機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神   作:申業

126 / 157
後退するベニナ空港襲撃グループにて、
以下のような会話が聞こえてきていた。
『……敵さん、予想以上にいい反応だな』
『当たり前だ。モーリス・ゴンドーといえば、名将の誉れ高い。
苛烈な訓練で知られる。
奴等は鶏も同然。頭を潰されても、しばらく動く。
深追いは無用……さっさとずらかるぞ!』
『おい!フィリップ!オマエも……』
姿は消せても、音の方は消しきれないとみえて。
ものを引き摺るようなズルズルといった音が漏れ聞こえる。 
そんな中、あるひとつの足音が止んだ。
『フィリップ!……聞いてんのか!?』
そう呼び掛けられた男は、コクピットの中で、
垂れた左の前髪を手で耳の側へ流していた。
「……殿(しんがり)を」
『おい!何を言って!!』
頭上に迫る《ジズ》ら。
《ケトゥ》の蹴った地面が揺れ、音も足下に響いている。
「……足止めは、このフィリップ・フロイにお任せを」
ゆっくりと色づく1機のモビルスーツ。
そのモビルスーツは……


PHASE-18 見えざる脅威(4/7)

さて、場所は変わってトリポリの『フレイヤ』。

「……発進、どうぞ!」

と指示を出すは、ゲルハルダス・ズワルト。

本来ならこの仕事はパーディ、

昼夜の班分けでもヴァイデフェルトが担当の筈だが、

2人ともにブリッジにはいない。

『ダスティン・ホーク、《セイバー》、行きます!』

画面の端に映るは、

飛行機の形態で飛び去ろうとする《セイバー》。

灰色のボディが赤く染まるのが先か、飛び出すの先か。

とにかくすぐに飛び出した赤き《セイバー》に、

赤い肩をした《ジズ》が2機伴う。

そのうち、雲の切れ間に紛れ、彼らの姿は見えなくなった。

「……しばらくゆっくり出来るって聞いてたのに」

ハビエルが苦笑する。

「仕方ないじゃないですか……てか、不謹慎ですよ?」

ルアクも苦笑気味に返す。

「……ルカーニアの私塾にいた頃、すこぉーーし一緒だっただけよ。

ほぼ他人だし。仮面とか付けてる変なヤツだったし。

元・同僚の死に感慨?……ないわよ。んなもん」

ハビエルは艦長席に腰を据え、顎を触りながら話している。

「そんな薄情な……」

ルアクのひきつった笑み。

ただ、ハビエルは手元の資料を見ており、

ルアクには目もくれていない。

「……ま、ここに来て敵さん、攻勢に出てくるとはね」

見ていたものは、数枚組みの紙束。

モビルスーツ、モビルアーマーの情報が記載されている。

パラパラとページをめくる中、

《ウィンダム》、《インフェルノダガー》、《ハイザック》、

《ドヌ・ゾド》と機体の写真が右上に並ぶ。

「今更こんなもん見ても、どうにもなんないか」

めくったページを元に戻すと、

白紙の裏表紙を上にして、肘置きに落とす。

「大体……これ、あれでしょ?

大西洋連邦とか東ユーラシア連邦の機体じゃない?

エジプトの神様ってのは、

独自にモビルスーツを開発してるって噂だし……

これからの戦いに、どこまで役に立つか……」

言葉を返す者はない。ルアクはゆっくり顔を反らした。

一呼吸あって、

『……自分も行きます。発射シークエンスを!』

そんなダイの声が聞かれた。

「……全システム、オールグリーン。ダイ機、発進どうぞ」

ゲルハルダスは動じない。冷静に指示を出す。

先程、《セイバー》を映していた画面には、

今は白き《Im/A-P》が。

『ダイ・フーディーニ……《インパルス》、出る』

射出する音がやけに大きく聞こえた。

自然、衆目は画面の方に向く。

そんな中、突然背後のドアが開けば、どうなるか。

あえて語るまでもなく。

「……あら、ダイくん。もう行っちゃったんだぁ」

入ってきた女はそう笑っていた。

首筋からうっすら流れる汗、着崩れて露出した肩。

「ビンタン……さん……」

ルアクが呼ぶ名前。

ハビエルは顔を向き直り、背中で隠しつつ顔を歪めた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。