機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神   作:申業

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「自分では……もっと上手くやれると思っていたんだがな……」
ノーマルスーツを着込み、パーディの背後で、
その反動により拳銃(コルト・ガバメント)を落としたサム。
まあ、落としたとは言っても、
そこは無重力空間特有の落とすというよりは下に飛んだ、
または投げられたというモーションであり、
滑空するように緩やかに、地面へと向かったピストルは、
目的地に至ると共に軽く跳ねた。
それから間もなく、モビルスーツデッキの壁が破られた。
デッキ内を満たしていた空気が堰を切るごとく溢れ、
目には見えない空気というものが、
その動きの激しさゆえに、その存在を露見させるのである。
こうして漏れ出す空気に乗って、
死体たちが艦の外へと吐き出される。
虫けらみたいに。
せめてもの慈悲か?
入り口の側に立っていたサムは、パーディの右肩を掴むと、
荒っぽく突き飛ばした。
その先にはドアがあり、
パーディの体がブリッジの外へと出た瞬間に、
入り口の自動ドアの閉じるボタンを押した。
スッと閉じる間際、謎の大きな影がサムの上に覆い被さる。
後ろ向け、後ろとでも、号令があったみたいな洗練された動きで、
サムが振り返り、見れば、
そこにはうっすら赤みがかった灰色のボディをしたジズが。
この機の肩にも、
赤い星とレフチェンコ・ピストルとのマークがある。
手元のビームガンの銃口はサムに向いているらしく、
サムが振り返った一瞬に、キラリと輝いて見えた。
……だのにサムは動じる様子なく、ポケットを弄る素振りを見せると、
出してきたのはタバコの箱。
銘柄はラッキーストライク。
振り返って背中を見せて、降参するように手を上げ、
同時にこの箱を掲げて見せれば、
相手のジズも銃を下ろし、それどころか膝もついて、
乗れとばかりに手を彼女の前に突き出すのだった。


PHASE-02 嘆きの破壊者(7/7)

何よ……仕留めきれてないじゃない」

戦艦『フレイヤ』のブリッジにて、アルメイダが呟いた。

「ドラグーンで……殺れないの?あのデカいの」

見下すように、睨むように、ハビエルに問うアルメイダ。

アルメイダは、顔を隠すように帽子を少し下げると、

「本艦……対モビルスーツの兵器ですが、基本的には牽制目的。

モビルスーツのものほど複雑な動き、スピードはありません。

まして、

あんな大型モビルアーマー相手にダメージを与えられるかどうか……」

「……ダメ元で、使ってみればいいじゃない?」

「あの火力、そしてギミックを見るに、

下手に喧嘩を売ると、こちらがやられかねません」

ハビエルの言葉は真を突いていた。

「……何よ、それ?」

呆れてそう言い返すアルメイダの背中で、

モニターが光り、赤いビームの槍が横切った。

目標は本艦ではなく、『ベルフェゴル』の僚たる『ニスロク』。

その脇腹に大きな穴を明け、あっさり撃沈させてみせた。

やったのは勿論、アルゴルであって、

その様に1度振り返り、

そして『ニスロク』の爆発炎上する様を見届けたアルメイダが、

再びハビエルに顔を向けたとき、もう告げる言葉を失っていた。

「おい、見た?今の」

「戦艦が一撃かよ……」

「なんて火力とパワー……」

騒然となる『フレイヤ』のクルー。

そんな中にあって、帽子に隠されたハビエルの視線の先は、

パーディの席に向いていた。

今、そこにパーディがいない、その席に。 

しかし、彼女の視線はすぐに別の場所へ釘付けにされることとなる。

それは……

あくまで例え話だが、『ニスロク』がコバンザメならば、

彼らはさながら宿主の死に際して、肉体より脱出を試みる寄生虫。

あるいは、母蜘蛛が死ぬと共に散らすとばかりに出てくる蜘蛛の子。

いや、そもそもが、

カタツムリに寄生して、触覚を芋虫のように膨張させる、

ロイコクロリディウムみたいに、

その宿主が死ぬ前から已に、動いていたのかもしれない。

勿論、自分の都合のいい状況を作り出す為に。

少し前後するが、

アルゴルの咆哮に炎上を始めた『ニスロク』という母体を、

食い破るが如く姿を現す《ジズ》の群れ。

その姿は赤っぽい灰色の体に、星とレフチェンコ・ピストルの印。

彼らは『ニスロク』の船体に追撃を加えたかと思うと、

10機あまり、それぞれが3機4機に別れて、別行動を開始する。

あるものは『ベルフェゴル』へ。あるものは『メディオーラヌム』へ。

また、あるものは『フレイヤ』へ……

一番騒ぎが大きかったのは『ベルフェゴル』であって、

「『ニスロク』搭載機が、こちらに接近してきます!」

と叫ぶオペレーター。

「……噂をすれば、ってか?」

角出せ、槍出せなどと歌っていたことなど、

誰が覚えていようか。

傍らにはもうフェイ・デ・カイパーの姿はなく、

こうしたルカーニアの呑気な台詞に、返答できる者はない。

「ビームシールド展開!」

「……右舷損傷!」

「ビームシールドの隙間を抜いたのか?」

「いや、シールド発生装置の一部が破壊された模様で……」

なんて周りが騒いでいようと、ルカーニアは動じない。

例によって、うすら笑いを浮かべながら、様子を見ているだけ。

そんな中……

「うっ、うああああああ」

クルーの誰かがそう叫んだとき、

ブリッジ前方にて、《ジズ》がビーム砲を構え、立っていた……




『……さあ、「5分」ですよ。これで。
よく持たせてくださいました』
そんなホルローギンの声明を、オツォは不服そうに聞いていた。
「……てめぇで言ってちゃ、世話ねぇ」
なんて呟きながら。
『おっと失礼……いや、まあ、もう大丈夫でしょう。
目的は果たした後ですし』
「……フン」
すかしたように鼻を鳴らすオツォ。
画面で不気味ともいえる薄ら笑いを見せるホルローギン。
……彼らの言わんとするところはこう。
ホルローギンは言った。
『ハワイ』で『モンロー』の『覚え書き』を見つけた、と。
まあ、短時間利用される簡単な暗号文だった訳だが。
『ハワイ』は、ハワイ出身のアメリカ大統領バラク・オバマを暗示し、
要塞『オバマ』のことを示唆したもの。
『モンロー』はアメリカの『5』代大統領。
『覚え書き』は英語では『minutes』、別の意味で『分』になる言葉。
繋げてみれば、実に何でもない。
『オバマ』をあと『5』『分』持たせろ、と。
「望みは叶ったか?」
──皮肉っぽく語るオツォに、
『あまり……しかし、成果はありました』
「成果?」
『……ひとまず、離脱してくださいな。
「オズボーン」が迫っています』
右を向くオツォ。
画面右側の奥に見えた穴。
それは『フレイヤ』のモビルスーツデッキよろしく穴が空いており、
空気が漏れ出ていた。
そんな空気をまるでオーラのように纏い、
要塞内部に入ってくる敵。
先程は赤っぽいジズだったが、彼らは青っぽく。
濃い水色に明るい緑がアクセントに加わるボディと、
ザクレブ市旗に描かれたような白い城の紋章が描かれた肩。
そんなジズらが、かの『ハリネズミ』たち同様の重装備で、
『オバマ』に侵入してくるのである。
『大した男ですよ……ヴィトー・ルカーニア。
それとも、モーリス・ゴンドーでしょうか』
「……知るかよ。さっさとずらかるだけだ」
『ええ。ここも、もう終わりでしょうから』
オツォのハイザックが足を上げた。そのまま後方に飛ぶ。
こうして移動しながらも、
煙に紛れて接近する敵を撃ち殺したりして、
『お見事』
などとホルローギンがおだてるが……
「とっくに終わってんだよ。7年前……
デュランダルが死んだときに、な」
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