機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神 作:申業
(ユウ・アカエ……東洋人か?珍しい……)
ダスティンは見定めていた。
距離を取りつつ、サブマシンガンを乱射する目前の《ドミンゴ》を。
『たっ、隊長ォ!!』
「取り乱すなよ。明日は、いや次は我が身だ」
ビームシールドを展開したまま、味方の《ジズ》を背中に隠す。
「……接近戦は、苦手なのになぁ」
苦笑するダスティンだが、敵はお構い無し。
シールドを展開する腕を、突き出しつつも前屈み、
被弾面積を小さくする。鉄腕○トムみたいに。
シールドの奥に隠した逆手にはサーベルが握られている。
当人は隠しているつもりらしいが……
「……見えて、いるよ」
《セイバー》は前に出た。シールドは張られたまま。
『!?』
体当たりというべきか。ぶつかり合うシールドとシールド。
つんのめったのは、前に出た《セイバー》の方で。
体当たりへ一瞬早く気付いた《ドミンゴ》はギリギリで少し引き、
衝撃を和らげていた。
断頭台がごとく、振り下ろされる《ドミンゴ》のビームサーベル。
シールドを傘に、これに耐えた《セイバー》は、
敵のシールドの隙間から、顔のビームガンを撃ち込んだ。
致命傷になどなりはしない。
手足に小さなアザを幾つもつくっただけで。
「だから……嫌って言ったじゃん?僕」
更に飛んでくる《ドミンゴ》のムチ。
脇腹を抉りそうであったが、ギリギリで《セイバー》は避ける。
《セイバー》はそのまま結構退いた。
《ドミンゴ》はムチを回収しつつ、それを眺めていた。
生まれる間隙、見逃すダスティンの部下ではなかった。
『当たれェェ!』
《セイバー》の後方より、《ジズ》がビームを撃ち込めば、
回避までは間に合わなかった。
シールドで押さえる……が、それでも完全には殺しきれない。
勢いがシールドを押し出し、内側に逸れた腕を抜いて、
肩に風穴空けてみせた。穴の中でビリビリ電流が走ってみえる。
「ナイスアシスト」
そう言うダスティンは退避する。《ジズ》もこれに続く。
今度は《ドミンゴ》も前に出たが。
《セイバー》の逃げ足が思いの外、早かった。
《ジズ》が2、3秒遅れて追い付くと、
その肩を肘置代わりに構えた《セイバー》がスナイプ。
1射目が足を、2射目が右胸を、3射目で例の錣をと射抜いていた。
だが、
『お見事です』
「いや……致命傷には浅すぎる」
そう漏らす通り、《ドミンゴ》にはさしたるダメージはないらしい。
堂々たる佇まいである。
「義兄さんやダイくんは……これを相手にしたのか」
『隊長?』
「……いや、大したことはないか」
《ドミンゴ》の体勢がまた前屈みになる。
今度は盾の上から角のようにビームサーベルを突き出していた。
腕を引き絞る。突きで行くとみえた。
「きっと……ホルローギン・バータルは……」
ビームライフルを構える《セイバー》。そして……
「……もっと強かった」
飛び出して前に出た瞬間、《セイバー》は引き金を引いた。
シールドの僅かの隙間を抜いて、ビームは顔に命中。
首を飛ばされた《ドミンゴ》は衝撃もあって、身体が仰け反った。
そこを見逃さず、飛び付く《セイバー》。
右足で思いっきりシールドを踏みつけた。
踏みつけジャンプし、空中で馬乗りになり、
またシールドの間から胸の真ん中をひと突きにした。
《ドミンゴ》もお返しとばかりに、サーベルの刃を突き立てるが、
顔の右半分を削っただけ。
続く二度目の踏みつけと、爆発を受け、落ちていった。
「……僕の勝ちってことになるかな?お嬢さん」
「……くしゅん」
男はそう漏れ出たくしゃみを、両手で隠した。
「風邪か?ホルローギン」
「いえ…………
というか、コーディネイターって風邪ひくんですか?」
「……………………ひかないかな」
オートクレールは笑いながら、例によって爪を研いでいた。
「誰かが噂しているのかもわかりませんよ?」
プレイアスが微笑みがちにコーヒーをホルローギンのカップへ。
「私もまだまだモテますかな」
「ホルローギン様はお優しいですから」
「……それはどうも」
ホルローギンはただでさえ細い目を更に細めて、頭を垂れた。
「ナイルの神かもな」
オートクレールが手を止め、呟く。
「……ようやく重い腰を上げたというじゃないか」
「らしいですな」
ホルローギンが同調する。
「我々もそろそろ……身の振り方を考えるべきでは?」
ゆっくり爪切りをテーブルに置いたオートクレール。
「……身の振り方、か」