機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神   作:申業

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PHASE-07 強者である為に(6/7)

気付いていない、のはアレハンドロも同じだったが。

熟(つくづく)……アイツは愛されている、と思う。

ダイが動いた。

ダイは、アーモリー・ワンでの俺の戦いを見ていない訳であるから、

何故、その発想に至ったのかは分からない。

後に映像で確認したのか? それとも、咄嗟の機転だったのか?

何にせよ、

アイツは動かない《Im/AーP》のボディから脚部を切り離すと、

その勢いに任せて一気に《マッド》へと近付いた。

ラグネルにしても、そう。時系列で言えば、彼女の方が早い。

パーディが砲撃を加えた時点から、

攻撃をしていなかった彼女が、ここまで何をしていたかと言うと、

動いていた。

レーダーには反応があるとはいえ、極力物音は立てずに。

物陰から物陰へ。《マッド》を狙撃する絶妙な位置へと。

ワイリーとパーディについては言わずもがな。

こちらもあまり意味はないのだが、

以前と同じく機体を透明にした《セイバー》が降下してくる。

念の為に近くに転がっていた人間大の岩を後ろ足で蹴飛ばし、

音声的に撹乱(かくらん)すると共に、

降下する瞬間だけ、《アビス》の背後について、

青き炎を上げる背中のスラスターを隠す。

そうして地上に降りてすぐ、

《アビス》の前に《セイバー》が動いた。

《インパルス》、《セイバー》、《ガイア》、《アビス》……

色で言えば、白、赤(このときは透明だが)、黒、そして水色と。

敵の背後に迫るダイ、左側に砲口を向けるラグネル、

正面右側にはワイリーがいて、そのやや後方にパーディがいる。

……正面にて、青き翼を広げて舞い降りる、

アレハンドロの《ヴェスティージ》については、言わずもがな。

さぁ、白鯨の御出座(おでま)しだ。

首を下げた《ヴェスティージ》が、モビィ・ディックをぶちかます。

至近距離に加え、モビィ・ディックの初速度を考えれば、

アレハンドロが確信を胸に攻撃へ及んだことは想像に難くない。

……ただ、その淡き期待は脆くも裏切られることとなる。

表情豊かなアレハンドロ・フンボルトという男が、

予想外の事態に言葉を失っていた。

考えたことであろう。どうしてだ?と。

どうして……自分が地面に叩きつけられているのか、と。

「……ヤバッ!」

大急ぎでスラスターを起動した。

無様にも頭から地面に倒れた《ヴェスティージ》の身体が、

青き翼の光輝くのに合わせて、海の方へと一気に押し出された。

頭と砲身を引き摺(ず)り、アスファルトに火の粉を巻きながら。

ただ、その《ヴェスティージ》の機動力を以てしても、

完全には逃れることは叶わず、

《マッド》に両翼のおおよそ後ろ半分を切り落とされてしまった。

その際、切断の衝撃で《ヴェスティージ》に弾みがつき、

勢いに任せて一回転すると、

今度は両膝を地面と擦りつけながら、砂浜まで押し返された。

カーテナを手放し、ブレーキ代わりに左手を地面に添える。

《ヴェスティージ》の動きが止まったときには、

舗装された道路を過ぎており、爪先は砂を踏んでいた。

そこまで来てやっと、

「……何されたんだよ!クソッ!」

そんな憎まれ口を叩く余裕がアレハンドロに生まれる。

さて、砲身を確認してみて驚いた。何せ、潰れていたのだから。

そうして思い出す。砲撃の瞬間を。

例によってミラージュコロイドが正確な位置を教えなかったとはいえ、

距離が距離であるから、当たらないハズはなかった。

ただ、あのとき、《マッド》の両腕が光ったように……

「……ッ!」

文字で表記することは難しいが、そんな声だった。

アレハンドロの目に映ったのは、

芋虫のように這って進み、ビームガンを乱射する《Im/AーP》に、

隙間より狙撃を試みる《ガイア》、

砲撃を加えつつ、自身の方へと後退してくる《アビス》、

そして、それらを全て回避しつつ、

《セイバー》が切りつけるビームサーベルの刃を、

掌で受け止める《マッド》の姿だった。

その光景は僅か一瞬で、

すぐにビームサーベルの方が手を引いたが。

《マッド》の恐るべきは回避の瞬間、

レーダーには表示されていようと見えはしない《セイバー》を、

ジャックナイフを伸ばして追撃し、

右腕を切り飛ばしてしまった技量であろう。

もっとも、アレハンドロの目に止まっていたのは、そこではなくて。

あの光は何だったのか?……いや、まさか。

「……《デスティニー》だとでも、言うのかよ!」

辻褄が合うのは、実証済み。となれば、あの腕の光は……

「パルマフィキオーナか!」

ジャックナイフを避けて、懐に入ったとみられる《セイバー》の頭を、

鷲掴みにして、掌のビームにて消し飛ばす《マッド》。

その激しさゆえ、吹き飛ばされた見えざる《セイバー》の身体が、

アスファルトの上に横転。これが随分と大きな音を立てた。

《Im/AーP》はスノーボードのように足蹴にし、

《ガイア》はブーメラン状の武器を投げて攻撃の手を止めさせた。

今、《マッド》は海岸線を、

……《ヴェスティージ》を見据えている。

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