機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神   作:申業

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アルゴルの原型と思われる《ザムザザー》というモビルアーマーは、
一言で言えばバカにデカいイシガニのようなヤツで。
実寸は知らないが、モビルスーツの数倍はあった図体で、
四肢に仕込まれた強力なビーム砲と、
それこそカニのハサミみたいなクローが武器だった。
最初に戦ったときは結構焦った。
海上での戦闘で、ヤツのハサミに機体の右足を掴まれて、
オモチャみたいに振り回されたのを覚えている。
そこからどうにか巻き返して、倒したから、
今こうして生きている訳だが。
スコアなんてものは一々気にしないもんで、
正確な数は知らないが、その後も何度か遭遇し、何度か倒している。
モビルアーマー戦には結構慣れてる、といっていい。
昔は簡単だった。
接近さえ出来てしまえば、あの頃のモビルアーマーは脆かったから。
並外れたデカい図体ゆえに、
かえって懐に入られると、反撃手段がなかったりしてさ。
勿論、この《アルゴル》の場合は別だろうが……


PHASE-03 刹那の戦場(3/7)

……警戒すべきは、あの腕。

先程、接近した《ジ・ゾウム》が何らかの反撃に遭い、倒された。

銃ではない、と思う。

銃なら、貫通するか、シールドで弾かれていたハズで。

モーションが不自然だった。

撃ち殺されたなら、すぐに爆発していたハズであって。

同じく、ビームシールドで弾いたとしても、

動きを止めるという判断にはならない。

となれば、恐らく武器は……

「やれば、分かることか」

距離を取りつつ、ガトリングを掃射してもいいが、

流石に今度は避けられるだろう。

コイツは威力こそ強烈だが、反動が強すぎて、

撃ちながら動く目標に合わせて向きを変えるなんて芸当は、

まず無理と考えるべき。

という訳で、モーションの少ないモビィ・ディックをけしかけた。

例のリフレクターで受けにくるかと思えば、

アルゴルは回避しつつ、前に出るという判断を下した。

なるほど、これ程に高出力のビーム、

撃っている間に隙が出来ると見たのだろう。

可哀想なのは、その後ろにいた《ワイルドダガー》の1機。

《アルゴル》が盾になってくれるとの慢心ゆえか、

シールドも張っておらす、

モロにモビィ・ディックの砲火を浴びて、藻屑と散った。

さて前に出た《アルゴル》。

《ダーティ》や《ムナガラー》ほどではないとはいえ、

その図体に似合わす、これが意外に速い。

モビィ・ディックを撃ち尽くし、畳むまで、せいぜい2、3秒。

そこから次の1秒が経つか否かという頃合いには、

もう刃が届くぐらいの間合いにはいたのだから。

折り畳まれるまでの間、俺も呑気に様子を見ていた訳じゃない。

ビームピックを抜いて、投擲。それを右、左、右と3度。

第1射、第2射は上手く避けられ、

第3射に至っては当たったものの、

そこはイノシシでいう前足の付け根の辺り。

痣(あざ)のような小さな傷を少し残した程度で、

猪突猛進とばかりに勢いよく突き進む《アルゴル》を止める力はなく。

「まあ……そんなもんか」

1歩程度、後退する。

そうして……後退していたのに、追い付いてきやがったのだ。

左から抜いたビームピックを、投げる暇はなかった。

やむなくリーチに難はあるが、ビームサーベルのように持ち換え、

ヤツを迎え撃った。 

インパクトの瞬間、リフレクターでも張るかと思えば、

そんなことはせず、ただ前足を振り上げた。

嫌な予感がした。とても嫌な予感。

普通なら、みすみす相手の方から腕を出してくれたのだ、

思いきってピックで突き刺しに行くだろう。

だが、それは相手も当然気付くことであって。

何故、前に出した?フェイントにしてはあからさまな動き。

直感的に動いた。避けねば、と。

全く下がってばかりだが、これも必要なる後退。戦術的回避。

……まあ、とにかく、結論を言おう。勘は当たった。

ワン公がお手をするように無様に突き出された腕には、爪があった。

それも、指先からではなく、掌から生えた爪が。

後方からは見えないハズである。

俺も回避した瞬間に、指と指の僅かな隙間から、辛うじて見た。

次の瞬間、もう俺の足が止まった頃には、

既に爪は消えていた。

昔、何かの本で読んだな。漫画だったか?

確か、バグ・ナグとか言うんだっけか。

指と指の間から鋭い刃が顔を出す、インドの隠し武器。

意味するところは『虎の爪』。

……『爪』?……いや、あれは寧ろ肉食獣の『牙』みたいだったが。

「一筋縄じゃ……いかないってか?」

向き合うアルゴル。

先程、ビームピックが切り裂いた場所が白い煙を上げている。

獲物を見つけ、腹を空かせたイノシシが、

その興奮ゆえに白い息を吐いているように。

「……イノシシ狩りだ」

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