機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神 作:申業
サーベルに貫かれた、1機の《ジズ》。
これを容赦なく足蹴にすると、《ドミンゴ》は、
同じ剣を片手に、もう1機の《ジズ》の背後を取る。
『オマエッ……』
「おっと……動かないでもらえますかね?」
そう言い、刃を下から《ジズ》の首にあてる《ドミンゴ》。
「およそ、見れば分かる光景でしょうが……」
これは人質だ、返して欲しくば……とでも、言いたかったのだろうが。
しかし、言うより先に、敵に動きが。
「……これは酷い」
後方より放たれたビーム砲。だが、《ジズ》のものである。
どうしても届くまでに時間がかかってしまう。
《ドミンゴ》はすぐに人質を手繰り寄せ、回避した。
それだけじゃない。
捨てたと思われていたビームライフルが姿を現す。
それは丁度、足に付随していたコンテナの口に銃口を引っかける形で、
そこに残っていたのである。
ビームサーベルをコインのように高く放ったかと思うと、
敵の攻撃を回避しつつ、ライフルに持ち換え、瞬時に反撃。
相手のビームが撃ち終わらぬうちに喉(のど)に1発、
続けて顎(あご)、眉間と計3発を撃ち込んだ。
「嫌ですねぇ。狙撃は私の専門じゃない」
そう言いながらライフルを持ちかえ、銃口を掴むと、
何もない方へと投げつける。
いや、何もない『ように見えた』方というのが正確か。
ゴツンと音がして、見えない何かにぶつかったらしいライフルが、
弾かれ落ちる。
奇しくもそれは大きく振り上げられた、かのサーベルが、
彼の手へと戻るタイミングで。
「……そこか」
《ドミンゴ》は《ジズ》を盾にしつつ一気に前進すると、
回避に動いたであろう透明な《ジズ》にこれをぶつける。
次はゴツンなんて間抜けた音じゃない。
ドンと激しく空気を振動させた。
サンドイッチみたいに2機の《ジズ》と《ドミンゴ》が相対す。
そして『盾』の隙間を抜いて、サーベルで敵を貫いた。
機体は爆発炎上、ここに来てようやく露(あらわ)となる姿。
大きなレドームが目につく。
「隠れるには……こちらの方が向いていたかもしれませんね」
なんて笑うホルローギンだが、
そう余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)とはいかなかった。
爆発の煙に紛れて近付く、1機の《ジズ》。
いや、レーダー上の反応からホルローギンは見落としていた。
確かに《ジズ》には違いない。しかし、
(《ジズ》にしては速すぎる)
側面を突く形で、繰り出された銃撃が、
《ドミンゴ》の首を吹き飛ばした。
続いて咄嗟(とっさ)に《ジズ》を突き飛ばし、
2度目のサンドイッチ。慌てて敵との距離を取るホルローギン。
「なるほど……
流石は『雨の髪のフォーコレ』、と言ったところでしょうか?」
『逃がさん』
「いや、逃げさせてもらいますよ」
《ドミンゴ》は力を抜き、砂の上へと落ちていった。
下では砂煙が巻き起こっていた。すなわち……
『使えねぇジジィだな。クソが』
「……お陰で私は助かりましたよ。Mr.ノーマン」
《アビス》のヒレのような腕に掴まり、
ホルローギンは逃げて行った。
「流石は狼……狼藉はお手のものというところか」
そう微笑み、マイクからゆっくり口を離したシーザー・ルチアーノ。
その背中に銃口が押し当てられた。
ゆっくり顔の半分だけ背後に向けて、確認するシーザー。
相手はすぐに肩を押してシーザーの顔を前へ向けさせる。
「テーザー銃とは、珍しいね」
水鉄砲のような派手な黄色の外観が特徴的な、拳銃タイプのスタンガン。
シーザーの背に接していたのは、そんなものだった。
「……そんなことをお聞きしているのではありません」
そう応じたのは、若い男性の声で。
「忠告を……聞いておくべきだったな」
「まったくです。
回線の方は確かにジャックできませんでしたが、
監視カメラが確かにアナタの姿を捉えていた。アナタの姿と、声をです。
『やはり、そう思うか?』などと述べ、
この回線からは聞こえないと釈明していたご様子。
一体、何をお話されていたのか。
事と次第によっては……ただでは済みませんよ?」
「『ただでは済まない』か……」
シーザーは自身の禿げ頭を軽く撫で、ニヤリと笑った。
「精々、ビリビリするだけだろう?フー・ソクティス麻酔医。
いや、ソクティス大尉と呼ぶべきか?」