機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神 作:申業
パーディの問いに、
アレハンドロもダイも同じ顔で首を傾げた。
「ザイロさんよ?」
「……あぁ、確かに見てねぇや」
アレハンドロは納得した様子。
「食べに来てないのか?」
「うん……よくないよね?こーいうの」
ダイは顎を触り、一秒ぐらい口をつぐんだ。
「帰りに見てみる。
どうせ俺はブリッジに行くからな。
ザイロさんの部屋の前は通るだろうから……」
「寝てたら起こしてあげなよ?」
「あぁ……勿論だ」
「さて、俺らはお昼寝の時間だな?パーディ」
アレハンドロはほくそ笑む。
「そうだけどさ……何?そのキモい顔」
「いやー、ほら。眠れないなら、お伴しますぜぇ?」
「必要ありませんよ。この変態」
一足先に席を立つパーディ。
「……じゃあ、こうしよう」
アレハンドロの声が、
出口に体を向けたパーディを、顔だけ振り向かせて。
「俺、寝れそうにないからよー、
横で読み聞かせでもしてくれよー、それでどうだ?」
「……ガキか」
吐き捨てるように言い残し、パーディは去って行った。
アレハンドロは、
「聞きたいよなぁ?ダイ。
パンツの色から、アソコの色まで、色々と……」
そう手で口元を隠し、囁くが。
「……聞こえてっから!」
なんてパーディの声が。
「……ほどほどにしとけよ?」
苦笑交じりに告げるダイへ、
「おう」
なんて返事したかと思うと、
アレハンドロは静かに席を発った。
ゆっくり遠退いていく足音に耳をそばだてつつ、
ダイは呟く。
「バカが」
警戒していただけあり、アレハンドロには聞こえなかったらしい。
そうアレハンドロには。
「……ダイくん?」
左からそう話しかけてくるヴァイデフェルトにまでは、
注意が及ばなかったと見え、
またごく一瞬だが、表情が変わる。
慌てて腰を上げたダイ。
「先に……ブリッジへ……」
取りつく島も与えず、ダイはそう小走りで去っていく。
ヴァイデフェルトは給食の乗ったおぼんを両手で支えたまま、
離れていく背中をどこか寂しげに見つめていた。
さあ、それからのダイについて。
多少走ったらしく、息に微かな乱れが窺える。
とはいえ、そこは彼も軍人。
ブリッジへと抜ける扉が遠目に見えた頃、
爪先で地を蹴るように出していた足が、
踵(かかと)まで床に接し始める。
同時に起こる接吻するがごとき、
ゴム靴の床にくっつき、そして剥がれる音ども。
そんな音に紛れ、ダイの息は小さくなっていった。
なるほど、やはり高い音の方が耳に響くらしい。
ゴムの音、それから甘ったるい女の声なぞ。
「もう、ヤダァ……」
撫でられた猫のような声だ。
ダイの足が止まる。音は左隣の部屋から聞こえている。
部屋の主は、ザイロ・モンキーベアー。
だが、彼の声は聞こえず、
時折漏れるのは男のものらしき乱れた吐息だけ。
次いで聞こえるは、チュパチュパと口内を鳴らす音。
「もう……お元気なのね」
ダイは女の声に聞き覚えがあった。
いや、まともに話したことはない。
だが、聞いたことはあったという。
……オランの街で、不快そうに顔を反らす上官へ、
纏わりつく女の声を。
「ビンタン……とかいったか」
声が中に聞こえたかは定かでないが、
10秒としないうちにドアが開いて。
汗だくになりながら、軍服を着崩したザイロが飛び出した。
ドアの前にいたダイに、ばつの悪そうな顔をしたザイロ。
彼も彼で逃げるように食堂へと歩いて行った。
「もう……時計見るなり、慌てちゃって……」
ドアの奥には、ビンタンが立っている。
バスタオルで雑に胸から下を隠すも、
膝から指先に至るまで、裸の足が見えている。
浅黒い肌。
汗に濡れて光る足には、
今しがたまで行われた『仕事』の跡が窺える。
「……どこを、見ているの?」
フフッと耳元にて囁く声と、その吐息が、
ダイの目線を足から上へと押し上げたとき、
女の顔はすぐ前にあった。
鼻先と鼻先とが触れ合うほど、ごく近くに。
「もう……食事は済んだの?お兄さん」
「……あぁ」
心なしか声が上擦って。
「それなら、そうね……食後の運動ってことで。
付き合って……くれるわよね?」
華奢な腕を蛇のように絡ませながら、
室内へと誘うビンタン。
ダイに抵抗する様子はなく、
引っ張られるままに中へと入っていく。
こうしてダイの足が踏み入れられ、またドアが閉まる間際、
赤い制服のジャケットが手早く女により脱がされた。
落ちたジャケットの端が閉まるドアの隙間に挟まり、
一部が外へはみ出ていた。
まるで何かを証明するみたいに。