなかった。
口にはしなかったが、言わんとする言葉の意図は伺い知れる。
あの『オバマ』でのこと、
そして、その前のグナイゼナウで……
いや、あのときは、聞いていなかったかもしれないが。
「悪いな……心配かけるようなことで」
勿論、敵は待ってはくれないから。
再度透明化した《スタキス》が迫ってきているのは確認していた。
「……あれは、俺がなりたくて、なれなかった未来なんだ」


PHASE-16 終わりなき戦い(6/7)

一気に機体を上昇させる。

徐々に降下していく《ゲルググ改》のボディと空中ですれ違いつつ。

トップギアで前に出る。出る。

『ふくちょ……』

なんて呼びかけたアレハンドロの《アビス》を雑に弾き飛ばし、更に前へ。

当然、

『……ひでぇ』

そう漏らすアレハンドロの声を背中には聞いていたが、

悪いな。今は返答する余裕がないんだと、念じつつまだ前へ。

折れたカーテナを突き出し、《パーヴェル》を一突き。

勿論回避されたが。

『「今」と……言ったな?アスカ』

あえて言うまでもないが、クールカの声である。

「言葉尻つかんで、ケチつける気かよ……カッコ悪いぜ?」

吐いた自分がおかしくなって笑っちまう。

まるでアレハンドロじゃねぇかっての。

『……私が今更、メンツなどに拘るとでも?』

「アンタが振りかざしてる『正義』ってのは、メンツじゃねぇのか?」

『まさか……ただの「夢」よ』

「じゃあ、言うことは変わらねぇ。夢は眠って見ろよ。一人で!!」

剣を再度振る。

折れた剣は、実際のカーテナよろしく切っ先が欠けている。

ほとんど棒切れ同然。リーチも足りない。当たるハズもなく……

避けられ、避けられ、《パーヴェル》はより遠くへ。

「最初だけ……最初だけだ。

最初の攻撃だけ、アンタは持ち前の狙撃で対処した。

ただ、全盛期のアンタなら、もっと遠距離から撃っていたハズだ。

何だ?アンタ……意外と自信がねぇのかよ?

慣れねぇ接近戦なんかしやがって……

プライドを傷つけられるのが怖かったか?

だが、残念だけどよぉ、

アンタは接近戦じゃロクに俺を仕留められなかった。

コクピットの寸前までいったのによ。俺はピンピンしてる。

アンタじゃ俺は殺れない。

ワイリーが……俺の部下を倒したのだって、アンタの実力じゃない。

アーモリー・ワンやグナイゼナウで俺を苦しめたのもアンタじゃない。

ハサンを殺ったのも、マイクを殺ったのも、ジョーンを殺ったのも、

シージーも……全部アンタじゃない。

アンタの力じゃない!!

病気のせいだか、何だかは知らねぇが……

手段を選ばないじゃないだろ?選ぶ余裕がないだけだろ!

……弱いな!アンタ」

切れるだけの啖呵を切った。

話し終わって、喋るだけで息切れしている自分に驚いた。

だのに、

『……そうだな。その通りだ。その通りだ』

クールカは動じない。

『選べというのだろう?私に。手段を……

良いだろう。その通りだ。乗ってやる……

ただ』

ピクリと動いた耳。

『……オマエも、俺を倒せてはいないよ?』

……気付いていない、と言いたかったのだろうが、

はっきり言う気付いていた。

気付いていて、わざと見逃した。

頭上にいた《ウィンダム》は、1機じゃない。

高速で降りてくる更なる1機が俺の側まで来ていたのは、

知っていた。

……接触、そして爆発。

爆音の奥で、確かにクールカの声を聞いた。

『……ドルゴン君、ライフルをくれ』

『はい、どうぞ……隊長、尊敬していますから』

『あぁ……ありがとう』

……煙が視界を遮る。

背後ではギボンの《スタキス》が様子を見ている。

果たして俺は仕留めたのか否かと。

答えは否。

コクピットの中まで煙は入ってきたが、確かに俺は生きている。

「……殺れよ。俺はまだ生きてる」

『あぁ……勿論だ』

煙が少しばかり晴れ、《パーヴェル》の姿がしかと見えた。

その手には《ウィンダム・ハイマニューバ》用のビームライフル。

最近の量産機はスゴいもんだ。随分とゴツい銃を下げてやがる。

引き金を引く。

ライフルより放たれた蒼い光の直線が胸へと迫る。

皮肉なもんだ。俺はヤツを……信じていたのだから。

「……信じてたよ。アンタを」

大したことじゃない。ただ避けたってそれだけ。

ただ、正確無比に放たれたビームの一撃はけして逃さなかった。

直線上に控えていた、ギボンの《スタキス》を。

可哀想に、俺みたいに見えていなかったのだろう、

まともに食らってしまった。

背後で聞こえてくる爆発音。

「……アンタは強かった。いつもね」

装填されていた背中のモビィ・ディックに火がついて、

赤い咆哮が空に向けて轟いた。

正直、よくは見えなかった。

下半身からクールカ機を消し飛ばしたようにしか……

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