機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神 作:申業
──不幸だったのは、
ヨシゴイ・アデリー・ガルの3小隊である。
《マッド》がオラン・エス・セニア空港を飛び立った正に直後、
メルス・エル・ケビール市より空港に程近い、
サンタクルス城の近海へと、
アデリー・ガル両隊の、
計20余りのモビルスーツ部隊が上陸を試みていたのだから。
まずは、アデリー小隊、
カブトガニのようなモビルスーツの群れが大挙して押し寄せてくる。
名前は《ZGMF-31R ジ・ズクト》。
《アビス》に酷似した見た目の《ジズ》といった具合の、
水陸両用機である。
彼らの頭上では、ガル小隊の地上用に改修された《ジズ》数機が、
ペットを見守る飼い主のごとく飛んでいる。
さて、山の上に建つ白き宮殿(サンタクルス)にも見下ろされ、
埠頭、そして砂浜へと進んでいく黒き《ジ・ズクト》の足取りは、
重荷を負って陸に上がってきたダイバーよろしく、
鈍重で遅いものと映る。
ただ、この浜自体には潜水艦もモビルスーツもおらず、
行く手を阻むものはない。
問題はその先で、上陸を想定した市街地の方にて、
フェイズシフト装甲の変色機能により、
上手くその身を周囲に溶け込ませて待機する、
《ウィンダム》、《ワイルドダガー》、
そして、《GAT-720A7 フォビドゥン・シー・ドラゴン》、
水陸両用に改良された《フォビドゥンブルー》の後継機、
などである。
あるものは建物の影に隠れるように、
またあるものは匍匐(ほふく)して見えないように、
当然、レーダーには敵の存在は表示されている訳だが、
一種の保護色となっている訳で、
かえって前進する2小隊を警戒させる抑止に働いた。
だが、立ち止まれば、かえって的になりかねないから、
結局は歩を進める2小隊であった。
やがては第一陣、
5、6機あまりの《ジ・ズクト》が陸に上がった。
浜辺を這う姿はなおのことカブトガニのようだった。
やがて甲羅に割れ目が現れ、頭部は貝のようなヘッドギアへ、
他は両肩に付随、左右とも更に2つに割れて、
計4枚の実体シールドへと転じる。
そうして人型に変わった姿は、
流石に《ジズ》や《ジ・ゾウム》らに似ている。
続いてビームライフルに撃たれ、
1機の《ジ・ズクト》が上陸直後に爆発。
しかし、多くは例のシールドに弾かれた。
《ジ・ズクト》たちは、胸部中央から大口径のビーム砲を放ち、
攻撃する。
ビームライフルなどが届く射程だ。
《ジ・ズクト》の攻撃が届かないハズもなく、
仕返しとばかりに《ウィンダム》を1機、
《ワイルドダガー》2機を撃墜。
更に後方では、市街地のビルの屋上に、
1機の《ウィンダム》が陣取り、
《ジ・ズクト》の群れを狙っていた。
その体躯すら上回る、大型のビームランチャーを肩に乗せ、
片手は引き金に手をかけ、もう片方はフォアグリップを掴み、
片足は足踏みミシンのように備わった、
レバーに足を置き、固定している。
「……死にやがれ」
という《ウィンダム》のパイロットの掛け声と共に、
火を吹いたビームランチャーは、
上陸済みの《ジ・ズクト》1機に加え、
後方にいたモビルアーマー形態の機体も、複数機巻き込み、
波間に火柱が立つ大炎上を起こした。
「よし……退避、退避っと」
ビームランチャーを持ち換え、
背中に抱えると、宣言通りに後方へ退避。
ビルを足場に、後ろ歩きするような形で、
後方の別のビルに向けて飛んでいく。
「…………はぁ?」
そんな声を漏らした《ウィンダム》のパイロットは、
別のビルから煙が上がっているのを確認。
「オーイ。こちらマイケルズ……誘爆か?生きてんのかぁ?」
そう無線で呼びかける彼だったが、反応はない。
「……オーイ!」
そういった2度目の呼びかけも無反応に終わり、
代わりに別のポイントから、
『敵が……敵がぁ!』
との無線が聞こえてきた。
「…………えっ?」
マイケルズは敵の位置を探したが、見つけることは出来なかった。
不意に現れた一本の光の槍が、
マイケルズを背中から一突きにして貫いたのだから。