機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神 作:申業
ドアが開いて、入ってきたのは、あのワイリー・スパーズであった。
車イスのタイヤが地面を擦る音が無言のブリッジに鳴り響く。
「……いやぁ、困ったもんだぜ。
若いのに、玩具取り上げられちゃってさ」
冗談めかしく、そう笑うワイリー。
「……えっ?」
ルアクは驚いていた。
「今……《ゲルググ》で戦ってんのって……」
「気付かなかったのかよ?色が違うだろ。色が」
「相手はびょうに……」
言いかけて言葉に詰まるルアク。
ワイリーは右手で車イスの肘掛けを自慢げに叩いた。
「……自慢することじゃないでしょう。まったく」
コメカミをかきながらハビエルが苦笑する。
「まあ……確かに、
小隊を動かせるダスティンが出てくれたのは有り難かったけど……」
ハビエルとワイリー、見合わす顔。
「隊長!ここは……」
とハビエル。アルメイダの顔色を窺うが……
「……隊長?」
部屋の中央、艦長の椅子に腰掛けたルシア・アルメイダは、
肘つき、顔を隠し、恐らく……
「……寝てらぁ」
『テメェ……』
赤き《ゲルググ改》と対峙したノーマン。
「改めて名乗らせてもらうよ……ダスティン・ホーク。
君らの仲間ユウ・アカエを倒した者だ」
そう《ゲルググ改》のパイロットにてダスティンは笑っていた。
前の戦いで負った腕と頭の傷はそのままに。
隠すように上からパイロットスーツを着込んで。
『……チッ』
ノーマンが剣を抜き、引き下がる。
1秒遅れて、フォルトゥーナが上から《A》のあった座標を爆撃。
更に後退した《A》を追跡し、爆撃を続ける。
《ゲルググ改》の方は左手にビームサーベルを構えると、
少しでもカモフラージュすべく、斜めに構えつつ右に動いた。
《A》の胸からは大出力のビームが放たれ、
《ゲルググ改》本体を容赦なく襲う。
当然これはビームシールドで防ぐが、
余波が《ゲルググ》の体を押し返し、
飛び散ったビームの一部が足やら顔を傷付ける。
その間もフォルトゥーナの爆撃は続いているから、
《A》は徐々に徐々に後ろへと引いていた。
さてビーム砲が撃ち尽くされた瞬間、《A》の姿は砂の奥に消えた。
モグラの進路がごとく砂を盛り上げながら、再度近付く《A》。
当然ビームサーベルで上から刺すダスティンだが、
刺したところにはいなかった。
一歩左に外れたところから、あのサメ形態にて飛びかかる。
だが……
『なッ!』
飛び出した頭を、
スウェーバック気味に《ゲルググ改》が回避した瞬間、
その体の上を旋回しながら飛んできたビームサーベルが、
サメの下顎を貫いた。
『《ジズ》が手持ちのビームサーベルなど……』
呟きながらも、レーダー上で既にノーマンは捉えていた。
対角線上に立つ1機のモビルスーツ。
小脇を《ジズ》に抱えられながらも、
自分の足で確かに砂の上に立っていた《アビス》の姿を。
『こんのぅ……死に損ないがぁぁぁぁ!!』
《A》の口から何本もの管が見えた。ビーム砲らしい。
赤や緑に発光を開始するが……
「ボクを忘れてもらっちゃ困るね」
そう《ゲルググ改》の左腕からサーベルが振り下ろされ、
上顎に一撃、前歯が2つに割れる。
ただ、そのとき既に回避動作を取っていた《A》。
それ以上のダメージは与えられず、また地中に潜られてしまった。
『やりましたか?小隊長!』
「いや、逃げられた」
心なしか《アビス》らの方に向いた《ゲルググ改》の体。
『警戒怠るな!敵は……』
ハビエルがわざわざ勧告したが、
せずともレーダー上に表示されていた敵《A》の位置。
《A》は砂を隔てた地の中、丁度彼らの真下に……
「あぁ……この下に……」
近付くフォルトゥーナ。
エイのような体についた2門の砲口が下を向き、
《ゲルググ改》本体が後方に飛んだ瞬間、火を吹き、砂を掘り返す。
砂煙が視界を遮る。だがレーダーは確かに捉えていた。
砲撃に堪らず、飛び出した敵《A》の姿。両手にあのフランベルジュ。
左腕のサーベルを胸の前に構えて、警戒する。
やがて砂煙の勢い弱まり、
モビルスーツ形態となった《A》のシルエットが煙の中に浮かぶ。
瞬間、欠けた右肘を土台に見立てて、左腕を乗せると、
突きのモーションで煙の中へ飛び込んだ《ゲルググ改》。
影が見えたは敵も同じか。
《A》がフランベルジュを振るい、組まれた両腕を殴りつけると、
サーベルを振り落とした。
光を失い、砂へと落ちていくサーベルの柄。
『ヒッ……』
と上げたノーマンの笑い声は一瞬にて止み、
《A》の影は膝から地に倒れた。
砂煙が収まるは、正にその直後のこと。
後にはビームサーベルを振り下ろした姿で立つ、
アレハンドロがいた。