機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神   作:申業

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昼下がりだったろう。クロコディロポリスにて。
ナイルの神が勢力の旗艦《ネイト》は同地に滞在中。
中の休憩室に腰を下ろしていたのは、
黒いクーフィーヤ(頭巾)に身を包む、金髪碧眼の白人紳士である。
「……オートゥール少佐」
そう紳士の前に、頭を下げる一人の若者がいた。
ひと纏まりだけ、垂れて鼻の頭を覆った前髪。その髪は銀鼠色。
この髪に隠れつつも、茶色い眼がかの紳士の側から垣間見えていた。
「おおよそ話は分かった。
アモン氏の離反と反攻という緊急事態の中、
よくぞ生きてかえってきたと、称賛すべきだろう。
ご苦労だった……フロイ」
青年──フィリップ・フロイはなおも頭を下げたまま。
「ひとまず、顔を上げてくれ。フロイ」
そう言われてようやく、重い頭を緩やかに持ち上げたフロイ。
「少し前に連絡があってな。
トブルクにザフトの新造艦が近付いていると……」
「……トブルクには、どなたが?」
「ノーマンが先程ここを絶ち、向かった」
フロイは無言のまま、やや怪訝な表情を浮かべていた。
「不服か?」
「いえ、ただ……血の雨が、降るだろうな、と」


PHASE-20 砂の海原(3/7)

『ラグネル・サンマルティン、《ガイア》、出ます』

その声を背中に聞きながら、

アレハンドロの《アビス》、ダイの《Im/A-P》が、

《フレイヤ》上に接地する。

「……ここからじゃ、何も見えねぇな」

アレハンドロの漏らす声。

『この砂漠だ……

直接足を踏み入れれば、歩くより先に体が沈む』

モニター画面に映るダイが、そんなことをアレハンドロへ。

「じゃあ、ラクダでも連れて来るか?」

『……モビルスーツがラクダに乗れるか』

文句は言いつつも、顔は真面目なアレハンドロ。

レーダーとカメラとを交互に見比べ、敵の位置を確認している。

前者はともかく、後者は砂煙に邪魔されて、

座標上確認できる位置に、敵機の姿は見つけられない。

「一体、どこに……」

間もなく、

ラグネルの《ガイア》がモビルスーツデッキより飛び降りた。

4本足を操り、砂漠を走る《ガイア》。

「俺もあっちにしとくんだったよ」

『安心しろ。

他隊と合流できれば《ケトゥ》にでも乗せてもらえ……』

ダイが言いかけた瞬間に、《ガイア》が視界から消え、

ついでレーダーからも反応が消えた。

「おい……これェェ!?」

『くッ』

先に動いたのは、意外にもダイの方だった。

砂煙の方へ赤く太いビーム砲を撃ち込んだ。

高出力のビーム砲が砂を更に更に巻き上げて、

その一部は《フレイヤ》のみならず、

《アビス》にも《Im/A-P》にも砂がかかった。

「……嫌なシャワーだな」

漏らしたアレハンドロが一瞬だけ見た。

鮫(さめ)か鯱(しゃち)か、そんな類の顔をした黒い敵が、

獲物を咥えるように力なき灰色の《ガイア》を噛んでいた、

そんな姿を。

「おい!ダイ!!あれェェ!!!」

『あぁ、分かって……』

最後まで言わせてもらえなかった。

跳ねるように飛び上がった、この鮫。

今度はダイの《Im/A-P》へと噛みついた。

右腕、右肩を食い千切る。

構えていたビーム砲ガルムが切断されて、

《フレイヤ》の甲板に残される中、

ダイを乗せた本体は咥えられて、砂へと引き摺り込まれていく……

「おい!見たかよ?《フレイヤ》ァァ!!

今!今!ダイが砂の中へ…………」

『見えてるって!アレハンドロ!』

声を上げたのはパーディ。

「……なぁ、パーディ!砂って、海みたいだよな」

『なに……言ってんの?』

パーディは気付いていなかったが、ハビエルは違った。

『早まるんじゃないよ!アレハンドロ!

もうすぐ副長がそっち行くから、それまで待……』

アレハンドロは言い終わるまでさえ待てなかった。

空中で変身を遂げたモビルアーマー形態の《アビス》は、

砂の中へと飛び込んでいく。

「さあ……鬼が出るか?蛇が出るか?

ヘヘッ、やっぱり待ってるなんざ性に合わねぇ」

背中より突き出た2門のビーム砲を地に向け乱射する《アビス》。

手応えはない。

「……出てこいよ。鮫野郎ォォ!」

行ってる間に辿り着いた地面は固かった。

いや、砂であるから、固くはないのだが、

思ったほど柔らかくはないのである。

沈みはするが、水ほどスムーズではない。

水ほど好きに動けず、沈む度にただただ砂が重くのし掛かるだけ。

「おい、おい……冗談じゃねぇ……」

両肩のシールドを開こうとするが、持ち上がらない。

砂が重くのし掛かって。

「こんな……ところで……」

エンジンをかける。それでも沈んでいくのを止めきれない。

「……死ねるかよ!」

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