機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神   作:申業

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PHASE-06 禁断の力(5/7)

『遅いなぁ……』

操舵手のザイロが漏らす声。

『このスピード……車並みだ』

なんて指摘したのは、電子戦担当のズワルトで。

『……ザウートでも、もっと速いですよ?』

これは副操舵手のマアトの台詞。

『考えにくいですが……敵は徒歩で移動中と推測すべきかと』

ザイロがハビエルへとそう言伝てすれば、瞬きしつつ、

『まあ……急に移動手段を変えてくる可能性もあるから、

皆、警戒は怠らないで』

ハビエルがそう答える。

そんな彼女は今、肘を曲げ、両の掌を合わせている。

ハビエルはそのまま、

『隊長、ここは……』

こう振り返ったものの、

そこにいた肝心のアルメイダ本人が、

『何?』

そう我関せずとばかりに、毛先を弄くっているもので、

『……いいえ』

と向き直ったきり、それ以上言及しなかった。 

『マユちゃん、モビルスーツを出させて!』

『はっ、ふぁい』

なんて返事で舌を噛んだヴァイデフェルトに、

ブリッジ内に妙な沈黙が生まれてしまった。

更に、

『すみませ……』

と謝りかけたヴァイデフェルトの声を遮って、

『……何それ』

なんてアルメイダが笑い出したせいで、

彼女の笑い声を聞きながら、皆が押し黙る事態に悪化。

それでも、

『……アビスが、動いてる』

というズワルトの指摘により、慌てて、

『アァビス、発進どうぞ!』

ヴァイデフェルトがそうした慣れないアナウンスを。

ただ、《アビス》のパイロットは返答しないまま、

飛び出してしまった。

『……はぁ?』

アルメイダだって、そう声に出したのだ。

そんな様子に違和感を持ってもよさそうなものだが、

この日のダイ・フーディーニにその反応はなく。

脳裏を過るのは、今は亡き彼女の記憶。

【「仲間を信じてる」って、アレハンドロが。だから……

だから私は……応えたい!その……気持ちに】

彼女はそう言っていた。

グナイゼナウにおける戦闘の終盤、

ホルローギン・バータルによって奪われる筈だった自身の命。

救われたのは爆発という偶然と、2人の仲間の協力だった。

その2人が今や、片方は裏切り、片方はもうこの世にいない。

ただ、そこに残っているのは、

その形見のごとき《ガイア》というモビルスーツだけで。

そんな《ガイア》には、今、別のパイロットが腰を下ろしている。

『……お先に失礼します』

との言葉に、ダイは言葉を返さない。

UFOキャッチャーみたいに、

アームにて持ち上げられた《ガイア》のボディが持ち出されていく。

そこから、右目にかかった前髪を後ろへと撫でるごとく押し返す、

ダイの所作が終わり、手が顔から離れる頃には、

『ラグネル・サンマルティン……《ガイア》、行きます』

の音声に続けて、パチンコが弾を飛ばすみたいな音が聞こえてきた。

「……認められない。認めたくないな。俺は……薄情かもしれないが」

胸を押さえて倒れる、

ジョーン・ウェールズの姿がフラッシュバックして、それで……

『《3号機》……発ッ進ン、どうぞ』

ヴァイデフェルトの声に静かに答える。

「《インパルス》で…………ダイ・フーディーニだ……出せ」




まもなく、ダイを乗せた《Im/AーP》は、
バスタードソードシルエットと空中にてドッキングする。
それから、緑広がる小高い丘の上に降下した。
背後にはラグネルの《ガイア》が、
右前方には《アビス》の姿がそれぞれ。
「アレハン……」
それは突然だった。ダイが最後まで言わせてもらえない程に。
『……好きにしていいと、隊長は仰られた。
俺はその通りにさせてもらいますよ』
『あれ……アレハンドロ!《アビス》で出たんじゃ……』
「……!?」
ダイの額に流れる冷や汗。
そんな汗が滴るのに合わせるように、
《アビス》がゆっくり振り返っていき……
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