機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神   作:申業

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PHASE-21 砂塵舞う空(4/7)

少し、嘘を言ったかもしれない。

それはビームガトリング砲クトゥルフについて。

刺し壊されたといったが、厳密なところ、少し状況は違う。

確かに壊れていた。砲口が切り落とされているのである。

口がないというのが、どういうことか?

ビーム弾を撃てるのか?

いや仮に撃てたとして、敵の方へ飛んでいくかどうか……

だが、悩んでいる暇はない。

「一か、八か」

先程の攻撃で左手は更に損傷している。

ひとりでには持ち上がらない。慌てて右手を添えて、放つ。

奇しくもフランベルジュの刃先が、左の拳に接した瞬間だった。

ボロボロになったガトリングがゆっくり回転を始める。

『……ノーマン!』

女が叫んだときには、もう遅い。

傷付いたガトリングは見境なしに火の粉を降らした。

俺の左足も右手も傷つけられて、

支えを失った左手は、砂地に風穴をいくつも残しながら、

ガトリング自体も砂の中へと埋もれていくのだった。

さて、ノーマンの方はというと、

『……いでぇ』

そう声が出るくらいだ。死んではない。

だが、ダメージは致命的とみえて。

両腕は穴だらけになって削れ落ち、コクピットを含め、

全身に大小の穴が無数に空いている。

背中から受け身のひとつも取れぬままに倒れてしまい、

悶(もだ)えるように身を捩(よじ)る。

『殺す!殺して……やるぅ!!』

砂漠の熱に溶かされて、ヤツの口からカーテナが落ちる。

息巻くヤツの言葉はあながち誤りではなく。

ヤツにはまだ牙が残っている。光の牙が。

砂を蹴り、跳ねればまだ……俺に止めを刺せる。

対して俺が出来るのは……

「……2度も賭けに出るなんてよ」

右手左足は焼け焦げて、ほぼ使い物にならない。

ならば、後は右足に頼るしかない。

「死ぬのは、オマエだ!」

ボールを蹴るように、カーテナを柄から思いっきり蹴り上げた。

……息巻いたものの、

そんなやり方で正確な敵の位置を狙えないのは、

俺が一番よく分かっていた。

出来たのは、首を突き貫き、頭を落とさせることだけ。

だが、それで十分ではあった。

「俺の……勝ち、だな」

『クソッタレェェェェェ!』

ノーマンがそう声を挙げたときには、思わず笑みも溢れたが。

『やれェ!パァー!今ならッ!殺れるゥ!』

……忘れていた訳ではない。

だが、もう一人の女をも制するほどには、流石に余裕がなく。

『アンタは、いつも私任せじゃないか。まったく』

そう答えたと同時に、足音が聞こえ出す。重い足音だが、速い。

当然、死を覚悟した。

「……ここまでか」

だが……

どうやら神様ってヤツはルカーニアの言う通り気まぐれらしい。

『私は霧になって……オマエを、呪う……』

砂を伝う震動。

モビルスーツが膝から崩れ落ちる様が目に浮かぶようであったが。

事実、目視することとなった。

カニがごとき鎧に守られた1機のモビルスーツが、

正に甲羅のような装甲の隙間を抜く形にて、

ビームサーベルを突き立てられ、倒れ込む姿が。

『パー!テメェ……テメェ、なんでだァァ!なんでェ!』

パー・ウァーリィを乗せていたと思われる機体は、爆発炎上。

その煙の中をこちらに向けて歩き、近付くのは、

もう1機の《アビス》だった。

『何で生きてェんだよォォッ!!』

アレハンドロの《アビス》である。

腹は大きく抉れ、フェイズシフトはダウン、灰色の体で、

しかし確かにそこに立っていた。

「アレハンドロ……オマエよく……」

思わず、相好が崩れたが。

『……Cabrán(カブロン)!』

そう笑うアレハンドロの声は掠れていた。

死にかけた犬のような声だった。

瞬間、緩んだ頬が一気に引き締まった。

「アレハンドロ、オマエ……」

次の瞬間にはもう、アレハンドロの《アビス》は立っていなかった。

顔から砂に埋もれるように倒れていた。




「戦いの本質とは……生き残ることですよ。どんな手を使ってもね」
ホルローギン・バータルは笑う。
『お手並み拝見だな』
ルチアーノの問いかけに、ホルローギンは応じず、
ただ即座にビームライフルを投げ捨てた。
続けて左手をゆっくり上げる。
透明化した偵察型の《ジズ》を、
後(おく)れ馳(ば)せながら守るように、
2機の《ジズ》がこの機の前に立ちはだかった。
片方は腕にビーム砲を抱いて、砲口をホルローギンに向ける。
もう片方はビームサーベルを構えて1歩前へ。
だが……
「……投降します。命は助けてください」 
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