機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神   作:申業

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PHASE-20 砂の海原(2/7)

「……ハッ!」

上半身を起こす。

悪夢にでも魘(うな)されていたというのか?

顔は汗に濡れていた。

だが起きたら起きたで、彼を痛みが襲った。

「ウッ」

と歯を噛み合わせて、頭を押さえる。

巻かれた包帯には血の跡らしき暗褐色の染みが。

「まだ起きちゃダメですよ?ダスティン小隊長」

そう駆け寄るナース。彼の右側へ。

「どれぐらい……」

「?」

ナースが首を傾げる。

「……寝ていたのかな?」

「はい……半日ほど」

食い縛った口が緩み、口角が上がる。

「こういうのって……2、3日とかだったりしない?普通」

「……そのまま、寝ていた方がよかったかもな。そんぐらい」

そう応じる声に吊られて顔を上げたダスティン。

正面、向かいのベッドと窓ガラスを背に立っていたのは俺だった。

だが、当のダスティンは俺を見ていたというよりは、

その背後の窓ガラス、

外に広がる街並みが流れていく方に目がいっていたらしかった。

「飛んでいるみたいですが……」

目を合わせてくるダスティン。

「……どこへ、向かっているんですか?」

ここでナースは退室。

「ひとまずは、トブルクって街だ。ここを落とす。

トライン、ラドクリフ、シゲルの三大隊が18日付けで入り、

包囲網を張っている。

今のところ、大きな戦いは起きてない。

俺たちの到着を待って、一気に攻め落とすつもりらしい」

「なるほど」

そう話しながら、ダスティンは頬杖をつこうとして、

シーツから出した腕に、巻かれた包帯を目視する。

「……オマエは休んでおけ」

「言うと思いましたけど、それは従えません」

ダスティンは笑う。

「……大した戦いにはならない。今は少しでも休んどけ。

そのうち、嫌でも戦うことになる」

「部下に示しが着かないっていうヤツですよ」

腕組みしてみせるダスティンだが、

包帯巻かれた方の手が置かれた際に、

「あ、痛ッ」

なんと小声で漏らしてやがった。

笑いたいのを口元押さえて隠した。

「くだらねぇとこでメンツなんか気にすんなよ。

……休んどけ。いいから」

腕をほどき、またシーツの中へ。

「……義兄さんこそ、休んでないんじゃないですか?連戦続きで」

「無休て訳じゃない……

俺だって寝てるし、クールカ戦後1週間は戦いもなかったからな。

実質、連休だ。サラリーマンなら大型連休の部類だぜ?」

「その間だって……警備やら書類作成やら、あったでしょうに」

返す言葉がなく、何となく目を反らした。

「……最近ゆっくりお話してなかったでしょう?

それが何よりの証明ですよ」

「何だそりゃ」

「大事なことですよ?僕だって……」

そこから妙な間があった。

「……心配ですから」

誰が対象かは明言しなかった。

「ルナか?」

俺の手前、はっきりとは言いにくかったのだろう。

静かにコクりと頷いた。

「俺も……たまには会いたくなるさ。アイツとは長い付き合いだ」

今度は俺が腕を組んでいた。

少し笑って目線を合わせたダスティン。

「からのふくえ……」

「ねぇよ。あるなら離婚なんかしてねぇ」

「……残念」

包帯を巻いていない方の手で顔を覆う。

「部外者から言わせると不思議でならないんですよ。

姉さんも義兄さんも、新しいパートナーつくらないの」

「ルナがどうかは知らないが……まあ、色々あるんだよ、色々」

そう漏らしたときだった。

このフネ、《フレイヤ》が大きく揺れたのである。

それはもうその場に立っていられないほどに。

その場にあったベッドの手すりを俺の手が掴んだ直後、

ダスティンが呟いた。

「……外も色々ありそうで」




当の《フレイヤ》ブリッジでは。
『ダイ・フーディーニ……《インパルス》、出る』
声に力は感じなかった。聞いていたパーディの顔がやや歪む。
続くアレハンドロが、
『アレハンドロ・フンボルト、《アビス》で行っちゃうよ!』
そう調子よく笑っていたのが、尚更ダイの悲痛さを引き立てる。
だが、そんなことを気にかける余裕はない。
「敵機!本艦の真下を高速で移動中!」
探索担当のルアクが声を震わせ叫んでいる。
「宇宙でない分、エネルギーの消費が激しくなりますが……
ドラグーン……使いますか?」
電子戦担当のゲルハルダスが問い、
「使いな!沈められちゃ世話ないよ!」
副艦長ハビエルが答える。
「面舵いっぱーい!」
操舵手のザイロ・モンキーベアーが声を張る。
それでも回避し切れず、砲撃を被る。
ダメージはそれほどではないと見えるが、衝撃は凄まじく、
右側に大きく揺れた。
「たった1機のモビルスーツにィ!何苦戦してんのよォォ!!」
艦長ルシア・アルメイダの叫びである。
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