機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神 作:申業
思わず、目を伏せた。
直後、パッと光ったのが見えて、慌てて顔を上げる。
そこにあったのは、正に網の上でグツグツに焼かれるサザエみたく、
内側から爆発を繰り返す『オバマ』の姿だった。
『おい、アレ!』
なんて遅れて声を上げたアレハンドロ。
『……早かったな』
とダイも声を漏らす。
「おい……ちょっと、待て……これは!」
目的が違う、俺たちは『オバマ』を落としに来た訳じゃない、
そう言いかける瞬間に、
薄赤いボディを持った《ジズ》らの姿が突然消えていくのに気付く。
単に色を変えたのではないらしい。
それだったら、レーダー自体から消えるなんてことはないから。
ミラージュコロイドって迷彩兵器だ。
なるほど、
大将首を取れなかった場合の避難方法まで用意済みだったと。
結局、『ニスロク』の他に撃沈した戦艦はなかったが、
例えば『ベルフェゴル』なら右舷が損傷。
また『フレイヤ』もモビルスーツデッキに穴を空けられ、
一番被害の少ない『メディオラヌム』でも擦り傷多数。
そして、グナイゼナウでの一件の意表返しとばかりに、
要塞『オバマ』を爆破。
モーリス・ゴンドーの隊に大きな損害を与えることとなった。
戦闘時間は7分程度。
はたして勝利と呼べようかという、短期決着であった……
「……ツラいな」
病室のベッドで、自身の膝辺りにうつ伏せたアレハンドロへ、
静かに語るワイリー・スパーズの姿。
「サムには裏切られ……オートクレールの生死も不明とはね。
何だ?つまりは……ただ、大西洋連邦に喧嘩を売っただけと?」
ゆっくり顔を上げるアレハンドロ。
起き上がるも束の間、背もたれの方に振り子のように倒れ込む。
それから、カンガルーみたいに腕を垂らしながら、
「もしかしたらって…………思ったこともあったんすけど」
と語り始める。
「……アーモリー・ワンのとき、
俺にはアイツがあんまり真剣に戦ってないように見えて。
当然、言いましたよ。何で手ェ抜いたんだって。
でも、サムは認めなかった。
『自分でも、もっと出来ると思っていたのに』とか何とか言って。
何となく怪しいし、すぐに話を誤魔化したから、
まだ、隠してることがあるような……気はしたんですけど」
下唇を口の奥に押し入れるように、
アレハンドロは唇を噛み締める。
「……疑ってたのか?」
「信じたいじゃないですか?……仲間だと思ってたから」
ワイリーの眉が少し上がった後で、
それが下がると共に、彼は口を結び、同時に顔も下げる。
「……ツラいな」
そこから、起こるのは1分ばかりの沈黙。
互いに顔を反らしていたが、そのうちにワイリーから、
「そういや」
と話が切り出され、アレハンドロの目がそちらを向く。
「どうなんだ?……俺の後釜で入った2人は?
もうコミュニケーションは取ったのか?」
「えぇ。女の子の方とはもう」
真顔でそう答えるアレハンドロに、ワイリーが笑う。
「相変わらず、手が早ェ」
なんて言いながら。
「いやいやいや。別に口説いたりしてませんよ?まだぁ」
少しアレハンドロの顔にも笑みが溢れたが、やや表情が固い。
「何て子だ?」
「ラグネル・サンマルティン……
同い年なんすけど、まあ、軍では1年後輩みたいっすよ?」
「……オマエにも、後輩がねぇ」
包帯の中に手を入れ、顎を軽く掻くワイリー。
「……いけそうか?」
「……厳しいっすねぇ」
「あ、マジで?……何?あんま可愛くないの?」
若干、仰け反るワイリー。
「いえ……まあ、可愛いていうより、クール系ですけど。
なんか真面目すぎって感じで。冗談、あんま通じなくて」
「……そういう感じか」
壁にもたれると、今度は髪を触り始めるワイリー。
「もう1人は……確か……」
「えぇ」
何気にワイリーの手が止まり、顔がアレハンドロに向く。
「ダスティン・ホークって……名前っすよ。
フレイヤ中隊の大隊格上げと共に、
ロイヤル・イタリアン部隊から移籍だそうっすよ。部隊ごと」
「それ……ロイヤル・イタリアンの方はどうなるんだ?」
「いや、別に……
ホーク小隊自体、交代で入った、非イタリア系の部隊っすからね。
しかも、ダスティンさんってのが、
精々俺より2、3年先輩ぐらいの若いリーダーで、
元々、任期が1年程度だったらして。
まあ……あと2、3ヶ月、本当は任期が残ってるらしいんですけど。
いいタイミングだからって、移籍だそうで」
ふーんとでも言いたげに、ワイリーが頷く。
「多分だが、『元』義弟だからだろ……アスカの。
ルカーニア司令お得意の嫌がらせの類いだろうぜ」
「……はぁ」
「そのうち、異動だって言われるぜ。南北アメリカか、アフリカかに」