機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神 作:申業
日本は石川県七尾市中島市民センター駐車場にて。
作業員が100匹以上のオタマジャクシが落ちていたのを発見。
この出来事を地元の新聞社が翌5日に報道すると、
日本中から反響があった。
似たような事例は、アメリカやギリシャにもある。
これらはファフロッキー現象と呼ばれ、
竜巻が原因とか、鳥が運んだとか、様々言われているが、
果たして……
映画『ジョーズ』のアメリカ初公開日にあたる6月20日、
ナイルの神が拠点を置くクロコディロポリスをはじめ、
同時数ヵ所にてカエルが降るという怪奇現象に見舞われた……
本来なら中南米、流入するといえど、
東南アジア、オセアニアにしかいないオオヒキガエルが、
数百匹あまりもエジプトに現れるという緊急事態。
アルカロイド系の高い毒性を持つこのカエル。
大量発生は各地で悪臭騒ぎを引き起こしたという。
そして、一般大衆はもうひとつ、噂することとなる。
かの旧約聖書に登場する一節、エジプトを襲ったという十の災いを……
かつてファイユームと呼ばれた、このオアシス都市は、
かの神に魅入られて以来、急速な発展を遂げていたものであるが、
中心の一部を除けば、外はまだ長閑な田舎町が広がっていた。
新設の空港の側も、背の低い草がいくらも繁っていた。
「なるほど、臭いハズだわなぁ……」
そう漏らしたのは、野球帽を目深に被ったの男。
耳の上、アフロヘアーがヘッドホンのようにはみ出していた。
そして着ていたタンクトップのシャツの背には、
タトゥー……いや、彫り物がされている。
そして、片足しかない男だった。
男が立っていたのは、とある戦艦のブリッジの上で。
柵に手をかけ、傍らには松葉杖が置かれている。
数十メートル下には、草木に紛れて、無数のカエルたちが。
「……カエルまみれだ」
ゆっくり振り返る男。その視線の先には1人の女でいて。
「見ない方がいいぜ。気持ちわりぃ」
杖に手をかける男。
「……誰だか知らねぇが、無駄に手の込んだマネをしやがる」
杖を小脇に挟み、女の方へ一歩近付いた。
「一体どこにそんな時間と、やるだけの人材がいたのか……」
女はただ黙っていた。腕を組んで、向かいの男を見ている。
尼僧らしい。スキンヘッドの女だ。
「……いたのかねぇ。裏切り者でもよ」
1歩、2歩と前に出る男。そして動かぬ女。
地を叩く杖がコツコツと割に大きな音を響かせている。
「明けの砂漠……ムーサーとかいう男は何を考えているのか……
ロクな戦力も揃っていないクセに、
よく抵抗なんかと思っていたがなぁ…………
まさか、レェ・アモンなんて化け物従えてたとはなぁ」
「……それとこれと、何の関係が?」
「いや、だからよ。
いてもおかしくねぇんじゃないかっての。
裏切り者とかがよ。それで、やったんじゃないかってな」
上を向きながら歩く男。目の前には女と、分厚い鉄の扉。
その足が女の脇を抜けて、1歩だか2歩だか前に出たとき、
「……別に、明けの砂漠がやったとは限らないんじゃなくて?」
そう女が呟いた。
男の顔など見もせず、また男の方も見返したりせずに。
「ザフトでも、理屈自体は変わらないだろ?
いや、確かにそうだな。ザフトのが自然か」
「人為とも限らないけどな」
「言い出したの、オマエじゃねぇか?」
そう笑いながら、振り返る男。
その背後で鉄の扉が開き、
振り返ったハズの男が再度向き直ることになる。
扉へと向いた2つの眼が見たのは……
「……えっ?」
ゴルフクラブだった。
黒い背をしたドライバーのヘッドが、男の目線と同じ位置に……
あったと認識できたのだろうか?
即座に振り下ろされたこの鉄の塊は、
容赦なく、男の顔にめり込んだ。
脇から抜ける松葉杖。力を失い、後ろに倒れる体。
その肉体が地面に叩きつけられる音と共に、
吹き出した血がベチャリと床を濡らし、
また倒れた肉体をいくらか滑らせた。
「……よう。ジンファ」
そう呼ぶ声に吊られ、薄れいく意識の中で男が見たのは、
鮫のように鋭い歯が並び、大きく開いた口だった。
「な……んだよ……ブッ…………ブルースッ」
返事はなかった。
聞こえてくるのは鼻唄交じりにドライバーを振る音だけ。
「どう……し……」
次は言わせてももらえなかった。
脳天をフルスイングで叩きつけたドライバー。
男の体は2、3転、転がって、柵へと引っ掛かるまで押し出された。
血が転々と続いている。
「……殺したら証言が取れないだろ?ブルース」
女がそう咎めるが……
「いいじゃねぇか、パー。俺が全員ブッ殺せば、済む話だ」