機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神 作:申業
「……何で味方同士で潰し合ってるの?あれ」
機体のビームライフルを背中に戻しつつ、呟いたダスティン。
「ボクらの味方……ってことはなさそうだけれど。
…………どう思うよ?ダ……」
『今なら、あるいは……』
「……うん?」
ゆっくり顔を上げたダスティン。
背中を映したモニター画面には、《Im/A-P》の姿。
その手には、ビームサーベルが。
『今なら討てる。シージーの仇……』
ダイのそんな一言に、ダスティンの口角が固まった。
『だっ、ダイさん?』
頓狂な声を上げたダスティンの部下。
「やめときなよ。ダイ。
気持ちは……わからないじゃないが。
漁夫の利に漬け込もうたって、相手が悪い。
ヤツはレェ・アモン。義兄さんよりも強いかもしれない男だ」
『……だからこそ、ですよ?ホーク「小隊長」』
敬語敬称により発せられたダイの台詞が、
ダスティンの表情をなおも歪めた。
『倒しておかなくては…………俺が、この手で!!』
「……やめとけよ!ダイ!死んじゃうぞ!?」
『死ぬのが怖くて、軍人なんかやってられるか!!!』
《Im/A-P》の背にて、燃え上がる炎と、その音と。
『ああっ!』
なんて後方の《ジズ》が手を伸ばすが、1歩遠い。
ダイが動く。ビームサーベルを振り上げて。
『ぶっ殺す!』
そう宣言と共に、前に出たダイを、
ダスティンはシールド片手にぶつかり、力づくで制止する。
『ダスティン・ホーク!オマエ!』
「そっちのがボクは好きだな。ダイ!」
『……邪魔するなら、アンタといえど!』
ビームサーベルを振り上げる。
その振り上げた右腕を、掴む《セイバー》の左手。
「大丈夫……もう止めたりはしないから」
ダスティンは笑った。少し悲しげに。
「だが、一応……ボクの方が上官であるから、
命令……いや、提案を!させてもらいたいッ!」
『えっ!?』
「スルーズ!……君も聞いてくれ。
いいか?無策で突っ込むには、相手が悪い。
ここはひとつ……ボクの案でいこう!……聞いてくれるね?」
ダイは、うんとは言わなかったし、
画面に映るダイの顔は、頷くこともしなかった。
ただ、ダスティンの手を振りほどくと、
その刃を背に戻すことでもって、同調を示したのである。
「いいか?……ヤツに接近戦で挑んでも勝ち目はない。
が、遠距離からチマチマ射撃したって勝てない。
何でか知らないけど当たらないし、
何よりすぐ間合いを詰められるに決まってる」
『……チッ』
ダイのそれは、小さな舌打ちではあったけれど、
ダスティンの耳に確かに届いた。
「でも……弱点がないって、訳でもなさげ」
「……上の奴等。
何だか知らんねぇが、揉めてやがるな」
下でレェ・アモンはそう半笑い。
「大方、俺の首が欲しいと見える。
……いいのか?フィリップ。手柄を横取りされるぞ?」
フロイは荒い息を上げながら、苦笑がちに応じる。
『殺れるもんなら……もうとっくに……』
《マッド》が1歩前に出ると、
フロイの《ドミンゴ》は2歩も3歩も後退する。
『……ナイルの神直属の部下とか、エースパイロットとか、
そんな肩書きが空しくなる。
大人と子ども、あるいはそれ以上……
「独弧求敗」の二つ名に、偽りなしと』
ムーサーから貰ったものだろうか?
アモンは葉巻を咥えており、モクを口から外しもせずに、
上下の歯と歯の隙間から、煙を漏らしている。
「……オマエは弱くはない。殺すには惜しい。
一時期とはいえ、同じ陣営にいた者として言うぞ。
投降しろ。命は助けてやる」
銃口なきサブマシンガンを胸に構えていた、
《ドミンゴ》の両腕が降りる。
手から離れるマシンガン2丁。
『ハハッ……その通りですね……』
傷ついた左足の膝が地に触れる。
「……意外だな」
左手の指2本で口からゆっくり葉巻を抜き出す。
ほぼ同時に、《マッド》の足が1歩、前に出……
出た瞬間、《ドミンゴ》の左手が、
足に刺さったビームサーベルを引き抜くと、
そのまま一気に振り上げた。
……が、
「オマエがそんな芸当をやるとは思わなかった」
サーベルが《マッド》の体に傷をつけることはなく、
アモンが呟いた頃には、
握った拳ごと、ビームサーベルが宙を待っていた。
「……屈んだとき、咄嗟に膝を隠そうとしたな。
それで分かった」
『よく……お気付きで……』