機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神   作:申業

142 / 157
PHASE-20 砂の海原(6/7)

「何だよ……つまんねぇの」

そう男は笑っていた。

ブルース・G・ノーマン、仮称《A》のパイロットである。

「……ホルローギンのおっさん、張り切っちゃってさ。

あの《フリーダム》もどきは自分で仕留めるとか、そんなノリかよ。

困るんだよねぇ…………暇しちゃうじゃん」

止まる足、見渡す周囲。

先程まで彼に迫っていた、《フレイヤ》のハイパードラグーン4基は、

既に彼の足跡と共に、ガラクタとなって転がっていた。

「……コイツら、大したことなかったな。

戦艦も、モビルスーツも。何だよ……期待ハズレじゃん。

どうすっかなぁ……そろそろ、アレも落として……」

呟きながら見上げた空より、1機の《ゲルググ》が舞い降りて……

ブルースは、

「おおっ!?」

なんて声上げ、嬉しそうだった。

手には薙刀状に長く延びたビームサーベル。

そして分離した飛行機みたいなバックパック─フォルトゥーナ─が、

足場となって《ゲルググ》を移動させつつ、

搭載されたビームガンが《A》へと襲いかかかる。 

「知ってんぜ……テメェ、あれだろ?

《ゲルググ改》、確かパイロットはワイリー・スパーズ……

いいぜ。ブッ殺してやる」

そう挑発しつつも、何故だか《A》は一気に引き下がった。

その場にて横方向に旋回し、砂を撒き散らすと、

また視界から消えたのである。

彼は気付いていた。敵が単機ではないと。

レーダー上に記された敵の数は3。

1機は《ゲルググ改》として、

残り2機はというと、実になんでもない。《ジズ》である。

「……そっちはハズレか。まあ、いいや」

さて、土台ごと接近してくる《ゲルググ改》であるが、

ビームサーベルを船棹よろしく地面に突き刺し、そのまま前進する。

砂煙が起きるのは必定。

それは承知で、湖で底の深さを探るみたいに、

進む度に深く深く、サーベルを砂の下へ下へと。

進行方向へ、次第に巻き立つ砂の塔は高さを増して。

逆に《A》は後退を続け、退路に砂を残していく。

前へ押し出される砂と、後ろへ弾き出される砂。

ぶつかり合って波のように、《ゲルググ改》の顔に振りかかる。

どのくらい進んだろう?

沸き立つ砂の最上段が《ゲルググ改》の角の上を飛んで行った後で、

砂に紛れて《A》は噛み付いてきた。

歯牙……というのは、無論比喩である。

実際は3本からなるビームの牙。

齧歯目がごとき前歯1本と、ゾウ顔負けの下から上へ延びる牙が2本。

サメのような顔が上下大きく開く様は生きているみたいだった。

《ゲルググ改》も回避動作は取ったが、間に合わない。

フォルトゥーナを蹴って跳ねた瞬間には、

ビームサーベルを握る右手が犠牲になっていた。

だが、《ゲルググ改》も黙ってはない。

《A》が口の僅かな隙間に左手を押し込み、ギリギリで食らいついた。

モビルスーツ1機の体躯と体重が加わるのである。

思うようには動けない。

砂の中へ潜ろうとした《A》を、

フォルトゥーナに足を引っかけながら妨害してみせた。

「……ちッ!」

舌打ちしつつも、ノーマンの反応は早く。

口が大きく開き……今度は上下左右と4つへ分裂した。

いや、その口は、そのサメがごとき半身は、半身などではなかった。

《アビス》と同じ、4枚の実体シールドである。

下部分は更に下がって胸当てに、上部分はほぼ動かず後頭部を守り、

左右は両肩をカバーしていた。

ただ丸みを帯びた形状自体は独特であるが。

「離しやがれ!」

そう叫びながら、身を捻る。

両手にはいつの間に握られた1対のソード。

いや、フランベルジュと呼ぶべきか。

「そんなに離したくねぇなら…………刻んでやる」

フランベルジュとは、刀身が波打つ形状が特徴の剣。

その特異な刃の形態に合わせて展開されるビームの刃は、

右の刃が《ゲルググ改》の右腿を刻み、

左の刃が左腿に差し込まれる。

一撃で切り落とすような鋭さはない。ただ……

「この刃はジワジワと中に入っていく。

こんなもんでコクピットを貫いた日には、どうなると思う?

……均等には刺さらねぇだろうなぁ。

パイロットは俺が刃の角度を変える度に、

痛みに悶えながら、ジワジワ死んでくって訳だ。

実に……」

『……悪趣味な武器だな』

そう返答した声は、

《ゲルググ改》のパイロットによるものだったが……

「何か……若く……」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。