機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神   作:申業

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PHASE-01 悪夢の胎動(4/9)

空でサザエを見下ろす戦艦5隻。

例えばルカーニアの旗艦『ベルフェゴル』なんかは、

その体型がクジラかジンベエザメみたいであるし、

付随する『ニスロク』も、『ベルフェゴル』より一回り以上小さく、

細身で、またザフト製には珍しい飛行甲板を機首上部に配した形態が、

どうにもコバンザメ臭い。

ロイヤル・イタリアン部隊の『メディオラーヌム』にしたって、

とぐろを巻いた蛇をイメージしたって言われるあの見た目が、

特に大きく口を開いたように見える機首の辺りなんかから、

むしろウツボじゃねぇのかって、気がしないでもない。

他にモーリス・ゴンドーというルカーニア傘下の別の大隊長が、

中型の戦艦『オズボーン』ってのを派遣してきたが、

これのモデルがゴブリンフィッシュっていう魚らしい。

まあ、上手く言えないが、

翼をウサギのポーズでも取る形で前に突き出した姿の鳥、

っていうのが近いかと思う。

ピンとこねぇっていうなら、ゴブリンフィッシュで調べてみな。 

とにかくそんな風で、

いずれの戦艦も魚か海獣みたいな容貌であったが、 

中でも、シャチのように丸みを帯びたシルエットで、

青っぽい灰色の下部と、黒っぽい紺色の上部が、

黄色のラインで隔(へだ)てられ、

丁度シャチの背鰭(せびれ)・胸鰭にあたる部分にて、

鉤爪(かぎつめ)のごとき突起がついている。

それが戦艦『フレイヤ』の姿である。

さて、このとき、中ではどんな様子であったかというと。

「……何をやってるんだか」

そう漏らす声が聞こえてくる。

声の主は、

ブリッジのおよそ中央に置かれた椅子に深々と腰を下ろし、

胡座(あぐら)気味に足を組んだ姿、

その上、足首の上に頬杖までついた女。

アーモリー・ワンでこそ、そこにいなかったが、

何を隠そう彼女こそ、本戦艦の艦長にして部隊の隊長たる、

ルシア・アルメイダその人に相違(そうい)ない。

「……何をやってんのよ。サムのヤツは」

不服そうに話すルシアの視線は傍らに控えるハビエルへ向けられる。

元々、フィリピンワシみてぇな間抜け面のハビエル。

このときは、目が合うなり、その目を丸めて、

なおのこと古いカートゥーンのようなアホ面を晒(さら)す。

とはいえ、そこはハビエル。

伊達に戦艦の副艦長なんかしちゃいない。

すぐに顔を戻して、多少伏し目がちではあるが、状況を説明する。

「……《カオス》の出撃時、パイロットは出撃を宣言しませんでした。

回線も切られています。何か、聞かれてはまずいことがあるか。

もしくは……乗っているパイロットが違うか」

目を閉じ、やや前傾姿勢となったアルメイダ。

「後者でしょうね。クソ」

それは、そうアルメイダが漏らした、まさに直後であった。

彼女らの背後にあったドアが開き、

一人の男が入ってくる。恰幅(かっぷく)のいい白人男性。

名前はトロ。トロ・サンタンデール。うちのメカニックだ。

そして入ってくるなり、

「……留置場から、例の女が逃げました!」

と、叫んだ。




もっとも、このときの俺たちに他所の話に耳を傾ける余裕はない。
何せ、俺が《カオス》のポッドに襲われた。それがまず最初。
脇腹を抉るように突き刺さる光の槍。
ヴァイデフェルトの悲痛な、
『後ろ!』
という叫び声が聞こえたときには、
もうポッドの砲口は光り始めていたところだった。
まったくヒヤリとした。
ただ、
無意識のうちに《カオス》のポッドの動きを確認していたのが幸運で、
反応自体はそう遅れなかった。
我ながら、手足がギリギリ届かない程度の間合いで、
完全でないまでも致命傷を避けられたのは大したものだった。
肉を切らせて骨を~なんて言葉があるが、正に。
左の脇の上辺り、胸よりは少し下辺りに空いた小さな穴。
爆発の衝撃がコクピットの左斜め上より押し寄せて、
体も右側に叩きつけられる。痛いって程じゃなかったが。
こういった芸当はワイリーにやらせとけって話。
フィギュアスケートのイナバウアーじゃねぇが、
背中側に体を反らしつつ飛んで、
その間に右手でビームサーベルを抜く。
第2射はこんな動きで避けられた。
動きそのままに、逆手で、スキーストックを地面に刺すみたいに、
サーベルにてポッドを貫いた。
『あ~あァ……もう少しだったのに』
あの気味の悪い笑い声が聞こえてきやがる。
そして背中のモビィ・ディックを起動させつつ振り返れば、
そこには《カオス》の姿があったが……
『イヒヒヒッ』
カオスの姿があったのは、ヴァイデフェルトのジズの後ろ。
左手を首にかけ、
右手のビームサーベルを横にしてコクピットの前に置いている。
人質を取った、といわんばかりに。
カオスの体は、本来は黒と緑の二色。しかし、今は違う。
およそ腐肉にも似た茶色のボディに、
露出した骨のごとき青みを帯びた銀色の装甲。
丁度、ダーティのそれと同じ。
『どうする?……副長さぁ~ん。ンフフッ』
「ジェイナス……ビフロンス……」 
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