機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神   作:申業

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PHASE-22 白き星と黒き刺客(3/7)

「分かりかねます……何故、我らが神はアナタを信任するのか」

フー・ソクティスの詰問に、シーザー・ルチアーノは笑みで応じた。

「ホルローギンも、

オートゥール氏にピストルを突き付けられたと聞く。

そりゃあ、信用するだろう。

君らと違って私は、無闇に矛先を向けて恫喝するなどいう、

マフィアまがいの手は使わない」

「……よくもまあ、いけしゃあしゃあとそんなことを」

「使わないよ……『私は』」

銃声が鳴り響く。それは突如として。

ソクティスは振り返るが、

残念ながら後ろを確認する余裕はなかった。

右の足首から流れる血と痛みが、彼の顔を下げさせた。

痛みを堪え、ソクティスが顔を上げると、

ドアが開いていて、

自身にピストルを向け立つ少年の姿がある。

彼は雪のように白い肌をしていた。

銃のモデルはH&K P2000。

手の小さい婦人警官向けに開発された、この自動拳銃であるが、

流石に子どもの手には大きかったと見える。

銃口からは未だ煙が燻(くすぶ)っている。

「……おっと失礼。どうやら礼儀がなっていなかったらしい。

ダメじゃないか。ユーダリル」

シーザーは笑いながら少年の方に寄り、頭を撫でる。

「子どもを……ボディーガードにしているのか?」

そう問うソクティスを、半笑いで見下ろすシーザー。

「違うよ……この子はただのペットショップのバイトさ」

拳銃をホルスターに戻す少年だが、

そのホルスターの幅すら彼の足の太さとそう変わらない。

「……ペットショップ?」

不可解とばかりに聞き返すソクティスの回答は背中にあった。

シーザーの部屋には1羽の白いオウムがいた。

鳥籠の中でオウムは吠える。

「ヒドイヒトォ!ヒドイヒトォ!」

翼をバタバタさせて、羽根を幾枚も落としている。

うちの何枚かは柵すら越えて、絨毯(じゅうたん)へ。

「オウムもああ言っている。君のやり口は、ちと無礼だ。

クリーブランド氏もクロコディロポリスに帰るそうじゃないか。

帰りたまえ。大尉。

君の役割は既にフィリップ・フロイ氏に引き継がれた後だ。

私の副官は君では務まらん。

君には、

金持ちの老い耄(ぼ)れの世話でも焼いているのがお似合いだ」

「……神を怒らせることになるぞ?」

睨み付けるソクティスだが……

「かような脅しに意味があると思うかね?この沈みかかった舟の中で」

シーザーの足はドアの縁をゆっくり跨いだ。

手はなおも子どもの頭の上へ。

「最後の仕事だ。ソクティス大尉。

カーペットを取り替えておいてくれ。汚れてしまったからな。

鳥の羽根と、君の血でな」

ソクティスの対応は早く、首に巻いていた斑模様のスカーフを外し、

手早く足首に巻いていた。

それでも血の数滴は確かに、マットを濡らしていた。

「……いいカーペットを頼む。

そうさなぁ。まるで……クレオパトラでも入っていそうな……」




6月28日未明。トブルクにて。
「………本当なのか?それは」
アントン・ランスキーは解けた革靴の紐を結び直しながら、
その片手間に報告するフェイ・デ・カイパーの表情を確認した。
「えぇ。間違いなく……」
「いつから知っていた?」
問い返した頃には、靴紐を直すのは済んだらしく、
手が靴から離れていた。
「……私はオウムと例の少年を明けの砂漠の拠点まで送るよう、
ヴィトー司令から命令されました。
恐らくあの方は……当初は明けの砂漠側に就くお考えだったようです」
「ただ、結果的には…………そうはならなかった、と」
震える指が向くのは目前の机。
木製で、そこには黒いバスケットがあり、
オレンジが3つ乗っていた。
「……戦わねばならないのか?」
「はい」
「………どうしても?」
フェイは即答しなかった。どこを見るとなく見上げて、
「ローマ帝国初代皇帝アウグストゥスは、
大叔父の恋人だった女と、大叔父の部下だった男と戦い、
2人を死へと追いやった」
と呟くだけで。
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