機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神   作:申業

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PHASE-20 砂の海原(5/7)

──少し、アレハンドロの弁明をしておこう。

無様に自ら砂に飛び込み、勝手に埋もれたかに見えた彼であるが、

実際は少し違う。

それを《フレイヤ》クルーは映像で確認していた。

敵機……仮に《A》としよう。

まず、この《A》は着地してきた《ガイア》の脇腹を抉った。

実に鮮やかな手口だった。

正に抉るの弁に相応しく、コクピットから大きく削れた。

そこから《A》は玩具咥えた犬みたいに、頭上の敵を見据えた。

暇していた訳じゃない。

すぐに『玩具』はその辺に投げ捨ててしまって、

お次は飛び魚みたいに派手に跳ねた。

……中のパイロットがどうなるかもお構いなしに。

さて、飛び上がった《A》は先に《Im/A-P》を狙った。

ダイも馬鹿じゃないから、

敵が自分に迫っていると察して先に攻撃を仕掛けたが、

なるほど、この《A》という機体は堅いも堅い。

高出力のビームを半ば弾きながら飛び上がり、

《Im/A-P》に噛みつくのである。

ギリギリで回避できたのは、

ダイの腕か、

あるいは地面から艦に飛び付くまでの時間があったからか、

ともかくコクピットを直撃せずに済んだ。

だが、それまで。

腕を切り落とされ、返す刀で首根っこ噛まれて、重い砂の中へ。

潜る間際、荒っぽく首から胸、腹、そして左腿に至るまで、

《Im/A-P》を一直線に切り裂いたのである。

そうしているうちに、《A》の歯牙が《Im/A-P》より離れた。

ダイは最後の力を振り絞り、機体から上半身と下半身を分離、

中の航空機の姿になりながら、辛うじて脱出。

しかし、その頃には《A》の興味はもう《アビス》の方に移っていた。

覚悟を決めて飛び降りた《アビス》は、

確かに砂を進むには多少なりとも無理のある体ではあった。

けれども、アレハンドロは気付いていなかった。

ある時点でもって、敵《A》の座標が自分の上に来ていたこと、

自身が地に撃ち込んで巻き起こした砂煙と、

ダイが打ち込んだときの砂煙と、《A》が振り落とした砂と。

一気に背中に押し掛かり、砂に深く足を取られて……

そして《フレイヤ》クルーは見ていた。

《フレイヤ》のハイパードラグーンを紙一重にて回避しつつ、

沈みかけた《アビス》の頭を踏みつける《A》の姿を……『なあ……副艦長ゥ…………いや、パーディでもいいんだ。

聞いて…………もらえますか?』

沈みいく機体の中にあって、アレハンドロは呟いた。

『……俺の部屋、クローゼットの下の段の奥に酒が隠してある。

お好きに……どうぞ』

言葉の意図を先に察したのは、ハビエルで。

「……無理そうなのか?アレハンドロ」

ついついハビエルも前屈みになる。

『巣潜りみたいに深く飛び込んじまっちましたから……ね』

確かに、アレハンドロの喋り声の背後から、

砂の落ちる音が延々聞こえていた。

『……すまねぇ』

右手で顔を覆うハビエル。

パーディの肩も背もたれへと倒れていった。

「アンタの死に方にしゃ、らしいのかもね。アレハンドロ」

パーディの漏らす声。

『あぁ……俺はいつも…………結論を急いで……』

「無駄話は、それまでだよ」

ハビエルが言う。

その冷酷さを彼女自身もよく理解していたろう。

しかし、敵が攻めてきているのだから。

「副艦長、流石にそれは……」

ルアクが提言するも、

「各員警戒を怠るな!上空にて更なる敵機を確認したでしょう?

援軍の可能性もある。パーディはひとまず3大隊への連絡を!」

ハビエルは立ち上がり、毅然として指示を出す。

「副……艦長……」

「はい!」

このパーディの返答に、ルアクは驚いた。

パーディはすぐに仕事に取りかかる。

……溢れ出そうな涙を堪えながら。

『いいんだよ。ルアク……正しい。それが……正しい』

アレハンドロの声は健気であったが、声の節々に震えが。

「でっ……でも……」

「ルアク!アナタも策敵を怠らないで!」

ハビエルの指示に、

ルアクは顔を反らしながらも、静かに頷(うなづ)いて。

『ハハッ……ざまあねぇや。文字通り、墓穴を掘ったって訳で……』

アレハンドロは笑う。

『あぁ……砂の音が…………まるで、子守り歌みてぇに……』

そんな声を聞きながら、

シートに腰を下ろすハビエルの所作は重たかった。

(ごめんなさい……アレハンドロ……)

祈るように組んだ指。下がる顔。

……背後で開くドア。

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