機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神   作:申業

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PHASE-07 強者である為に(2/7)

この間、パーディは傍観していたのかと言われれば、

勿論、そうではなく。

ずっと狙撃のチャンスを窺っていた。

匍匐するように身を横たえ、

両肩のシールドをトーチカ代わりにして最低限防御を固めながら。

モビルスーツの背丈からすれば、

ちょいと高い跳び箱程度の高さしかない丘の上で。

敵意を見せられれば、簡単に仕留められるであろう。

相手は人間ではなくモビルスーツなのだから。飛べもする訳で。

しかし、怯えていても始まらなくて。

首筋に乗っかったマグヌス・バラエーナ砲と、

額のビームガン、そしてミサイルで、《マッド》を狙う。

察しがいいのは、意外だが新人のラグネルの方で。

首を落とされた辺りから接近戦の不利と《アビス》の援護射撃を宛に、

少し距離を置き、頭部ビームガンとスプンタ・マンユ砲にて、

砲撃に徹していた。残念ながら当たりはしないが。

その反面、本来冷静である筈のダイが遥かに冷静ではない。

「何、焦ってんのよ……似合わないって!」

シージーの仇故か?

一太刀たりともダメージを与えられないどころか、

肩やら脛(すね)やらに傷をつけられる中、

後退りはすれど、距離を取るということをほとんどしない。

そう言えば、いくらかマシに見えるが、実態はあまりにも無様。

仲間の復讐という理想と、小賢しい自己生存との間に揺れているだけ。

怒りに我を忘れているなら、もっと向こう見ずに前に出て、

恐らくはもう切り殺されている。

だのに、そうはならかいままに、ただ矢面に立ち続けるだけ。

攻撃の手はとうに止まっている。

あるのはサンドバッグのように立ちはだかり、耐え続ける姿だけ 。

ほぼ密着状態につき、《アビス》としても攻撃を加えられない。

「……もう!頭冷やせ!」

思い切って、ミサイルの方を放った。放ってしまった。

撃った後で、

「あっ!」

と気付いても、もう遅く。

ダイは見えていないのだ。周りがまるで。

万が一にも《マッド》が避けようものなら、あるいは……

まあ、結局《マッド》は回避はしなかった。

ただ、一瞬、パーディの方を睨むがごとくに振り返ると、

例によって旋回し、ジャックナイフにてミサイルを切りつける。

とはいえ、今回は少々事情が違って。

接触と間もなく爆裂するミサイルを、である。

背後には砲撃を続ける《ガイア》がいるにも関わらず、である。

爪楊枝でするみたいに刺し、砲丸を投げるみたいに振りかぶり、

バッドで殴るみたいにダイの《Im/AーP》にぶつける離れ業(わざ)。

ミサイルは《Im/AーP》を殴打したときに破裂した。

ビームを撒き散らした。

頭へモロに食らってしまって、《Im/AーP》は、体中穴だらけに。

コクピットだけは無事だったようだが、顔にも穴が開き、

背中からビルに叩きつけられてしまう。

……しかし、まあ、これで距離はどうにか取れた。

「こんのォ!!」

などと勇んで立ち上がると、

《アビス》全身の砲口という砲口から砲火の限りをぶつける。

勿論、この間も《ガイア》の砲撃は続いているし、

ダイも意地か、起き上がり小法師とばかりに、ビームガンを乱射。

「これで一発ぐらいは……って!」

そんな雨霰と降り注ぐ攻撃をどう避けたかといえば、

回避などしない。

またしても、あの光の翼を広げて、一歩半ばかり前に出ただけのこと。

たったそれだけで、一切の攻撃から逃れてみせた。

「……マジ悪夢」

もう笑うしかないパーディ。

かくなる上は……と、前に出ようとしたパーディは、

レーダーなんて見ちゃいなかった。見る余裕はなかった。

だから、背後に迫る味方機に気付いていなかった。

だから、急にその腕を引き留められて驚き、振り返る。

『ダイもよせと言っただろ?』

声で分かった。

「……ワイリー先輩?」

パーディを乗せた《アビス》の腕を、

掴んで背後に佇(たたず)む、ワイリー・スパーズの《セイバー》。

傷は大丈夫か、と尋ねる立場はパーディにはない。

何せ自分が手負いで戦場に立っているのだから。

『俺自身……驚いてんだ。

傷が塞がって、新しいモビルスーツを受領するまでは、

冷飯食らいに徹するつもりだったのによ。

……アイツが引っ張り出しやがった』

「『アイツ』って?」

『……アイツだよ』

数秒、《マッド》が来ない違和感もあり、戦場に目を向ければ……

「……なるほどッ」

苦笑したパーディの視線の先には、

慈悲の剣カーテナを腕に、《マッド》の前へ立ちふさがる、

《ヴェスティージ》の姿があった。

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