機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神   作:申業

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PHASE-16 終わりなき戦い(7/7)

「ハーマン・メルヴィル著、『白鯨』の物語は、

片足を食いちぎられたエイハブが、

モビィ・ディックて白いクジラへと戦いを挑むってぇ筋書きだ。

だがなぁ、原作じゃ生憎(あいにく)エイハブの復讐は敵わない。

乗組員のほとんどを道ずれに、テメェも死んでくだけ。

……終わりだ、『兄さん』。アンタの『復讐』も、ここで」

そう、《パーヴェル》が巻き上げる煙の中へと。

モビィ・ディックに足を消し飛ばされた、といえば……

『ざけんなァァ!!』

ってんで、カトリーナ・スティーヴィンズが下から追い上げてくる。

だが、

『……残念。こっちには俺がいるんだな』

そう飛び出した銛を掴んで、ワイリーが制止する。

「……何だよ。調子のいいヤツめ」

思わず、そう苦笑した。

『「復讐」?フフッ、それは心外だな』

クールカの声が即座に俺の表情を引き締める。

『……これは「夢」だと、言ったろう?

まだ残っているさ。「私の可愛いコたち」が』

聞き覚えのある台詞。嫌なヤツの顔が脳裏を過る。

そう言えばヤツは、「可愛いコたち」が俺に殺られてどうのとか、

言ってやがったが……

「!?」

突然、背後にいた《ジズ》が背中に張り付いてきた。

ヴァイデフェルトの《ジズ》だ。

後ろから抱き締めるように、《ヴェスティージ》の腰を抑える。

「ヴァイデフェルト?何をして……」

【イヒヒヒ】

聞こえるハズのない声がした。

ジェイナス・ビフロンスの、あの下卑た声が。

「……テメェ」

【イヒヒ、前に言っていたわ。このコ。

アナタのお役に立ちたいんだって、そうね。健気でしょ?

だから……使わせてもらったの。

本望なんじゃない?

アナタを終わらせる為、お役に立てるのだから】

嘲笑するような高笑いを背に聞いた。

「……『終わり』?『終わり』だと?

よせよ。そんなもん、ジョークにもならねぇ」

【はぁ?】

「生きる方が戦いだ。

何も分かってねぇのは、オマエの方だよ……馬鹿野郎」

正面ではライフルを構えたクールカ。

照準ぐらいは合わせていたかもしれぬ。

しかし、ヤツに引き金を引くだけの時間はなかった。

突如横から現れた《アビス》のビームサーベルが、

クールカ機を脇腹から貫いたのだから。

『ひとまず、アーモリー・ワンと、グナイゼナウと、

ふたつ借りは返したぜ……おっさん』

てのは、アレハンドロの台詞で。

「大体、俺は一人じゃない。

まだ死ねないんだ……アイツらの為に」

折れたカーテナの刃を、《ジズ》のビーム砲へと突き立てた。

脇の下を通して、逆手に持ち替えて。

「……クールカの夢の中に、俺はいない。

俺がいるのは、いつも現実だけ。

キラ・ヤマトも、アスラン・ザラも、オーブもない、

残酷な現実の中だ。

そして、クールカさん。

アンタはキリストでも、パウロでもなかった」

クールカ機の爆発四散。

色を失い、いくつもの小さな破片となり、海へと。

海面に浮かぶいくつもの鉄屑の中にそれはあった。

恐らく《パーヴェル》の頭部、

それも左目の辺りであろうというものが。

《ダーティ》の顔が頭に浮かんだ。

そうだったな、《ダーティ》は顔の左半分がレドームで、

潰れていたようなものだったな、と。

皮肉なもんだ。まともに分かるパーツがそれだとは。

「……ビフロンス、最後に聞いとくよ。

何でオマエは今更俺の前に現れた?

いや、『オバマ』のときから、ずっと疑問だった。

傭兵のオマエが連中に肩入れして、牢から逃げなくとも、

俺たちはテメェらを罪に問えない。

なのに何故?」

【私に人を想うココロがないとでも?……フフッ】

ビフロンスの声は、それを最後に聞こえなくなり、

掴んでいた《ジズ》の指から力がなくなる。

落ちていくその腕を掴み上げる為、迷わず俺は剣を捨てた。

『すっ、すみません。副長。

何だか、頭がぼうっとして……』

「あぁ……いい。俺も…………誰かの役に立ちたかったんだ」

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