機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神   作:申業

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PHASE-08 青き闇の中に(5/7)

「ダイくん、そういう言い方はちょっと……」

「よく言えるな……アイツに銃口を向けられたクセに。

だから今日だって、話しかけられないんだろ?違うか?」

そう詰め寄られれば、ヴァイデフェルトも返す言葉を持たない。

「何が歴戦の英雄……何が伝説のパイロットだ。

そりゃ、自分は戦果も挙げられるハズだ。

部下を省みず、強敵ばかりを相手にしゃしゃり出ていけばなぁ。

ジェイナス・ビフロンス、カーン・カーァ、

それから、例の頭足類みたいなモビルアーマーと。

大した戦果だよ。でもなぁ……その間に何が起きた?

仲間が何人死んだと思ってる?

ジョーンのときなんか、あの人がビフロンスを捕虜にしようなんて、

バカな判断しなきゃ起こらなかったことじゃないか?

今回だって、もっと早く着いてれば、

シージーを助けられたかもしれないのに……

そんなんだから、サムの裏切りにも気付けないんだよ!」

荒っぽく缶を握り締めれば、空と思われた中から、

ビールらしき黄色い液体が噴出し、ダイの腕を濡らした。

「ダイくん」

「……チッ!」

そうダイが舌打ちをした直後、

右側からアレハンドロの左腕が伸びてきて、彼の胸ぐらを掴んだ。

「何だよ?アレハンドロォ!」

アレハンドロは顔を下げている。

「……ざっけんな」

と一言言うにも、ボソリとしか聞こえてこない。しかし、

「テメェが上手くやれなかっただけのことを、

副長に当たってんじゃねぇ!」

そう怒鳴ると共に、その顔はピンと跳ね上げられた。

「……何だと?」

「スパイが出たからって、後輩なんかにビビってよぉ~……

シージーが殺られた途端に冷静さ無くして、皆に迷惑かけたクセに。

よく言えるなって言ってんだよ!他人のことなんかよぉ!!」

アレハンドロの勢いに、言葉に詰まるダイではあったが、それでも、

「何だ?カッコつけて前に出て、皆に守ってもらったヤツが、

随分偉そうじゃないか。ええ?」

などと嘲笑。

「……俺は誰のせいにもしてねぇ」

「まるで俺が人のせいにしたみたいな言い方だな?勘違いすんなよ。

俺は事実を言ってるだけだ。

あそこに座ってるあの人は、そんな人なんだよ。

俺たちを助けてなんてくれない。

自分さえよければ、それでいいって……思ってるに決まってる。

いい機会だから、俺が提言してんだ!黙って聞け!」

言葉の激しさに、唾が飛んで、

咄嗟に1度は顔を逸らしたアレハンドロではあったが、すぐに、

「屁理屈言うなよ!」

って言い返した。

「……どこが屁理屈だ?

現に敵わないと思って、敵に命乞いしたのは誰だったと思ってる!」

ダイの叫びに、店内が静まり返るも、

当の2人は気付いていないという様子であり。

ただ、アレハンドロも、

その1件については反論の言葉を持ち合わせていなかった。

「……違うのか!言ってみろよ!おい!!」

そう捲し立てるダイを、

「そうだ。俺が悪かった」

と肩に手を置き、宥めるのは……

「……副長」

そう呼んで、慌てて頭を垂れるアレハンドロに、

俺はかける言葉を見つけられなかった。

ダイは、その金色の髪をこちらに向けたまま、振り返ろうともしない。

「オマエが正しいよ。ダイ。俺は役立たずだ。

……オマエら2人が口論になって、店に迷惑かけるのだって、

俺の監督責任だ」

我ながら、意地悪な言い方をしたものだ。2人は何も答えない。

ゆっくり振り返り、例の婆さんに、

「……騒がせて申し訳ない。この2人は俺の部下でして。

俺が不甲斐ないばかりに、こういうことを起こしてしまった。

責任をもって連れて帰りますから、今日のところはご勘弁ください」

婆さんは何も言わなかった。

「トライン隊長、ラドクリフ隊長……お先に失礼します」

両隊長も何も言わなかった。

それからアレハンドロもダイも、

何も反抗することなく、何も反論することなく、店を後にする。

突如として何もかもが消え去ってしまったような静寂の中で、

積まれた氷が落ちる微かな音が耳に残った。

2人が店を出たところで、ふと振り返って気付く。

それが、あのビンタンとかいう女の入れたラム酒のグラスだと。

……何もなかったような顔で俺もドアの外へと。

それから数分後、残ったヴァイデフェルトは聞いたという。

「前は自分が怒られる立場だったのに……

アスランみたいになっちゃったなぁ。シンのヤツ……可哀想に」

なんていう、アーサー・トラインの溜め息を。

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