機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神   作:申業

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「……てかさ。遅くない?」
パーディの問いに、
アレハンドロもダイも同じ顔で首を傾げた。
「ザイロさんよ?」
「……あぁ、確かに見てねぇや」
アレハンドロは納得した様子。
「食べに来てないのか?」
「うん……よくないよね?こーいうの」
ダイは顎を触り、一秒ぐらい口をつぐんだ。
「帰りに見てみる。
どうせ俺はブリッジに行くからな。
ザイロさんの部屋の前は通るだろうから……」
「寝てたら起こしてあげなよ?」
「あぁ……勿論だ」 
「さて、俺らはお昼寝の時間だな?パーディ」
アレハンドロはほくそ笑む。
「そうだけどさ……何?そのキモい顔」
「いやー、ほら。眠れないなら、お伴しますぜぇ?」
「必要ありませんよ。この変態」 
一足先に席を立つパーディ。
「……じゃあ、こうしよう」
アレハンドロの声が、
出口に体を向けたパーディを、顔だけ振り向かせて。
「俺、寝れそうにないからよー、
横で読み聞かせでもしてくれよー、それでどうだ?」
「……ガキか」
吐き捨てるように言い残し、パーディは去って行った。
アレハンドロは、
「聞きたいよなぁ?ダイ。
パンツの色から、アソコの色まで、色々と……」
そう手で口元を隠し、囁くが。
「……聞こえてっから!」
なんてパーディの声が。
「……ほどほどにしとけよ?」
苦笑交じりに告げるダイへ、
「おう」
なんて返事したかと思うと、
アレハンドロは静かに席を発った。
ゆっくり遠退いていく足音に耳をそばだてつつ、
ダイは呟く。
「バカが」 


PHASE-17 分かたれし道(6/7)

警戒していただけあり、アレハンドロには聞こえなかったらしい。

そうアレハンドロには。

「……ダイくん?」

左からそう話しかけてくるヴァイデフェルトにまでは、

注意が及ばなかったと見え、

またごく一瞬だが、表情が変わる。

慌てて腰を上げたダイ。

「先に……ブリッジへ……」

取りつく島も与えず、ダイはそう小走りで去っていく。

ヴァイデフェルトは給食の乗ったおぼんを両手で支えたまま、

離れていく背中をどこか寂しげに見つめていた。

さあ、それからのダイについて。

多少走ったらしく、息に微かな乱れが窺える。

とはいえ、そこは彼も軍人。

ブリッジへと抜ける扉が遠目に見えた頃、

爪先で地を蹴るように出していた足が、

踵(かかと)まで床に接し始める。

同時に起こる接吻するがごとき、

ゴム靴の床にくっつき、そして剥がれる音ども。

そんな音に紛れ、ダイの息は小さくなっていった。

なるほど、やはり高い音の方が耳に響くらしい。

ゴムの音、それから甘ったるい女の声なぞ。

「もう、ヤダァ……」

撫でられた猫のような声だ。

ダイの足が止まる。音は左隣の部屋から聞こえている。

部屋の主は、ザイロ・モンキーベアー。

だが、彼の声は聞こえず、

時折漏れるのは男のものらしき乱れた吐息だけ。

次いで聞こえるは、チュパチュパと口内を鳴らす音。

「もう……お元気なのね」

ダイは女の声に聞き覚えがあった。

いや、まともに話したことはない。

だが、聞いたことはあったという。

……オランの街で、不快そうに顔を反らす上官へ、

纏わりつく女の声を。

「ビンタン……とかいったか」

声が中に聞こえたかは定かでないが、

10秒としないうちにドアが開いて。

汗だくになりながら、軍服を着崩したザイロが飛び出した。

ドアの前にいたダイに、ばつの悪そうな顔をしたザイロ。

彼も彼で逃げるように食堂へと歩いて行った。

「もう……時計見るなり、慌てちゃって……」

ドアの奥には、ビンタンが立っている。

バスタオルで雑に胸から下を隠すも、

膝から指先に至るまで、裸の足が見えている。

浅黒い肌。

汗に濡れて光る足には、

今しがたまで行われた『仕事』の跡が窺える。

「……どこを、見ているの?」

フフッと耳元にて囁く声と、その吐息が、

ダイの目線を足から上へと押し上げたとき、

女の顔はすぐ前にあった。

鼻先と鼻先とが触れ合うほど、ごく近くに。

「もう……食事は済んだの?お兄さん」

「……あぁ」

心なしか声が上擦って。

「それなら、そうね……食後の運動ってことで。

付き合って……くれるわよね?」

華奢な腕を蛇のように絡ませながら、

室内へと誘うビンタン。

ダイに抵抗する様子はなく、

引っ張られるままに中へと入っていく。

こうしてダイの足が踏み入れられ、またドアが閉まる間際、

赤い制服のジャケットが手早く女により脱がされた。

落ちたジャケットの端が閉まるドアの隙間に挟まり、

一部が外へはみ出ていた。

まるで何かを証明するみたいに。

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