機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神 作:申業
あの後、ダスティンとあの3人は、
「とりあえず、ご飯でも」
ということで、食堂に向かうこととなる。
時間帯は11時頃。
朝飯にしては遅すぎるが、昼にはやや早いという頃合い故、
必然的に食堂内はガラガラ、
彼らが入ってきたときには、
奥の方で係の者が朝食の片付けでもしているのであろう、
水の音、あるいは蒸気の音などが、
思いの外大きく聞こえてきていたところだった。
「……これは広々使えるねぇ」
と呑気そうに笑うダスティンとは裏腹に、
「何か職員の人に悪いね」
なんて苦笑するヴァイデフェルトがいたりして。
ダスティンの向かいにヴァイデフェルト、
ヴァイデフェルトの右にシージーという配置でもって、
カウンター向かいの左端の方へ陣取った彼ら。
テーブルの上、ヴァイデフェルトとシージーの前には、
お冷やが置かれている。
間もなく、ダイがカウンターの方から来て、
「……11時半からだそうだ」
との報告と共に、ダスティンの左側に腰かける。
それと同時に、自身とダスティンの前にお冷やを置き、
ダスティンから手を上げて、
「ありがとう」
とのジェスチャーを受けた。
「やっぱり早すぎたね」
「だな」
見合わすヴァイデフェルトとシージー。
……その実、2人ともダスティンに何を話したものかと、
困っている様子で。
しばらく見合わせたままでいれば、
「……ホーク小隊長」
と口を開いたダイの方へ、視線が移ろう。
「別にダスティンって呼んでくれて構わないよ?
年齢的にも何歳もは違わない筈だし」
笑うダスティン。
直後、例の2人の視線が今度はダスティンに向いた。
以降、彼女らはテニスの審判みたいに、
ダスティンとダイと、
話し手が変わるごとにそちらへと顔を向き直すこととなる。
「……それなら、ダスティン。ひとつ聞かせてもらっていいか?」
「幾つでもどうぞ」
その前に、とお冷やを口まで運ぶダスティン。
「……フレイヤ隊への異動は命令か?志願か?」
「んー」
そう声を漏らしたとき、ダスティンの口は、
まだお冷やの入ったガラスのグラスから離れていなかった。
ゆっくりとテーブルに置くと共に返答する。
「……両方って答えるのが、正確なんだよねぇ」
ダイは黙ってしまった。残りの2人も反応できないでいる。
「行けってのは、まあ、命令というか……
んー、何て言うんだろう?提案されたって感じなのかな?
ぶっちゃけ、俺以外にも何人かの小隊長に声かけてたみたいで、
俺はに……アスカ副長の部隊ならって思って、
じゃあ俺が行きますってことになったんだよ」
「兄さんの部隊だから……か」
「……えっ?」
ダイの返答が意外だったのか、犬のように首を傾げるダスティン。
次に反応したのはヴァイデフェルトだった。
「あっ!」
とダスティンを指差し、直後に本人が振り返れば、
失礼と思って慌てて手を下ろした。頬がうっすら赤みを帯びる。
「あっ、あの……」
なんて顔を下げるヴァイデフェルトに、微笑みかけるダスティン。
シージーだけは状況が分からないという風な顔で、
ヴァイデフェルトの横顔を見つめていた。
そんな状況で切り出したのはダイ。
「シージー」
名を呼ばれて向き直るシージー。
「……あの戦場で、副長のことを、そう呼んでいた者がいただろ?」
「…………」
答えらぬまま、ずっと目を見ているのが辛かったのだろう。
上を向いて目を反らすシージー。
「……『凄いよ、兄さん』とか、なんとか言ってよ」
ダイの言葉。
「確か……『流石』って言ったと思うんだけど」
遮る、そんなダスティンの顔をダイが瞬時に向いて睨む中、
「あぁ……あの赤いジ・ゾウムのパイロットか!」
なんてシージーが思い出すのである。急にダイの方を向いて。
ダイは、いやダスティンをも、振り向く。続く、
「今度からは、セイバーのパイロットになるけどね」
とのダスティンの応答には、
「「えっ!」」
とヴァイデフェルトとシージーとが同時に反応したが、
ダイだけは動じることなく、お冷やを飲んでいた。
少しばかり恥ずかしそうに顔を見合わせる2人に対して、
容器の上の方を掴んでいた指を目安とするなら、
もう指の2、3本ばかし分だけあった水かさが、
この指の1本分ほど下に一本線を描いたところでもって、
ダイはグラスをテーブルに音が立つ程度の荒さで叩きつけた。
自然、右と向かいの視線がダイに向く。
「問題はそこじゃない」
とは、ダイの台詞。
左右の前髪が垂れる中、隣からでは見えない程に顔を下げたダイを、
ダスティンは横目に見ていた。
「アンタが……
ルカーニア司令のスパイじゃないって、証拠はあるのか?」