機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神   作:申業

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間合いを詰めようと前に出た《ジ・ゾウム》。
持ち前の黒いボディが物語る通り、
彼は『高貴なるイタリア人(ロイヤル・イタリアン)』部隊所属。
れっきとしたエリート集団の一員な訳で。
後に映像で確認したときにも、
ビームシールドで頭を守る程度の対応はしていた。
しかも、その手はイノシシ野郎の陽電子リフレクターの隙間を、
的確に狙っており、
あと1秒あればリフレクター発生機の一部を切り下ろし、
2秒あれば本体をも傷つけられたハズだ。
ただし、その1秒すら、イノシシ野郎は与えちゃくれなかった。
野郎の前足がゆっくり持ち上がったかと思えば、
何かがその《ジ・ゾウム》のボディに刺さった……らしい。
この時点では、股の下から垣間見えたイノシシの前足と、
急に上へ押し出され、首を下に折り曲げた《ジ・ゾウム》の後ろ姿しか、
確認出来なかったのだから。
とにかく、この衝撃で動きが止まってしまった《ジ・ゾウム》。 
次の瞬間、敵機に一矢報いえたハズの時間に、
残酷にも行われたのは、《ワイルドダガー》の砲撃。
奇しくも下を向いて肩を落としたように見える《ジ・ゾウム》のボディを、
まずは胸、次は首、そして頭と撃ち抜いて、仕留めた。
イノシシ自体が何をしたのかは、この時は分からず終(じま)い。
《ジズ》の断末魔ともいうべき爆炎爆風の後に、
1歩ばかし引き下がった位置にいてイノシシは、
もう前足を下ろしていた。
パイロットの名前だったのだろう。
『レニー!』
と叫ぶ誰かの声が、空しく響いていた。


PHASE-02 嘆きの破壊者(3/7)

ヴィスコンティという男、生来の育ちのよさからか、

激しく檄を飛ばすというのが得意ではないらしい。

それでも語調は強めで、

『……何を攻めあぐねているのです!ホーク小隊長!』

なんて叫んじゃいるが、やはりどうにも迫力に欠ける。

その名前に苦笑いを禁じ得なかったが、戦術的には誤りではない。

機動力に優れる《ジ・ゾウム》が5機進んで格闘戦に持ち込み、

15機の《ジズ》が「く」の字を描くように並び、

真ん中と左右を斜めから撃ちすくめる陣形自体は悪くない。

ただ、相手が悪い。

高い機動力を誇る《ワイルドダガー》の2機が足下より迫る。

レーダーの性質上、高さが文字以上の情報で説明されない為、

モビルスーツの下を通るように移動する《ワイルドダガー》は、

実際には表示されているのだが、

パッと見では動いているのが分かりにくい。

しかも、黒いボディで視認しにくいときている。

そんな訳で、下を潜るように進んでいた《ワイルドダガー》の2機は、

《ジズ》らの砲撃を受けずに接近し、足の方から噛みついていく。

片方が左の足首に、もう片方は更に飛び上がって胸元に噛みついた。

前者はその力で引っ張り、左側に引き倒せば、

咄嗟に気付き、ビーム砲構えた左隣の《ジズ》の方に倒れて、

運悪く、火のついた砲口が倒れた《ジズ》の脇腹を撃ち抜いてしまった。

もう1匹も、もう1匹で、抱きつくように密着してしまった以上、

周囲の《ジズ》も攻撃するに出来ないといった状態。

それでも、抱きつかれた《ジズ》が両手にビームサーベルを形成、

左右からクロスするように脇腹を貫かんとしたが、

また少し遅かったようで。

突き立てた牙はそのままに、もう一度上に飛び上がり、

胸、首、顎と上がっていき、1本線の切り傷を描く。

爆発を始める《ジズ》。首が後ろ向きに折れて、

《ワイルドダガー》が肩を足場に踏み出して、牙を抜き、飛び去る。

ただ、飛び立つ瞬間に、右に2つ隣の《ジズ》が最早助からないと見て、

味方の《ジズ》ごと砲撃を試みた。

これが少しは功を奏したと見えて、

この《ワイルドダガー》の右の後ろ足の太股と、

左の前足の足首を同時に撃ち抜いてみせたのである。

衝撃で体が45度程回転。隙が出来る。

そこを見逃さず、砲撃して仕留めたのは、

このときショットブラスターシルエットを擁(よう)していた、

うちのダイの《Im/A-P》のビーム砲ガルムであった。

誉めてもよかったのだが、

『ズルッ!』

なんて声を上げたアレハンドロを見て、何も言わないことにした。

そんな中、

『……おい、テメェ』

なんて音声が流れた。ヴィトー・ルカーニアによる。

『オマエだよ、オマエ……

さっきの、《フリーダム》もどきのパイロットォ!』

「……何か?」

『何かじゃねぇよ……ハハッ』

鼻の奥に引っ掛かるような、最早咳のようでもある笑い方。

『見ての通りだ。

うちの臆病者(フィフォーネ)どもは固まっちまいやがった。

ヘビに睨まれたカエル……

いや、メドゥーサに睨まれて石にされちまったってか?』

ルカーニアは笑っている。

「……メドゥーサ?」

なんて俺が聞き返しても、答えてくれない。ただ、

『……テメェが狩れ。あのデカブツを』

と命じるだけで。

拒否できるハズもなく、唇を噛み締めながら、やや小声で、

「了解……しました」

と、報告した。

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