機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神   作:申業

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元々赤いユウの《ドミンゴ》がなお赤い炎に包まれる中、
彼を乗せた白き《Im/A-P》が、
ダスティンの《セイバー》の背後へと付ける。
「ダイ・フーディーニ、遅れて申し訳……」
などと語るダイ。
ただ当のダスティンは、
『あぁ……大丈夫だけど……』
なんて上の空という様子であった。
「……何かあったのか?」
『下だよ、下……見れば分かると思うが……』
言われるままに、モニター画面の下部を確認すると……
「……あれは」
『ボクはあのとき戦ってないんだが、君は戦ったんだっけ?
……アイツ。あの化け物に』


PHASE-19 最終調整(1/7)

『おい!ユウちゃんが!』

そう聞こえた仲間の声に、

彼──フィリップ・フロイは、

唇を噛み締めたのみで、声までは出さなかった。

『いいから!ずらかるぞ!!』

敵は前へ。

姿は見えないが、《ケトゥ》らしき足跡が遠方より列を為す。

足音は次第に近付いている。

そして今しがた、足跡が途切れ、地面を蹴る音がした。

伸びる首の先、小さな牙がようやく現れる。

その首はフロイの《ドミンゴ》の頭へ迫っていた。

「……読めた」

上体反らし、いやもっとも小さな動きだったか。

《ドミンゴ》は首をゆっくり後ろに引いた。

いや、それでも《ケトゥ》の牙を完全には回避し切れなかった。

牙が頬に2つの切り傷を残す。

ただし、《ケトゥ》側も多少の誤算があったとみえて……

腰の部分で構えていたビームサーベルが刺さっていた。

《ケトゥ》の腹に深く。

ミラージュコロイドが解除され、首長き獣は力無く倒れ込む。

倒れる身体から避けるように、2、3歩後ずさる《ドミンゴ》。

「……アポフィス隊長、指示を」

フロイは静かに、マイクへ口を寄せた。

「……隊長?」

返事はない。

代わりに返ってきたのは、海上にて巻き起こる爆発音。

画面のレーダーを確認すると、

後方に控えていた1隻の戦艦の情報が消失した。

続いて味方の、

『うわああああ!』

とか、

『くっ、来るなぁ!!』

という悲鳴まで聞こえてくる。

フロイは動揺しつつも、冷静にレーダーを確認していた。

後方で味方の《インフェルノダガー》を次々切り捨てている、

《GAT-X142》なる型式番号のモビルスーツ。

フロイはその数字だけで相手の立場を察していた。

「……裏切っていたという話は本当だったのか」

後方より迫る敵の刃に、振り返る《ドミンゴ》。

ビームシールドで身を守るが、守り切れない。

素早く下から上へ振るわれた刃が動きを止めた瞬間、

細い首に一本の線が出来たかと思うと、

ボロンと《ドミンゴ》の首から上が後ろへ落ちた。

フロイは、またも3歩ばかし後ずさった。

「たしか……『優しくなければ生きている資格はない』、

てのが貴方の口癖だったんじゃないんですか?

……レェ・アモン特任大佐」

《GAT-X142 マッド》。今日も風にマントが揺らいで。

『その前がある……』

フゥッと吐き出す吐息が聞こえた。

瞬時にフロイは理解した。

(タバコか……)

『……「タフでなければ生きていけない」ってな。

フィリップ。オマエと同じ名前をした、探偵の台詞だ』

「つまり、生きていけないから裏切ったと?」

『俺は傭兵。裏切りも何も……』

後ずさりつつ、サブマシンガンに手をかけるフロイ。

『……最初から誰の味方も敵もねぇ』

《ドミンゴ》が3歩、ついで4歩目まで足をかけたとき、

《マッド》は1歩で間合いを詰めてしまった。

そしていつの間にやら振り下ろされた刃が、

2丁のサブマシンガンから銃口を切り落としていた。

更に気付けば《ドミンゴ》の左足には、

深々と日本刀型のビームサーベルが刺さっていた。

「ハァ、ハァ、ハァ……」

フロイの息は乱れていた。

『……一撃で殺られなかったか。

流石にセベク・アガレス直属の部下、大したもんだな』

なんて呑気に、タバコ吹かせるアモンであった。

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