機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神   作:申業

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PHASE-03 刹那の戦場(6/7)

「……死ねないだろ?こんなんじゃ」

口部発光の瞬間、俺は剣を離し、思いきり仰(の)け反った。

相手の射角調整は間に合わなかった。

ピンチの後には~なんて言う訳じゃないが、

俺は仰け反った状態から更に1歩引き下がると、

頭部のビームガンでけしかけた。

敵も回避に動いたが、撃ち終わり、動くまでに多少のブランクがある。

カーテナを掴んでいた方の腕が犠牲となった。

予想以上に大きな煙が巻き上がる。

『ウソだろ?ロビーちゃんが……』 

多分、敵だろう。そんな声がして。

『やったじゃないっすか!』

なんて声を上げるアレハンドロがいたりして。

しかし、煙が薄れ始めると共に、そのシルエットが顕になる。

始めはイノシシが2本足で立ち上がり、

背中を向けて前足を広げているような、そんなシルエットだった。

そのまま、煙が晴れる前後に、振り返ったかと思えば、

変形が始まった。

前足と揶揄されるばかりの短い腕の真ん中に1本線が入り、

そこを境に2つに分かれて、離れていった方が円を描いて伸び、

やがて長い1本の腕へと転じた。

ただ、違うのは上下が逆転している点であろう。

背中が胸や腹に、腹が背中に転じていく。

屈むように肩をすぼめ、下を向いたような姿勢になる頃、

残された片腕の、前足のときには掌だった肘が、

あの牙を覗かせる。

牙……最早、光の剣と呼んだ方が正しかろう。

肘から剥き出しになった骨みたいに、そこに三日月型の刃がある。

あんなもので突き刺されたのだ、

そりゃ、あの《ジ・ゾウム》も動きを止める。

『殺す!殺したるゥゥ!』

煙の奥で炎がついた。ヤツのスラスターだったのだろう。

煙は間もなく晴れて、ヤツは高速で接近してきた。

こちらは横に動く。目標はカーテナ。

今、《アルゴル》の背後の空間に浮いている。

右斜め前という進路を進みながら、カーテナを目指す。およそ10秒。

1秒後、ツォーンの砲撃が飛んできた。

2秒後、これを避けて、

3秒後、モビィ・ディックを起動させる。

4秒後、立ち止まらず、ろくに狙いもせずに砲撃。命中せず。

5秒後、ツォーンの第2射。今度は肩口の砲台からも放たれる。

6秒後、敵の砲撃を回避したものの、数発被弾。右肩を損傷。

7秒後、威力を抑えて、かつ足も止めずにガトリング掃射。

8秒後、《アルゴル》の進路変更。

9秒後、ガトリングの数発が被弾。《アルゴル》の右足首を破壊。

……迎えた10秒後、俺の手にはカーテナが握られていた。

先程の右肩の被弾とガトリング掃射のせいで、

右腕の調子が悪く、やむなく左手のみで掴み、構える。

《アルゴル》が進んでくる。前面にはリフレクターを展開しながら。

撃ちかけるツォーンの砲撃をダラリと垂れた右腕のシールドが耐え、

間合いが詰まっていく。

肩の上へと、刃を振り上げた。

片腕だけとはいえ、

これから豪速球を投げるピッチャーのように大きく振りかぶって。

敵を見据える。

近付いて来るにつれて、シールドの防衛能力にも限界が。

何より、やや斜めから放ってきた敵の砲火に、

肩が後ろへと押し出される。

それでも、どうにかギリギリまで耐えた。

強烈なツォーンのエネルギー波が途切れる、そのときまで。

そうして途切れる瞬間に、

その勢いをも使い、力の限り、カーテナを振り下ろした。

敵も例の剣で応戦に出たが、もう遅い。

カーテナは、その先端部を相手の剣のビームに切り落とされつつも、

ビームの刃が敵の腹部に深く食い込んだのだから。




正直、勝利を確信していた。
深く突き刺さった腹部。
その後、爆発が起こらないところを見て、
念のため、ビームガンで頭部も破壊しておいた。
しかし、それでも……
『……んな』
って声がノイズの波に紛れるように聞こえてきて。
『こんなんでなぁ…………終われへんわァァ!ボケェ!カスゥ!』
声から分かるが、ロビーとかいう、敵のパイロットの台詞だ。
およそ人が変わったような彼女の叫び声と共に、
敵モビルスーツのバックパックのみが分離する。
どうやら、コクピットはそちらにあったようで。
それは《ZGMF-X11A リジェネイト》という、
ザフトのモビルスーツの時点で利用された方法であった。
だが、まあ……そんなアイデアを使ってくる敵が本当にいるとは。
「……マジに、メドゥーサみたいだ」
目玉焼きみたいな本体と、それに付随する数本のマニュピレーター。
丁度、人間の頭とそこから生える蛇の髪……
とはいえ、そこまでの抵抗に終わった。
体を放棄し、逃亡を図った、この寄生虫のごときバックパックは、
脆くも撃ち落とされたのだから。
例の、赤い《ジ・ゾウム》のビームライフルによる狙撃で。
萎(しお)れる花のように高度を下げて、
落ちていくバックパックの奥にて、彼は立っていた。
『流石ですね……義兄(にい)さん』
なんて、言いながら。 
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