機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神   作:申業

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PHASE-17 分かたれし道(5/7)

「さっきよォ~、何か言わなかったか?」

アレハンドロの問いに、ダイはそ知らぬ顔をした。

「俺の気のせいならいいんだけどさ」

口角を捻りながら、半ば無理矢理に笑みを浮かべるアレハンドロ。

「……疲れてんじゃないのか?」

そう応じたダイの方こそ、かえって爽やかな笑みであった。

「……かもなぁ」

笑い返すアレハンドロであるが、違和感を拭えない。

「そんなことより定例会だが、何か話があったのか?」

「あぁ……」

アレハンドロの顔がパーディに向く。

「……あたしが説明するの?」

「よろしく」

笑うアレハンドロ。

「……アンタ、寝てたもんねぇ?」

首を斜め上に伸ばし、見下ろすよう笑い返すはパーディで。

「ダイの言う通り……疲れてたんだよ?なぁ?」

ダイは無言で笑いがちに頭を振る。

「ほぉ~ら」

「……ダイってば、甘い!」

そうダイを指差したパーディの顔が、

アレハンドロの方へと向き替わるという、ほんの一瞬、

ダイの顔より表情が消える。

そんな彼を他所に進行するアレハンドロとパーディの会話。

「しばらくしたら、また遠征だろ?」

「うん……要するにそういうことだけど」

「はい。補足説明どうぞ」

「……覚えてないって素直に言えし」

こうしてパーディの顔がダイに向いたときには、

もうダイの顔は優しげな微笑に包まれていた。

「ええとね、ダイ……」

──そこからの話を、要約するなら以下の通り。

昼番と夜番とで、立場の違うダイとアレハンドロ。

昼担当のアレハンドロおよびパーディには、先に情報がいっており。

ザフト側はナイルの神の本領たるエジプトへ、

遂に踏み込むことを決定したのである。

配属ORDERは第一にヴィトー・ルカーニア、

第二にオルランドゥ・マッツィーニ、第三がヤコブス・ツァンカル。

マッツィーニが本国を発つ時期は軍内でも不明。ツァンカルも同様。

ルカーニア司令は自軍が本作戦での主力になるものと判断。

モーリス・ゴンドー大隊長が先陣となり、

ハルガ、ついでアシュート、ルクソールを攻略する。

フレイヤ大隊はラノ・ララク大隊の残存戦力と共に第二陣となり、

ハルガ攻略の前後にゴンドーと合流するものとする。

つまり……

「……しばらくはゆっくり出来る訳だな」

「そういうこと」

紅茶を飲みつつ、ダイは静かに頷いて。

「……上手くいくのか?」

「何が?」

「プラント本国を守るマッツィーニはともかく、

ツァンカルは北米だろ?大丈夫なのか?」

ダイの問いに、アレハンドロとパーディとで顔を見合わせて。

「大体、正確なのか?…………その情報は」




「あえて証文のひとつも持ってこいとは言わないでおこう。
いい機会だ。
丁度……南アメリカの日和見連中の相手に疲れていたのでね。
行き先は、アフリカかね?……そうか。
引き継ぐ相手も決まっていよう。違うかね?
それにだな……元々私はオートクレール氏の部下ではない。
何かあれば容赦なく君の責任にさせてもらうよ……」
ルチアーノはその右手をノエルが左肩の上へと置く。
「……ノエルくん」
ニヤリと笑うルチアーノ。
並び立つルチアーノの背は、ノエルより一回りばかり大きいと見え。
「もうひとつだけ……教えていただけますか?」
そうノエルが漏らしたのは、
ルチアーノの後ろ姿がドアの手前まで来ていたときで。
丁度ノエルの正面を写していた姿見の鏡が、
ドアを半ば覆うような位置についたルチアーノの背を、
ノエルと同じぐらいの高さに捉えていたタイミングであった。
「言ってご覧」
「はい……どうしてアナタは脱走兵側についたのです?
弟さんのことを思えばアナタとて……
政権でもそれなりの地位には入られたでしょうに」
フフッというルチアーノの笑い声が聞こえた。
「愚問続きだねぇ……ノエルくん。
君は私という人間をまるで分かっていないとみえる。
そんなものは簡単だ」
ひょっこりと振り向いたルチアーノ。
「……生き残る為だ。どちらが勝ってもな」

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