機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神   作:申業

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PHASE-17 分かたれし道(3/7)

「何の冗談だね?ノエルくん」

シーザー・ルチアーノも伊達に多くの修羅場を抜けてきた訳ではなく、

むけられた銃口に、なおも余裕の笑みを浮かべてみせる。

「オートクレール殿下より……連絡を預かっています。

殿下はアナタに兵士に戻れと」

一瞬、ごく一瞬、

歪んだシーザーの顔を、ノエルは見逃さなかった。

「……今更、私にか?」

「はい」

「殿下も相変わらず、ご冗談が過ぎるなぁ……」

シーザーは顔を反らすと、

右手の中指で二重になったアゴの一段目辺りを撫でている。

「私は、アナタを尊敬しています。

モビルスーツパイロットとしての、アナタを」

「……その頃、君は生まれていたのかい?アハハ」

なんて笑いながら、シーザーは少しアゴを引いた。

「リアルタイムで全てを見てきた訳じゃない……訳じゃないですが、

アナタの過去は今でも語り種(ぐさ)だ。

後年アスラン・ザラ、イザーク・ジュールら最高評議会議員の子息が、

軍に入り、活躍した訳だが、

当初の議員らは乗り気ではなかったという。

それを『シーザーがいるから』と交渉材料になった……

それがアナタの最初の活躍。

名家に生まれたアナタが、危険を犯して戦場に立つ必要はなかった」

「……親父の政治活動に利用されただけだ。誇れる経歴じゃあない」

「ホルローギン・バータルも語っている……

アナタが現役なら、カーン・カーァも自分も目ではなかったと」

「バータルは謙虚で口下手なのだ。昔から。

カーン・カーァは……」

不気味な程に延び上がった口角が少しだけ下り、横に延びた。

「……そこまでよく知らん。

同世代だが、ヤツはどうにも陰気でな。ロクに話した覚えもない。

久しぶりに会ったら、あれだろ?

手薄な状況をうまぁ~く突いて、

ルイーズ・ライトナー御一行を暗殺したってんで名を挙げたが、

悪いが、クールゼらの代わりにはどうしてもなれない男だったよ。

女の子連れ回して、楽しそうではあったがな」

シーザーの引き笑い。

「……だが、アナタは違う」

「あぁ、そうだな……私は、なろうとも思わん」

シーザーの顔がまたノエルの方に向いて。

小バカにするみたくニカッと笑みを見せた。

「……第一、私に言わせれば三流だ。

何より、思想を以て行動している。そこがくだらない」

信念なき者に……などとホルローギンには力説したノエルだったが、

ここでは口をつぐんだ。

「理想を語るヤツは、大抵現実を見ていないものよ。

状況は常に変化している。

ある場面では効果的な方法が、別の状況でもそうとは限らない。

思想なんか無意味だ。信念なぞはお荷物なだけ。

重要なのは場数と慣れと度胸だ。あとは運だよ。それだけ。

……ある歴史家が言ったそうだ。

思想とは酒のようだと。人を酩酊(めいてい)させると。

君は、酔い潰れたようなヤツが戦場で生き残れるとでも?」

「では……若き日のアナタはどうだったと言うのです?

今のような……へルマン・ゲーリングのようになったアナタを、

若き英雄だった頃のアナタが見たら、どう思うのでしょうね」

挑発的な文言。

しかし、物言いだけは、

何か論文でも発表するかのごとき冷静さでもって。

「……ゲーリング。フッ、ナチ党の幹部か。

そんなものを持ち出すとは、君も存外古いねぇ。

そこいく君はゲッペルスか?ヘスか?ボルマンか?

誰であったにしろ、

ナチ党に比肩されるようでは、我々脱走兵の行く末も危うい」

こう笑って答えたシーザー・ルチアーノ。

「少なくとも……このままではアナタはゲーリングの二の舞だ。

お選びください。

クールカのような犬死にがしたいか、否かを」

「……愚問を、地でいくようなこと聞きやがって」

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