機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神 作:申業
──同じ頃であろう。時差1時間、空はまだ青かった。
ティンドゥフ攻撃か始まる。砂塵巻き上げ、近付いてくる影。
多くは地上用に防塵処理やらされている程度の違いはあれど、
見慣れた《ジズ》の類なのだが、根本的に違うものがいくらかある。
面長な顔と、やや小柄で広い肩幅。
例えるならば、牛が2本足で立ったような風体。
その名を《クジャタ》。《ZGMF-2101 クジャタ》という。
彼らは、総勢20数機からなる空挺部隊。
《クジャタ》1機に対し、土台となる《ジズ》1機、
それに、もう1機の《ジズ》が付き添うフォーメーションで前進中。
これが西側から攻め寄せる一方、北側から《ジ・ズクト》が進軍。
都市を防衛すべく、カトンボのように飛び回る、
《ウィンダム》らを挟み撃つ構図となる。
さあ、《ジ・ズクト》は35機、いや40機はいるだろう。
多少のズレはあるが、4、5機が横並びになる形で、
纏(まと)まって前進してくるのである。
前列の《ジ・ズクト》は肩のシールドを前面に構え、
ある者に至ってはアゴを引き、
ヘッドギアを前に突き出す体勢となりながら、
後に続く同胞の盾としての役割をも担っている。
まずは《ウィンダム》の《ジ・ズクト》爆撃から戦闘は始まった。
《ウィンダム》の大型ビーム火器がシャワーがごとく降り注げども、
カブトガニどもの固い甲羅を貫くには及ばず。
10機余りのモビルスーツの砲撃にも関わらず、
比較的前列にいた1機が運悪く肩の隙を撃ち抜かれて死んだ程度で、
他に仕留められた個体はない。
どころか、2列目、3列目辺りにいた《ジ・ズクト》により、
胸のビーム砲やら、ミサイルやらを撃ち返され、
2機の《ウィンダム》が負傷、1機が墜落し、
そのまま前進してきた敵に突き刺されて、やられてしまう。
その間、敵方も指をくわえて見ていた訳ではなく。
市街地では、例によって街並みに紛れるように武器を構える、
《ワイルドダガー》や《ハイザック》らの灰色の集団が。
丁度《ジ・ズクト》らによる反撃に合わせ、生まれた列の隙間を狙い、
狙撃して、4機余りに手傷を負わせた 。
ただし、致命傷には至らず、多少の隊列の乱れは起きようとも、
前進する敵兵の足取りを止めるには至らない。
さて、空挺部隊の方へと目を向けるならば……
機動力に優れた空挺部隊。
地を踏みしめ歩く《ジ・ズクト》の亀の歩みが、
《ジズ》の背に乗り、移動する鳥の速さに敵う訳がないことは明らか。
だのに、空挺部隊の進み具合は芳(かんば)しくない。
距離的にもルート的にも比較は出来ない部分とはいえ、
市街地を臨む位置まで寄った《ジ・ズクト》らに対して、
《クジャタ》と《ジズ》のパイロットたちは、
ティンドゥフの街を遥か遠方の蜃気楼(しんきろう)のようにしか、
見えていないという有り様である。
理由は2点。まずは……
『取り逃がしたか!』
『コイツらァァ……アリジゴクみてぇにィ!』
『また出たぞ!』
なんて、ザフト側から飛び交う声が事のややこしさを代弁していた。
アリジゴクとは言い得て妙、
何せ敵は地面の中から姿を現しては消えるのだから。
恐らくはミラージュコロイドを使っているのだろうて、
レーダーへ反応はない上に、砂煙により視界自体も悪く。
この砂の下に、アリの巣があるとでも言うのか?
モビルスーツが通り得る程に広大な巣が。
そのぐらいに突然現れては、突然消えての繰返し。
《ジ・ズクト》と違い、密着も然程していなければ、
飛んでいる分、下は死角にもなれば、攻撃も不如意。
どうにか、敵の1機を仕留めたときにはもう、
その周囲に味方の屍が5や6、転がっていた始末。
それでも、現場は緊急で対応せんと、仕留めた敵機の回収に降りる。
サーベラスよろしく、
1機の《クジャタ》を《ジズ》4機が密集して守る体系で降下。
勿論、攻撃を受けたが、そこはサーベラスの防御力。
せいぜい、1機の《ジズ》が片腕を破壊された程度であった。
さあ、高度を上げていくが……
『イヤーズ小隊長!』
という味方な呼び掛けに、その《クジャタ》のパイロットは、
反応が間に合わなかった。
一筋のレーザービームが、雷のように屈折して、
《ジズ》らの隙間より、《クジャタ》の体に突き刺さる。
悲鳴を上げる力はなかった。
ただ、最期の瞬間には、見たことではあろう。
目前に立ちはだかる、
もう1つの脅威、《YMAF-A8BD ドヌ・ゾド》を。