機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神   作:申業

155 / 157
「ダイ、オマエ……」
なんて講釈垂れる時間はなかった。
奇襲……ではない。情報は得ていた。
砂漠の真ん中で展開している部隊がいると。
数にして9機。
データ上に表示された型番は《GAT-399R2/Q》。
恐らくだが《ワイルドダガー改》と見られる。
座標はシワというオアシス都市周辺の砂漠地帯。
2キロ四方程度の湖が傍らに見える。
偵察用に飛び立った改造型の《ジズ》は、
砂に紛れており、視認は困難と報告したそうだが……
『敵機捕捉!』
ルアク・パームシットの声がブリッジから。
……既に敵機の位置は分かっていたのだから、
そこは接近とかじゃないのかと内心では思いつつ、
ひとまず出撃準備へと移る。
例によって、あのロボットアームみたいなでっかいのが迫り、
両肩を掴んで、《ヴェスティージ》を運ぶ。
「……あまり出張んなよ。俺たちは援護だからな」
ダイにはそう言い残し、俺は外へ……


PHASE-22 白き星と黒き刺客(5/7)

両翼広げ、飛べば足下は一面砂ばかり。

砂は盛り上がり、小さな山と小さな谷が連なる。

砂はいくらか巻き上がり、風に流れている。

ただ遠方に横たわる湖の青緑だけ、えらく輝いて……

それもこれも上空数百、数千メートルから見下ろせば、

すべてがミニチュアみたく小さく映った。

奇妙な喩えかもしれない。

だが、俺にはそれが病院の天井に見えた。

あの真っ白なキャンバスに、

縦へ横へ均等な線が引かれ、黒い点が不均等に並んでいる。

丁度《ケトゥ》どもが点の代わり、

それが部隊と指揮系統の違いから、

5とか10とか毎に密集しつつ、

グループ同士は縦に横にで距離を取っている。

それがこの砂の大地に、間隔をほぼ維持しつつ進軍している。

本来見上げる筈の天井を見下ろすことの奇異さ。

「……疲れてるな、まったく」

そんな感慨に耽(ふけ)る暇はなく。

緑色の光が砂の上を走り、遅れ馳せながら銃声も鳴り響いた。

最前列を歩いていた《ケトゥ》が撃ち殺されて、

横倒しになって後方へと。

《ケトゥ》の群れはこの1機を避ける形で進軍を続ける。

上から見るとこの『点』たちが、翼を広げた鶴のごとく……

レーダーで確認すれば、

《ダガー》連中がいるという位置は目の前に。

ただ、報告通り敵の位置は視認できない。

「こんなに高いところからじゃなぁ……」

前線の《ケトゥ》たちは見えているらしい。

進行方向がおおよそ決まっている上、

今しがたなぞ、ある1機の《ケトゥ》が首を伸ばし、

そこにいたらしき《ダガー》を仕留めたらしい。

砂地に一瞬、オブジェみたいな灰色の《ダガー》が姿を現すと、

爆発炎上。煙も上がる。

そんなのが2つ3つも続き、視界がなお悪くなる。

レーダーで確認すると簡単なものだ。

《ダガー》と《ケトゥ》、

型式番号が表示された点たちは1つ、また1つと消えていく。

『……敵さん、不利を悟ったか』

ワイリーがそう言った通り、

《ダガー》たちの中でも後方に控えていた2、3機が、

2、3個の点が徐々に後退を始めた。

『こりゃ意外と簡単かも』

そう笑いながら、ダスティンが《セイバー》に乗り、登場。

『いくらなんでも、兵力差がなぁ……』

ワイリーは何故か敵に同情的。

「もう大丈夫なのか?ダスティン」

『えぇ。掠り傷ですし』

「……ならいいが」

ダスティンの部下たる《ジズ》2機も、

《セイバー》へと付き添うように飛んでいる。

「どいつもこいつも、無理しやがって……」

俺の位置からだと、

ダスティンの《セイバー》、ワイリーの《ゲルググ》、

そして……ダイの《インパルス》。

それらが横並びになって見えていた。

『大丈夫ですよ、この兵力差だ。

ボクらの出番はないと思いますよぉ~?』

ダスティンはそう笑うが。

「……だといいが」

俺が気になっていたのは別のもので。

『気になるか?あれ』

ワイリーも指摘した。

「……あぁ」

砂煙や爆煙に紛れて、しかし確かに現れる湖上の霧。

『オアシスだけに幻影って訳でもなさそうだが』

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。