機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神 作:申業
廊下を進む足音。数は3つ。
2つは長靴の鈍い音で、1つはピンヒールの乾いた音で。
左右を歩く長靴が、
爪先の部分が黒いことを除けば白一色なのに対して、
中央を進むピンヒールは黒。
見上げていけば、3つの足がほぼ等間隔で並んで進んでいて。
真ん中を歩く足は細く、左はそれよりは逞(たくま)しく見えた。
他方、右を歩く足は真ん中よりいくらか細いと見える。
また、左右の足は白い長靴の上に白のスラックスが続いており、
生の足なんぞ見えないどころか、
靴とボトムズの境目すら定かではないが、
真ん中の足は足首の付近から膝小僧のすぐ下まで、
素肌が露出している。
もう少し更に目線を上げていけば、
中央を歩く足は腿から腰までグリーンのスカートが覆い、
左右の白いスラックスは、
右はうっすら青みがかったワニ皮に銀に輝く金具が止めるベルトに、
左はアンティークな風格を持つ明るい茶色のレザーベルトによって、
それぞれ吊り上げられていた。
更に上を見上げていくなら、中央と左は、
まず白いナポレオンベスト(ORDERのものの色違い)が見え、
次いで脇腹のベストの隙間より、
その下に着ているグリーンのシャツが確認出来るだろう。
これが右だけは、ベストの色が赤で、シャツが青という違いがある。
より上へ上へと目をやれば、
まずは皆が一様に赤い肩当てが見えて、赤い襟が見えて、
この辺りで中央と右の人物には、
背中にかかる長い髪も確認できよう。
髪の色は、中央は茶色で、右が白っぽい金色と違うが。
続いて見えるのは、左の髪である。
これが後ろから見て、中々に特徴がある。
一口に言えばおかっぱ気味の短髪ということになるのだろうが、
耳の上のところが寝癖なのか、ファッションか、
ムクッと盛り上がっているのである。丁度、カエルの目みたいに。
3人の中で、若干ではあるが、前を歩いたのは右の彼。
……なんて、回りくどい言い方したが、振り替えれば分かろう。
その赤い目で。
ダイである。ダイ・フーディーニ。
中央はマユ・ヴァイデフェルトで、左はシージー・クラポー。
シージーはフルネームで呼ぶのは初めてか?
まあ、何にせよ。知らない奴等じゃないことは確かで。
とにかくダイが自動ドアの指紋認証に触れて、これを開けると、
そこは射撃場。
例によって青白い壁に囲まれた部屋の中に、
更に暗い緑で、しかし透ける色の囲いがいくつも並んで合って、
この緑のパネルが縦の境であるのに対して、
更に横の境として、大きなガラスの壁が設けられている。
部屋の奥には、このガラス越しに芝生が引かれたゾーンがあり、
その更に奥にいくつもの丸で縁取られた人間型のパネルがある。
今、そのパネルのひとつに穴が空いた。
軽い銃声と、下に落ちる薬莢の乾いた音と共に。
「……先客がいたようだな」
ダイの呟きを聞いてか、聞かずか、
あるいはドアが開いた時点で気付いていたのか、
緑のパネルで4つばかり向こうにあった人影が動いた。
まず、銃を下ろして、次に耳に当てていた黒いイヤーマフを外す。
そこから1歩下がれば、その髪が見えた。
黒い髪。思わず、ヴァイデフェルトが、
「……副長」
と目を伏せ。
次の瞬間には、俯いたヴァイデフェルトの耳に聞こえてくる足音。
その視界にねじ込むように、白い腕が彼女の胸の前へ突き出された。
「初めまして」
という声に顔を上げれば、そこにいたのは黒髪の男。
しかし、ただに黒髪という訳でなく、
生え際が赤いところから、本来は赤毛であることが分かる上、
ツバメの尾のように中央を境として、左右に分かれた2つの前髪に、
メッシュのように一部の毛で赤を残している。
そんな男。
「……貴方は、確か」
なんて言いかけるダイを制して、その彼は答えた。
「ダスティン・ホークです。よろしくどうぞ」
ほぼ、時を同じくして。
艦長室で作業中のルイス・ハビエルの下にも尋ね人があった。
『ラグネル・サンマルティンです。ご挨拶に参りました』
そんな声が部屋の外から聞こえて、
教壇のようなテーブルの上PCを弄っていたハビエルの手が一時止まり、
「……どうぞ」
との言葉を返すと共に、イスに凭れた。
自動ドアの開閉する横で、PCを閉じるハビエル。
前を向けば、そこには一人の女性が。
「艦長に代わり、私……ルイス・ハビエル副艦長がお答えします。
ようこそ、アルメイダ隊へ」