機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神   作:申業

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「よかった……とは、言えませんね」
面会室を出たところで、ヴァイデフェルトがそんなことを呟いた。
カトリーナ・スタン相手の尋問が終わった直後のこと。
横には俺がいた。
「……いや、よかった。話してくれただけな」
着なれないスーツのポケットに手を突っ込み、
俺は何となく斜め上の方を向いていた。
「俺たちは必要な情報を得て……
そして、アイツ自身も助命嘆願の口実になった。
これでよかったんだよ。これで」
ヴァイデフェルトは無言のまま、俺の背中を見つめていた。
いや、見えていた訳ではないが、視線を感じていた。
ヴァイデフェルトは1歩後ろから、俺の後を追うように歩いていた。
「……オマエは俺を、酷いヤツだと思うか?」
立ち止まり、振り返り、問う。
ヴァイデフェルトは困惑した様子で、目を逸らした。
「俺は思う」
苦笑した俺を、ヴァイデフェルトは窺うように見上げた。
「……追い詰められた人間に、
さしてアテにならない条件を振りかざして、口を割らせた。
酷いヤツだ。それは間違いない」
「そんなことは……」
ただし、ヴァイデフェルトも微妙な表情。
「オマエにも苦労をかけた」
「いえ」
ヴァイデフェルトが目を合わせない。
どこか怯えた表情で、忙しなく視線を移ろわせる。
「俺の役に立ちたいとか何とか言ってたっけか……」
言うに事欠いて出てきた台詞がこれだった。
後頭部なんか掻きながら。
「……俺はオマエの役に立ててるか?ヴァイデフェルト」
ヴァイデフェルトは答えなかった。
悩んでいたのだろう。返答を選んでいたのだろう。
だが、薄情な俺はそれを待てなかった。
「レェ・アモンと戦ったとき、分かったろ?
俺より強いヤツはいる。
あのジェイナス・ビフロンスですら、
ネイキッド・アームズとかいう、強化人間集団では最弱らしい。
つまりは、ナイルの神ってヤツも、俺より強いかもしれない」
「それは……」


PHASE-19 最終調整(6/7)

そんな話をしている頃には、

両断された《セイバー》と、

それを網状のものの上へ乗せて運ぶ他の部隊所属の《ジズ》2機、

無傷の《Im/A-P》、

それから敵機《ドミンゴ》の残骸を抱くスルーズの《ジズ》。

彼らが戦艦《フレイヤ》の上空に迫っていた。

モビルスーツデッキがゆっくり開き、中からレールが出てくる。

先にレールの上に足をつけたのは《Im/A-P》。

次いで《ジズ》2機と《セイバー》が続けて入った。

スルーズが入ったのは、その後のことで。

モビルスーツデッキの中は例によって人でごった返していた。

入り口の方には、本来なら寝ている時間の、

アレハンドロやらパーディの姿が。

細い眼で見つめながら、欠伸なぞするパーディに対して、

その右に立つアレハンドロは一切そんな様子はなく、

顔色を窺うように表情を確認したパーディは、

男の両目の下についた少しばかりのクマをも見逃さなかった。

「アレハンドロ、アンタ……」

「……へ?」

アレハンドロとパーディ、互いの目と目とが合ったのと同時、

《セイバー》のコクピットから、

さながら瓦礫より這い出すように、血まみれのダスティンが。

医療班がその場に駆け寄り、慌てて額に包帯を巻いていく。

欠伸を隠す為、覆った筈のパーディの手が口元を離れない。

「あれ……」

「……あぁ」

両肩を抱かれ、運ばれいくダスティン。

「大丈夫……大丈夫だよ……」

そう漏らすダスティンの声は割に響いた。

……無言で見つめる観衆に対して。

続いて、別の足音が聴衆の耳と目線を動かした。

《Im/A-P》より降りてきた、ダイのものである。

「大丈夫ですか?ダイさん」

そう近付き、真っ先に告げるはラグネル・サンマルティン。

ダイは目も合わさず、小声で、

「大丈夫だ」

の一言を残し、そそくさ出口へと歩いていく。

出口、そうアレハンドロとパーディの側へ。

「おかえり、ダイ」

そう微笑むパーディに対しても、

「あぁ……」

などと言葉を濁し、目さえ合わせないダイ。

そんなダイでも肩を叩かれれば、目線は上がる。

肩に置かれていたのはアレハンドロの手。

目が合うと、ニカッと笑ったアレハンドロ。

「ケガもなきゃ、機体も無傷だってのに、随分な顔じゃんか~?

どうしたよ?ダイ」

「……すまんな。後で話す。今は……疲れていてな」

ダイは目を反らしがちに答えた。

「通してくれ」

「……あぁ、ごめんね」

なんて言って道を譲ったのはパーディで。

アレハンドロの方は首を傾げながら、

歩いていくダイの丸まった背中を見つめていた。

「アイツ……最近元気ねーなぁ……」

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