機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神   作:申業

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PHASE-02 嘆きの破壊者(6/7)

フレイヤ・クルーのオペレーター、パーディタ・サトクリフの姿は、

モビルスーツデッキに向かい、走っていた。

若い男性クルー数名が目撃している。

彼らはパーディに間違いないと証言している。

……揺れる胸に見とれていたから、間違いとかなんとか。

彼女が動いたのは、ほんの数分前。

丁度、カオスを乗っ取ったジェイナス・ビフロンスが、

俺たちの前に立ちはだかった頃だった。

彼女がサマンサ・“サム”・スクリーチの捜索、

ひいてはモビルスーツデッキの様子見に席を立つと述べたとき、

隊長のアルメイダはいい顔をしなかった。

それを、監視カメラが壊され、

モビルスーツデッキ側からの連絡もない以上、

誰かが行くしかないと擁護したのはハビエル。

アルメイダも渋々折れたが、

結局黙殺するのみで、見てきていいとは言わなかった。

普段なら、モビルスーツという20メートル前後の巨人が立ち並ぶ、

モビルスーツデッキもこのときばかりは、

たった1機《ガイア》を除くならば、皆失せた後であった。

パーディの荒い息が妙に大きな音を以て室内に響く。

両膝にその両手をついて、下を向いた彼女が、

次に顔を上げたとき、

そこに広がっていた光景は、惨絶の一言に尽きる。

あるものは顔が上を向いた姿勢で漂っており、

何が起こったのか分からないといった表情のまま、

眉間より赤い血の滴を漏らしているばかり。

また、あるものはヘルメットのガラス部分が血で覆われ、

中の様子が分からない。

手に拳銃を握る、喉に風穴の開けた男。

腹部を押さえて俯いたまま動かない女性。

そして、今、ひとつの身体が壁にぶつかって、

その手に握っていたらしい拳銃が離れ、空中に放られた。

何れも死体。生きている者は見当たらない。

皆死んでいる。

およそ人間が、台所の縁に現れた虫けらのように、

小さく見える世界にあって、

30人はいようかという人間の体が何れも浮いたまま、動かない。

無重力空間、血もまた衣類のシミみたく、

空気中を浮いている。

これでは誰が裏切ったのか、誰が抵抗したかすらも分からない。

パーディの喉の奥より何かが上ってきて、

彼女は慌てて口を抑えて、下を向いた。そんな瞬間だった。

背中に銃口とおぼしき鉄の塊が触れたのは。

体は前を向いたまま、顔だけをゆっくりと動かして、

横顔で背後を確認すれば、

「……サム?」

とはいえ、彼女はそれ以上、何かを口にすることは出来なかった。

次の瞬間にはもう、凶弾が残酷にも、彼女の身を貫いていたのだから。

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