機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神   作:申業

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PHASE-04 ignited(6/7)

「……今、アフリカって言った?」

聞き返すハビエルの声に、ラグネルは平然とした様子で、

「私は、そう窺っていますが」

なんて言い放つ。

丁度、光の加減で、ラグネルの瞳は、

かけている赤縁眼鏡のガラスに遮られ、このときは見えていない。

ハビエルはというと、

「どうして、うちの隊長はそんな重要なことを連絡しないのかねぇ」

なんて呟いたが、右手で口を覆い、かつそっぽを向いてのこと。

ラグネルが微動だにしないところを見るに、

はっきりとは聞こえていないらしい。

「……いつになるか、言っていたの?参謀長は」

「3日後です」

「……はい?」

聞き返せば、ラグネルは返す言葉を失っていた。

鼻の頭を掻き、またそっぽを向くハビエル。

「……あ~あ、もう」

「何か、問題でも?」

ラグネルを見つめ返すハビエル。

「大アリよ」

溜め息と共に、下がるハビエルの顔。

気持ち、その髪も揺れて、

コアラの耳のように左右に分かれて垂れているように見える。

「うちの副長……アププリウスに呼ばれてんのよ。

5日後にならないと、帰って来ないのに」

「……確か、アスカ副長は、ホーク小隊と合流の後、

6日後に降下する予定とのことですが」

「えぇ……」

足元を向きながら呟くハビエル。

「……マジ?」

頷くラグネル。

「てことは何よ?

……副長抜きで、しかもホーク小隊の救援もないままに、

敵地のど真ん中に降りろっての?」

「現地ゲリラの協力があるとのお話でした」

「……はぁ」

後頭部、というよりは首の裏側辺りになるのだが、

まあ、その辺りを掻きながら、顔を反らしているハビエル。

少し間を置いて答える。

「部下の裏切りを食らったばかりのあたしら部隊に……

もっと信用できない協力者を宛がうとは、まあ……スゴい発想ね」

ラグネルは何も答えなかった。

……渾身の皮肉がスベったハビエルは、

エヘンエヘンと咳払いをすると、

「ひとまず報告感謝します……アナタの方から何か質問は?」

「……私の部屋はどこですか?」

「あぁ……ちょっと待ってね」

慌ててPCを開くハビエル。

この女の髪というのが、どうにも変わっており、

ササッと弄っている間際に、

空いていた左手で髪をかきあげてみれば、

触られたおおよそ中央の髪が天を向いて逆立つのだから。

「……ええとね、ひとつ聞いてもいいかしら?」

「どうぞ」

1度ラグネルの表情を確認して、また画面に向き直る。

なおラグネルは先程から微動だにしていない。

「1人部屋の方がいい?……それとも」

「……1人部屋の方がありがたいです」

「あっ、そう……んー」

唸りながら、じっと画面を見つめたかと思うと、ハビエルは、

「この部屋がさぁ……」

と話し始めるのだが、

「……ジョーン・ウェールズ先輩と、

サマンサ・スクリーチ先輩がいらっしゃったお部屋ですか?」

そう、ラグネルに先に言われてしまった。

ハビエルは間が悪いという感じで眉をひそめて苦笑いしたが、

ラグネルは、

「……構いませんよ」

と即答する。

「なら……いいんだけど」

チラチラと顔色を窺うものの、ラグネルはノーリアクション。

「ええと……それだけ?」

「はい」

「………そう。それなら下がってくれていいわ。

部屋の鍵は今、アナタのカードで開くように設定しておいたから」

一礼し、退出するラグネル。

正に直立不動。動きもどこかロボットのようであった。

ハビエルが呟く。

「……逆に大丈夫かしら、あの子」




同じ頃、病院の自動ドアが開き、アレハンドロが出てくる。
ポケットに両手を突っ込み、物憂げな表情で。
間もなく、足下が青白い大理石の石畳から、黒い砂利道に変わる。
そんなときに、1台の黒い車が彼の前に止まった。
といっても、俺のときみたいな黒塗りセンチュリーじゃなくて、 
黒は黒でも車種はダイハツ・ムーヴコンテ。
ドアを開け、アレハンドロが入ろうと、中を覗けば、
その動きが止まる。
運転手が彼の方を向いて嫌味っぽく言う。
「……お疲れ。アレハンドロ」
「パーディ!」
運転手はパーディタ・ラドクリフ。
「おい、どうして……」
と言いかけ、詰まるアレハンドロの言葉。
何せ、見てしまったから。
軍服のシャツとスカートの隙間から垣間見える包帯が。
複雑そうな表情を浮かべるアレハンドロに、
パーディは肘で包帯の部分を隠すと、
「……エッチ」
なんて笑ってみせる。
「……んなんじゃ、ねぇよ」
顔を反らしながら、助手席に座るアレハンドロ。
「じゃあ、何……」
なんて言いかけるパーディの言葉は遮られた。
突然、覆い被さるように身を寄せ、荒っぽくその唇を奪った、
アレハンドロによって。
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