機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神 作:申業
『見えてると思うけど、
《インパルス》も《ガイア》も、一気にやられちゃったのよ。
《アビス》もあれじゃ動けないだろうし』
ハビエルの声である。
「……あぁ、俺にどうにかしろってんだろ?」
そう言いながら、俺は右、左とグローブをはめる。
『いけんの?』
「無理でも……どうにかしなきゃだろ?」
胸のファスナーを上げる。
『……分かってんじゃん』
「毎度思うぜ……アンタの旦那は苦労してんだろうなって」
ヘルメットに頭を通す。
『頼むよ……アンタも色々あんだろうけどさ』
「あぁ……色々あるよ。色々な」
モビルスーツデッキ、
シャッターが上がり、レールが延びていく。
「シン・アスカ……《ヴェスティージ》、行きます」
一気にレバーを倒し、空へと舞い上がった。
両翼を広げ、熱砂を見下ろす。
おおよその敵の位置をレーダー上で確認するが、
砂煙に遮られ、正確には分からない。だが……
「……この手の相手は、もう随分戦った後だ」
今回は、
ミラージュコロイドなんかでレーダーが反応してない訳じゃない。
むしろ、砂煙が巻き起こる方向を見れば、相手の進路が分かる。
「焦らなきゃ、何とでもいける……」
左肘を土台にビームライフルを構える。
左腕のクトゥルフが丁度いいバランスになり、
かつ右腕にクトゥルフがない分、手を回しやすい。
「トロのヤツに感謝しなきゃな」
『……そんなに邪魔でしたら、もう片方も外して差し上げますよ?』
そんな宣言と共に、頭上より一撃のビームが襲いかかる。
ギリギリで回避したが、危うかった。
何せレーダーの端ギリギリから己を狙っていた敵を、
俺は見落としていたのだから。
『流石に……この距離では無理でしたか』
距離を取りつつ、敵機を確認する。
正体は一目で分かった。
「《ドミンゴ》か」
青いボディに、赤いラインの入った《ドミンゴ》。
しかも、そこに乗っているのは……
『困りましてね。人使いの荒い上司で』
聞いた声である。
カトリーナ・スティーヴィンズは、
ザフト脱走兵は既にほとんどがナイルの神の勢力より去ったと、
話していたのであるが……
「……ホルローギン・バータルか」
『えぇ……どうも』
両手にサブマシンガンを構えていた《ドミンゴ》。
脇を引くような所作で、これを乱射する。
頭上より降り注ぐ雨のようなビームの列。
「……今更食らうかっての」
回避は簡単だった。動いていればほとんど当たらない。
「《インパルス》の俺と引き分けたアンタが、
今の俺に勝てると思ってんのか!?」
笑って挑発はしてみたものの、言い終わったところに口角が下がる。
内心下の敵が気になっていたのだから。
『勝てなくとも、足止めぐらいはね……』
マシンガンを落としてきた。
どちらかが偶然にも、《ヴェスティージ》の顔の上へ。
咄嗟に首を捻った。
別に何てことはない。
当たった後、少し跳ね返ってから、砂へと埋もれていくばかりで。
『……伊達に狼なんて呼ばれてませんから』
そう言い、《ドミンゴ》はビームサーベルを抜いた。
さて、戦艦《フレイヤ》の方は。
「……何してんだい。もう」
ハビエルがそう漏らすもやむ無し。
ドラグーンの砲撃が砂漠より何度も降り注いではいるが、
敵機には当たらない。
モビルスーツ隊は動けない。そして上で俺は……
「もっとバーンと一気にやれない訳?」
アルメイダは言うが。
「無差別に爆撃するとなると、味方を巻き込みかねません」
ゲルハルダスが冷徹に言い放つ。
「……アレハンドロは?ダイは?ラグネルは?」
アルメイダはなおも声を張り上げる。
「ダイとラグネルには反応がありません。
アレハンドロは……」
パーディが言葉に詰まる。
レーダー上には確かに《アビス》の反応は出ている。
「聞こえたら返事なさい!アレハンドロ!」
パーディが言うより先にハビエルが。
『副長が来るまで……待てって言いませんでした?』
そうアレハンドロの返答が。
「……聞いてたんなら、守りなさいな」
ハビエルは苦笑した。
「動ける?」
『させん……』
パーディの額にうっすら汗が流れ……