機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神   作:申業

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その直後に、プライベート回線にて、
「なあ、ダイ……少し、過敏なんじゃないか?
いくら、サムのことがあるとはいえ……さぁ。
ホーク小隊長の時といい……今といい……」
そう呼びかけるシージーに、呼ばれた当人は返事を返さない。
「……なぁ?」
『敵が近付いている。無駄話をするな』
「……何だよ、それ」
確かに、足音は迫っていたが。
「いつも、そうだよな。オマエはさ。
いつも都合が悪くなると、ヘンに正論振りかざしてさ……
頭いいからって、ズルいんだよ。本当は、自信ないくせに……」
『………………』
「……何とか言えよ。クソッ」
シージーは苛立ち、テーブルの端を右の拳で叩いた。
『計器に傷がつく』
「……うるせぇよ!!」
怒鳴りがちに、機体にビームライフルを構えさせるシージー。


PHASE-06 禁断の力(7/7)

……そうしている内に、遂に数十メートル先、

右脇のビルとビルの間から、末端に穴の空いたマントが見えた。

レーダーにも同地点に存在する敵の情報が掲示されていた。

僅かに見えたマントの先が海風に吹かれて微かに揺れ、

更に少しすれば足先も見えた。

モビルスーツのサイズからすれば、

せいぜいお子様ランチの上にでも乗った小さな旗、

といった程度に見えていたマントが、

モビルスーツを覆うローブのように見えたかと思ったところに、

暖簾(のれん)を潜るがごとく頭を下げた《マッド》が顔を出し、

それがマントと明らかになったときにはもう、

か細い足はまるで旗の竿、角を擁する頭はまるで竿の穂先、

そしてマントは……戦場にはためく軍旗のようで。

「来た!」

『……見れば分かる』

「うるせぇよ!クソッ!」

とは言いつつも、ダイの指示通り、

両肩に乗ったミサイル弾の計4発を一斉に発射する。

相手は一本道の向こう側であり、障害となるものなどはなく、

ミサイルたちは斜めながら直線を描く形で、

《マッド》の方へと進んでいった。

シージーらから見て、縦1列に並んだこのミサイルたちに被り、

《マッド》の首から下が見えなくなったところでもって、

辛うじて見えていた相手の横顔が、こちらを向いた。

「……あッ!」

と思わず、声を出したのはシージーで。

この直後でもって、動き出した《マッド》。

あのジャックナイフをまたも伸ばしたらしく、

その剣先ぐらいはシージーの方からも見えた。

剣先はミサイルの列の一番下のものを、端より切りつけると、

4つとも斜め一直線を描いて切断。

そうして直ぐに、またマントを翻して1歩引き下がった《マッド》。

この数秒、

見つめていたダイらは《マッド》のその異常なる瞬発力と、

その動きに合わせて起こる赤い残像に、思わず手を止めたというが。

先に動いたのはダイで。

続いてシージーの目線がダイの機体の方へと向いたとき、

彼を乗せた、この白き《Im/AーP》は、

自分の側にあったビルに寄って、体を斜めに構えると、

左のスカート部から抜いたビームガンで、《マッド》のいた方に乱射。

ラグネルの《ガイア》もひとつ前にあった右脇のビルに隠れ、

ビームライフルで攻撃する。

『何してんだ!シージー!撃て!!』

「わっ……分かってる!」

慌ててシージーもビームライフルに加えて、腰からビームガンも抜き、

撃ち込むが……

「……あッ!」

ミサイルの爆発が巻き起こす煙より、

巨大にして真っ赤な光の翼が姿を現したかと思うと、

マントを気球のごとく膨らませた、あの《マッド》が飛び上がり、

その姿を現すのである。

照準を合わせる3人だが、当たらない。いや、というよりも……

『……ズレてるッ』

ダイが気付いた。

あえて言うまでもないが、それはミラージュコロイドの力。

《デスティニー》由来の攪乱能力である。

模擬戦で《ヴェスティージ》に乗った俺がそうであったように、

レーダーの示す反応、あるいは目に見える対象が、

実際に存在する位置とは異なる地点に観測されている。

その上、《マッド》はここまでの進軍速度の遅さが嘘のように、

急加速を始めた。異常なスピードだ。

照準を合わせる余裕がまるでない。

4つの銃口は、

なおも《マッド》が飛び立った最初の地点に向いているのに、

もう当の相手が数メートル先上空に飛んでいるのだから。

それも、シージーを見下ろす位置に……

『……シージィー!』

叫ぶダイの声に、今度はシージーが答えない。

『……動けェェェェ!』

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